交通事故による顔面神経麻痺|原因・症状・治療・後遺症・慰謝料を解説

交通事故のあとに「顔の片側が動かしにくい」「口角が下がった」「目を完全に閉じられない」「飲み物が口からこぼれる」といった症状が現れた場合には、顔面神経麻痺が起きている可能性があります。

交通事故による顔面神経麻痺では、頭部や耳周辺への強い衝撃によって顔面神経が損傷したり、側頭骨骨折によって神経が圧迫されたりすることがあります。事故直後から麻痺が出る場合だけでなく、数日経ってから症状が現れる場合もあるため注意が必要です。

顔面神経麻痺では表情の問題だけでなく、目が閉じられない、飲食しにくい、発音しにくい、味覚が変化するといった日常生活への影響が出ることがあります。この記事では、交通事故による顔面神経麻痺の原因、症状、検査、治療、後遺症、後遺障害、慰謝料について詳しく解説します。

顔面神経麻痺とは?

顔面神経は第7脳神経とも呼ばれ、主に顔の表情を作る筋肉を動かす重要な神経です。眉を上げる、目を閉じる、笑う、口を閉じるといった動作に関係しています。

顔面神経には味覚や涙・唾液の分泌などに関係する神経線維も含まれているため、損傷する場所によっては表情筋の麻痺だけでなく、味覚の変化などが起こることがあります。

交通事故などの外傷によって起こるものは「外傷性顔面神経麻痺」と呼ばれます。

交通事故で顔面神経麻痺が起こる原因

交通事故による顔面神経麻痺では、頭部や耳周辺への強い衝撃が原因になることがあります。

側頭骨骨折

交通事故による外傷性顔面神経麻痺で特に注意したいのが側頭骨骨折です。

顔面神経は脳から出たあと、耳の周辺にある側頭骨の内部を通っています。そのため、交通事故で頭部や耳周辺へ強い衝撃を受けて側頭骨を骨折すると、骨折によって顔面神経が圧迫されたり損傷したりする可能性があります。

顔面・頭部への強い衝撃

自動車事故で頭や顔を車内へぶつけたり、バイクや自転車事故で頭部を路面へ強く打ちつけたりすると、顔面神経に影響が及ぶ場合があります。

神経の圧迫

事故によって神経周辺に出血や腫れが生じると、顔面神経が圧迫されて麻痺が起こる場合があります。

このようなケースでは、事故直後ではなく数日経ってから顔の動かしにくさが現れることがあります。

顔面の外傷

顔面の深い切り傷などによって顔面神経の末梢部分が直接損傷する場合もあります。

事故直後に麻痺が出る場合と数日後に出る場合がある

交通事故による顔面神経麻痺では、「いつ麻痺が始まったか」が重要な情報になります。

事故直後から顔が動かない場合には、顔面神経が強く損傷している可能性があります。側頭骨骨折などによって神経が強く圧迫されたり、重度の場合には神経が断裂したりしている可能性も考えられます。

一方、事故直後には顔を動かせていたものの、数日経ってから麻痺が出てくる場合には、外傷による出血や炎症、腫れなどによって神経が徐々に圧迫されている可能性があります。

どちらの場合でも自己判断せず、できるだけ早く専門の医療機関を受診することが重要です。

交通事故による顔面神経麻痺の症状

顔面神経麻痺では、麻痺した側の顔にさまざまな症状が現れます。

眉毛や額を動かしにくい

眉毛を上げたり額にしわを寄せたりする動作が難しくなることがあります。左右を比べると、麻痺している側の眉毛が下がって見える場合があります。

目を完全に閉じられない

顔面神経麻痺によってまぶたを閉じる筋肉が動きにくくなると、目を完全に閉じられなくなることがあります。

目が閉じられない状態が続くと角膜が乾燥し、目の痛みや異物感などにつながる可能性があるため注意が必要です。

口角が下がる

麻痺した側の口角が下がり、笑ったときなどに顔の左右差が目立つようになることがあります。

飲み物や食べ物が口からこぼれる

唇をしっかり閉じられなくなるため、水やお茶などを飲んだ際に麻痺している側の口角からこぼれることがあります。

食事の際にも食べ物を口の中に保持しにくくなる場合があります。

発音しにくい

口周囲の筋肉が動きにくくなることで、一部の言葉を発音しにくくなる場合があります。

味覚の変化

顔面神経の障害部位によっては、舌の前方部分の味覚に変化が現れることがあります。

涙や唾液の分泌の変化

顔面神経には涙や唾液の分泌に関係する神経も含まれているため、損傷部位によっては涙や唾液の分泌に変化が起こる場合があります。

「顔のしびれ」と「顔面神経麻痺」は同じではない

顔面神経麻痺という名前から「顔がしびれる病気」と考えられることがありますが、顔面神経の主な役割は顔の筋肉を動かすことです。

顔の皮膚の感覚は主に三叉神経という別の神経が担当しています。

そのため、「顔が動かない」という症状と「顔の感覚が鈍い・しびれる」という症状は分けて考える必要があります。

交通事故では複数の神経や顔面骨などを同時に損傷する可能性があるため、しびれを伴っている場合にも医療機関で詳しく調べてもらうことが重要です。

顔面神経麻痺は何科を受診する?

交通事故後に顔面神経麻痺が疑われる場合には、耳鼻咽喉科・頭頸部外科など、顔面神経を専門的に診療できる医療機関を早めに受診することが重要です。

頭部外傷や側頭骨骨折などを伴っている場合には、脳神経外科や形成外科など他の診療科と連携して治療を行うこともあります。

目を閉じられない場合には、角膜の状態を確認するため眼科での診察が必要になることもあります。

交通事故による顔面神経麻痺の検査

外傷性顔面神経麻痺では、顔の動きだけでなく、事故によって神経のどこがどの程度損傷しているのかを調べることが重要です。

顔面の動きの評価

額にしわを寄せる、強く目を閉じる、口を横へ広げる、頬を膨らませるなどの動作を行い、顔面筋の動きを評価します。

CT検査

交通事故による顔面神経麻痺では、側頭骨骨折などを確認するためCT検査が行われることがあります。

骨折線が顔面神経の通り道に及んでいるかなどを確認する重要な検査です。

MRI検査

症状や損傷部位によってはMRI検査が検討される場合があります。

電気生理学的検査

顔面神経がどの程度障害されているのかを評価するため、ENoGなどの電気生理学的検査が行われる場合があります。

検査結果は治療方針や回復の見通しを検討する材料になります。

交通事故による顔面神経麻痺の治療

治療方法は、神経がどこでどの程度損傷しているか、事故直後から麻痺しているのか、時間が経ってから発症したのかなどによって異なります。

薬による治療

外傷による炎症や腫れなどが関係していると考えられる場合には、医師の判断によって薬物療法が行われることがあります。

治療内容は損傷状態によって異なるため、自己判断で市販薬などだけで様子を見るのではなく、専門医の診察を受けることが重要です。

手術

側頭骨骨折などによって顔面神経が強く圧迫されている場合や、神経の重度損傷が疑われる場合には、検査結果などをもとに顔面神経減荷術などの手術が検討されることがあります。

すべての外傷性顔面神経麻痺で手術が必要になるわけではなく、麻痺の発症時期や神経障害の程度などから判断されます。

目の保護

目を完全に閉じられない場合には、角膜が乾燥して傷つくのを防ぐことが重要です。

医師の指示によって点眼薬や眼軟膏などを使用したり、就寝時に目を保護したりする場合があります。

「顔の麻痺だから目は関係ない」と考えず、目を閉じられない場合には必ず医師へ伝えてください。

顔面神経麻痺のリハビリ

顔面神経麻痺では、回復段階に応じて表情筋の動きを確認しながらリハビリを行うことがあります。

ただし、顔の筋肉を強く動かせば早く治るというものではありません。

回復過程で誤った神経再生が起こると、目を閉じようとすると口が動くなど、意図しない筋肉が一緒に動く「病的共同運動(シンキネシス)」が生じることがあります。

そのため、自己流で強いマッサージや過度な顔面運動を続けるのではなく、専門医や医療スタッフの指導を受けながら行うことが重要です。

顔面神経麻痺で残る可能性がある後遺症

顔面神経の損傷程度によっては、治療後も症状が残る場合があります。

顔の左右差

顔面筋の動きが十分に回復しない場合には、笑ったときや会話をするときなどに顔の左右差が残ることがあります。

目を閉じにくい

まぶたを閉じる機能が十分に回復しない場合には、目の乾燥や異物感などが長期間続く可能性があります。

口元の動かしにくさ

口角の動きが十分に戻らず、飲食や発音などに影響が残ることがあります。

病的共同運動(シンキネシス)

神経が回復する過程で、本人が動かそうとしていない筋肉まで同時に動くことがあります。

例えば、口を動かすと目が閉じてしまうなどの症状です。

顔面拘縮

麻痺した側の顔面筋が硬くなり、顔が引きつったような状態になる場合があります。

交通事故による顔面神経麻痺は後遺障害になる?

交通事故による顔面神経麻痺で治療を続けても一定の症状が残った場合には、後遺障害等級認定を検討することがあります。

ただし、「顔面神経麻痺」という診断名だけで自動的に後遺障害等級が決まるわけではありません。

実際にどのような機能障害が残っているのか、医学的に事故との因果関係が確認できるか、検査結果がどうなっているかなどを総合的に評価します。

また、交通事故によって顔面に目立つ傷あとや変形などが残った場合には、神経麻痺とは別に外貌の醜状として評価される可能性もあります。

後遺障害診断書と検査結果が重要

後遺障害を申請する場合には、医師が作成する後遺障害診断書が重要な資料になります。

顔面神経麻痺の場合には、顔面筋の麻痺の程度、目や口の機能への影響、CTなどの画像所見、電気生理学的検査の結果などが判断材料になる可能性があります。

症状が残っている場合には「顔が動かしにくい」だけでなく、「目が完全に閉じられない」「飲み物がこぼれる」「発音しにくい」「口を動かすと目が閉じてしまう」など、日常生活で困っている具体的な症状を主治医へ伝えておくことが大切です。

交通事故による顔面神経麻痺と慰謝料

交通事故によって顔面神経麻痺になった場合には、事故状況などに応じて治療費、通院交通費、休業損害、入通院慰謝料などが補償の対象になる可能性があります。

さらに、治療後も顔面神経麻痺による機能障害などが残り、後遺障害として認定された場合には、後遺障害慰謝料や逸失利益などが問題になることがあります。

後遺障害の有無や等級によって補償内容は大きく変わる可能性があるため、保険会社から提示された内容に疑問がある場合には交通事故に詳しい弁護士などへ相談する方法もあります。

交通事故後に顔が動かしにくい場合は早期受診が重要

交通事故後の顔面神経麻痺では、側頭骨骨折などによって顔面神経が強く損傷している可能性があります。

特に事故直後から顔が動かない場合や、耳周辺を強く打ったあとに麻痺が現れた場合には、早期に専門医による診察を受けることが重要です。

また、事故直後には問題がなくても、数日経ってから顔の動きが悪くなることがあります。

「そのうち治るだろう」と放置せず、顔の左右差、目の閉じにくさ、口角の下がりなどに気づいた場合には医療機関を受診してください。

交通事故による顔面神経麻痺と鍼治療

交通事故による外傷性顔面神経麻痺では、まず耳鼻咽喉科などの医療機関で神経損傷の程度や側頭骨骨折の有無を確認することが最優先です。

鍼治療によって切断された顔面神経をつなげたり、側頭骨骨折による神経圧迫を解除したりすることはできません。そのため、医療機関で必要な検査や治療を受けずに、鍼治療だけで対応することはおすすめできません。

医師による診断・治療を受けたうえで、回復期に残る筋肉の緊張や身体の不調などについて、状態に応じて鍼施術を補助的に検討する場合があります。

鍼灸整骨院かまたきでは、交通事故後の症状について医療機関での診断内容や治療状況を確認しながら施術についてご相談を受けています。

千葉市で交通事故後の顔面神経麻痺にお悩みの方へ

交通事故後の顔面神経麻痺は、単なる顔の筋肉の問題ではなく、側頭骨骨折や顔面神経そのものの損傷などが関係している可能性があります。

そのため、事故後に「顔の片側が動かない」「目を閉じられない」「口角が下がった」といった症状がある場合には、まず耳鼻咽喉科など専門の医療機関を早めに受診してください。

鍼灸整骨院かまたきでは、医療機関で治療を受けている交通事故患者様から、事故後に残った身体の症状についてのご相談を受けています。整形外科などへ通院中の方や、他院からの変更についてのご相談も可能です。

まとめ

交通事故による顔面神経麻痺は、頭部や耳周辺への強い衝撃、側頭骨骨折、神経周囲の出血や腫れなどによって起こる可能性があります。

主な症状には、顔の片側が動かしにくい、眉毛を上げられない、目を完全に閉じられない、口角が下がる、飲み物がこぼれる、発音しにくい、味覚が変化するなどがあります。

特に耳や頭部を強く打ったあとに顔面神経麻痺が現れた場合には、側頭骨骨折などが隠れている可能性があるため、早期に耳鼻咽喉科などを受診し、CTや必要な検査を受けることが重要です。

治療後も顔面筋の機能低下、目や口の機能障害、病的共同運動などが残った場合には、後遺障害認定が関係する可能性もあります。症状を自己判断で放置せず、事故直後から適切な診断と治療を受けることが大切です。