交通事故の加害者でも治療できる?自賠責・人身傷害保険・健康保険の使い方を解説

交通事故を起こしてしまった方の中には、「自分が加害者だから治療費は全部自己負担になるのでは?」「加害者でも整形外科や整骨院へ通っていい?」「自賠責保険は使える?」と不安になる方もいるでしょう。

交通事故では、事故の責任が大きい側であってもケガをしているのであれば、必要な治療を受けることが大切です。

ただし、治療費をどの保険から支払えるかは事故の状況によって異なります。自分の車の自賠責保険は、自分自身のケガを補償する保険ではありません。一方、自分が加入している人身傷害保険、健康保険、相手方にも過失がある場合には相手方の自賠責保険などを利用できる可能性があります。

この記事では、交通事故の加害者側でも治療を受けられるのか、自賠責保険・人身傷害保険・健康保険の違い、単独事故の場合、過失割合がある事故、整形外科や整骨院への通院について分かりやすく解説します。

交通事故の加害者でも治療を受けられる?

もちろん受けられます。

交通事故を起こした責任と、自分が負ったケガを治療することは別の問題です。

首や腰の痛み、手足のしびれ、頭痛、関節痛などがある場合には、「自分が悪かったから」と我慢せず、まず医療機関で診察を受けてください。

交通事故直後は痛みをあまり感じなくても、時間が経ってから症状が現れることがあります。事故後に症状がある場合には、整形外科などで必要な検査を受けておくことが重要です。

「加害者」と「被害者」は過失割合だけで単純に決まらない

交通事故では、日常会話では過失が大きい方を「加害者」、小さい方を「被害者」と呼ぶことがあります。

しかし、双方に過失がある事故では、それぞれが相手に対して損害賠償を請求できる場合があります。

例えば過失割合が8対2だった場合、8割の過失がある側も、相手方の2割の過失によって受けた損害について請求できる可能性があります。

そのため、

「自分の過失が大きい=治療費は一切請求できない」

とは限りません。

自分の自賠責保険で自分の治療費は払える?

原則として払えません。

自賠責保険は、交通事故によって他人を死傷させた場合の損害賠償を補償するための保険です。運転者本人のケガや車の修理費などは補償対象ではありません。

例えば、自分で電柱に衝突した単独事故でケガをした場合、自分の車に付いている自賠責保険から自分の治療費を受け取ることはできません。

現記事では「加害者でも自賠責保険を使って治療できる」という見え方になっていますが、ここは今回のように整理することが重要です。

相手にも過失があれば相手の自賠責を使える可能性がある

一方、相手の車にも過失がある場合には、自分が事故全体では過失の大きい側であっても、相手方に対して人身損害の賠償を請求できる可能性があります。

その場合、相手方車両の自賠責保険が関係することがあります。

自賠責保険は被害者保護を目的としているため、通常の民事損害賠償のように過失割合がそのまま差し引かれるわけではありません。被害者側の過失が7割未満なら原則として減額されず、7割以上の場合に重過失減額が行われます。

傷害部分では、過失が7割以上10割未満の場合に一定の減額があります。

ただし、過失が100%と判断される場合には相手方に賠償責任がないため、相手方の自賠責から自分のケガについて補償を受けることはできません。

自分のケガには人身傷害保険が重要

交通事故で自分自身がケガをしたときに重要になるのが「人身傷害保険」です。

人身傷害保険は、契約内容の範囲内で、交通事故による治療費や休業損害などの損害を補償する保険です。相手がいる事故だけでなく、単独事故も対象になるタイプがあります。

また、当事者双方に過失がある事故でも、約款で定められた基準・計算方法に基づく損害額について、過失相殺による減額をせず、自分の保険会社から保険金を受け取れる仕組みです。

つまり、

「自分の過失が大きい」

「単独事故だった」

「相手から十分な賠償を受けられない」

といったケースでは、人身傷害保険が大きな役割を果たします。

人身傷害保険はどこまで使える?

補償範囲は契約によって異なります。

契約車両に乗っているときだけ対象になるタイプや、他人の車に乗っているとき・歩行中の自動車事故などまで対象になるタイプがあります。日本損害保険協会も、人身傷害保険では対象となる事故範囲を契約によって選択できると説明しています。

そのため、事故に遭ったら、

「人身傷害保険に入っているか」

だけではなく、

「今回の事故が補償対象になっているか」

まで保険会社に確認してください。

人身傷害保険で治療費を支払う方法

人身傷害保険を利用する場合でも、医療機関での支払い方法は契約や保険会社の対応によって異なります。

保険会社が医療機関へ直接支払うケースもあれば、自分で一度治療費を支払い、その後保険金を受け取るケースもあります。

交通事故治療では、保険会社が医療機関へ治療費を直接支払う方法と、患者さんが一度支払って後から補償を受ける方法があります。

事故後は保険会社に連絡し、どの方法になるのか確認しましょう。

人身傷害保険だけを使うと等級は下がる?

商品によっては、人身傷害保険のみを使用した事故を「ノーカウント事故」として扱い、翌年の等級に影響しない場合があります。

ただし、車両保険など他の補償も同時に利用した場合には、その保険利用によって等級が下がる可能性があります。

そのため、「人身傷害を使えば絶対に保険料が上がらない」と一律に考えず、自分の保険会社へ確認してください。

加害者でも健康保険を使える?

業務中・通勤途中の事故でなければ、交通事故によるケガでも健康保険を利用できます。

現在の記事では「交通事故など加害者がはっきりしているケガには本来健康保険が使えない」と説明されていますが、この表現は修正が必要です。

交通事故など第三者の行為によってケガをした場合にも健康保険で治療できますが、その場合には加入している健康保険へ「第三者行為による傷病届」などを提出します。

なぜ第三者行為による傷病届が必要?

第三者による事故では、本来その第三者が負担すべき治療費を健康保険が一時的に負担することになります。

そのため、健康保険側が後から加害者などへ費用を請求できるよう、「第三者行為による傷病届」が必要になります。

ただし、自分の過失が大きい交通事故でも、相手が存在する事故で健康保険を利用する場合には、事故状況に応じて手続きが必要になります。

具体的な提出書類は加入している健康保険へ確認してください。

健康保険を使うメリット

健康保険を利用することで、医療機関での自己負担を抑えられます。

特に自分にも過失がある事故では、治療費も過失相殺の対象になる場合があるため、自由診療で高額な治療費が発生すると最終的な自己負担が大きくなることがあります。

日本損害保険協会も、交通事故治療で健康保険を利用することで自己負担額を軽減できる可能性があると説明しています。

単独事故でケガをした場合は?

電柱やガードレールに衝突した、運転操作を誤って道路外へ転落したなど、相手のいない単独事故では、相手方の自賠責保険は存在しません。

また、自分の自賠責保険も自分のケガは補償しません。

この場合には、契約内容に応じて人身傷害保険や搭乗者傷害保険など、自分の任意保険の補償を確認します。

人身傷害保険は、単独事故も対象となる契約があります。

保険が利用できない場合には、業務上・通勤災害でなければ健康保険を使って治療する方法もあります。

仕事中・通勤中の事故なら労災保険を確認

仕事中や通勤途中に起きた交通事故では、健康保険ではなく労災保険が関係します。

健康保険は業務上・通勤災害には原則利用しないため、勤務中または通勤途中の事故では勤務先や労働基準監督署などへ確認してください。協会けんぽも、業務上・通勤災害でなければ健康保険を使用できると説明しています。

加害者の同乗者は自賠責を使える?

運転者本人と同乗者では扱いが異なります。

自賠責保険は「他人」の人的損害を補償する保険なので、同乗者は自賠責の補償対象になる可能性があります。

また、契約内容によっては人身傷害保険からも補償を受けられる場合があります。

ただし、事故状況や同乗者と運転者との関係などによって扱いが異なる可能性があるため、保険会社へ確認してください。

子どもが同乗していた場合も治療できる?

事故によって同乗していた子どもがケガをした場合も、必要な診察・治療を受けてください。

同乗者については自賠責保険や人身傷害保険などが利用できる可能性があります。

特に小さな子どもは症状を正確に言葉で説明できないことがあります。

事故後に元気がない、首や腰を気にする、動きたがらないなど普段と違う様子がある場合には、医療機関へ相談しましょう。

加害者でも整形外科へ通っていい?

当然、通院できます。

事故の責任割合に関係なく、ケガがある場合には必要な医療を受けることができます。

交通事故後に首・腰などの痛みやしびれがある場合には、まず整形外科などで診察を受け、必要に応じてレントゲン・MRIなどの検査を受けてください。

特に骨折、脱臼、神経症状が疑われる場合には医療機関での診断を優先します。

加害者でも整骨院へ通える?

ケガの内容によっては整骨院で施術を受けることもできます。

ただし、保険を利用して施術を受けたい場合には、利用する保険の契約内容や保険会社の対応を事前に確認した方がよいでしょう。

また、交通事故後のケガでは診断内容や治療経過が重要になるため、整骨院だけでなく整形外科でも状態を確認してもらうことをおすすめします。

「加害者だから窓口負担0円」とは限らない

現在の記事では、条件を満たせば「窓口負担金なしで治療を受けられる」と説明されています。

しかし実際の窓口負担は、どの保険を使用するか、保険会社が医療機関へ直接支払いを行うかなどによって異なります。

人身傷害保険でも、保険会社から医療機関へ直接支払われるケースと、一度本人が支払って後から保険金を受け取るケースがあります。

そのため、

「加害者でも必ず窓口0円」

とは説明しない方が正確です。

事故を起こしたらまず自分の保険内容を確認する

事故後は相手への補償だけに目が向きがちですが、自分自身の保険内容も確認してください。

特に確認したいのは、人身傷害保険、搭乗者傷害保険、車両保険、弁護士費用特約などです。

人身傷害保険は契約範囲によって補償される事故が異なります。

保険証券や保険会社のアプリを確認し、分からなければ保険会社へ問い合わせましょう。

加害者だから治療しないのはおすすめできない

事故を起こした責任を感じて、

「相手もケガをしているのに、自分が治療するのは申し訳ない」

と考える方もいるかもしれません。

しかし、事故の責任について対応することと、自分の身体を適切に治療することは別です。

痛みやしびれがある状態を放置せず、必要な診察・治療を受けてください。

鍼灸整骨院かまたきでの交通事故施術

鍼灸整骨院かまたきでは、交通事故の被害者だけでなく、事故を起こした側でケガをされた方からの相談も受けています。

まず整形外科などでケガの状態を確認し、そのうえでむちうち、腰部の痛み、筋肉の緊張など、当院で対応できる症状について施術を検討します。

利用できる保険は事故状況や契約内容によって異なるため、

「自分の人身傷害保険は使える?」

「相手にも過失があるけれど自賠責は利用できる?」

「健康保険に切り替えた方がいい?」

など分からない場合には、まず加入している保険会社へ補償内容を確認してください。

加害者側が治療を受けるときの5ステップ

1. まず警察へ事故を届け出る
事故後は警察への届出を行います。

2. 痛みがあれば医療機関を受診する
事故直後から首・腰などに症状がある場合には早めに受診します。

3. 自分の保険会社へ連絡する
人身傷害保険など自分のケガに使える補償があるか確認します。

4. 相手方にも過失がある場合は相手方保険も確認する
相手にも責任がある事故では、相手方への損害賠償請求が可能な場合があります。

5. 保険が利用できない場合は健康保険などを検討する
業務上・通勤災害でなければ健康保険を利用できます。第三者行為による事故では所定の届出を行います。

よくある質問

交通事故の加害者でも治療できますか?

できます。事故の過失割合に関係なく、ケガをしている場合には必要な診察・治療を受けることができます。

自分の自賠責保険で自分の治療費を払えますか?

原則としてできません。自賠責保険は他人の人的損害を補償する保険で、運転者本人のケガは対象外です。

自分の過失が大きくても相手の自賠責を使えますか?

相手にも過失があれば利用できる可能性があります。自賠責では被害者側の過失が7割以上の場合に重過失減額があります。過失100%の場合は対象外です。

加害者でも人身傷害保険は使えますか?

契約条件を満たせば利用できます。人身傷害保険は相手がいる事故・単独事故を問わず、契約範囲内で治療費や休業損害などを補償する保険です。

単独事故でも治療費を保険で払えますか?

自分の自賠責保険は利用できませんが、人身傷害保険など自分の任意保険が利用できる可能性があります。

加害者でも健康保険を使えますか?

業務上・通勤災害でなければ、交通事故によるケガでも健康保険を利用できます。第三者による事故の場合には第三者行為による傷病届などの提出が必要です。

加害者の同乗者も補償されますか?

同乗者は自賠責保険や人身傷害保険の対象になる可能性があります。実際の補償範囲は事故状況や契約内容によって確認が必要です。

加害者でも整骨院に通えますか?

ケガの内容によって施術を受けることはできます。ただし、保険を利用する場合には補償内容を保険会社へ確認し、交通事故後は整形外科でも診断・経過確認を受けることをおすすめします。

加害者なら窓口負担0円で通院できますか?

必ず0円になるわけではありません。保険会社が医療機関へ直接支払う場合もあれば、一度本人が支払って後から保険金を受け取る場合もあります。

まとめ

交通事故では、自分の過失が大きい側であっても、ケガをしていれば必要な治療を受けることができます。

ただし、自分の車の自賠責保険で自分自身の治療費を支払うことはできません。 自賠責は他人の人的損害を補償する保険です。

自分自身のケガについては、人身傷害保険などの任意保険を確認することが重要です。人身傷害保険は、契約内容によって相手がいる事故や単独事故での治療費・休業損害などを補償します。

また、相手にも過失がある事故では、自分の過失が大きくても相手方の自賠責保険から補償を受けられる可能性があります。自賠責では被害者側の過失が7割以上の場合に重過失減額が行われます。

保険が利用できない場合や自己負担を抑えたい場合には、業務上・通勤災害でなければ健康保険を利用する方法もあります。

「自分が加害者だから治療できない」と考えず、まず身体の状態を確認し、自分の保険内容を調べることが大切です。