交通事故後に手に力が入らないのはなぜ?握力低下・しびれの原因と受診すべき症状を解説

交通事故のあと、

「ペットボトルのふたが開けにくい」

「スマホやコップを落とすようになった」

「手を握っても力が入らない」

「指先がしびれて細かい作業ができない」

「事故前より明らかに握力が落ちた」

このような症状が出ている場合、単なる首や肩の筋肉痛だけとは限りません。

交通事故の衝撃によって、首から腕・手へつながる神経や腕神経叢、末梢神経、場合によっては頚髄などが影響を受けると、手や指の筋力低下が現れることがあります。

特に、実際に物を落とす、指が動かしにくい、握力が低下しているなどの「運動機能の低下」がある場合は、しびれだけの場合より注意が必要です。

事故後に手へ力が入らない状態を「むちうちだからそのうち治る」と自己判断せず、まず整形外科などの医療機関で原因を確認することが重要です。

この記事では、交通事故後に手へ力が入らなくなる原因、注意したい症状、検査・治療、後遺障害との関係まで詳しく解説します。

交通事故後に手に力が入らない主な原因

「手に力が入らない」という症状だけで原因を特定することはできません。

交通事故では、首から手までさまざまな場所が損傷する可能性があります。

主な原因として考えられるものを見ていきましょう。

1.首から腕へ向かう神経の障害

手や指を動かすための神経は、首から腕を通って手までつながっています。

そのため交通事故によって首周辺に強い衝撃が加わり、神経が圧迫・刺激・損傷されると、

腕や手のしびれ
感覚低下
握力低下
指の動かしにくさ

などが現れることがあります。

神経根の障害では、腕や手指のしびれだけでなく、上肢の筋力低下や感覚障害が生じることがあります。

「手だけがおかしいから首は関係ない」とは限りません。

2.腕神経叢損傷

交通事故で特に注意したいものの一つが「腕神経叢損傷」です。

腕神経叢とは、首の脊髄から出た神経が複雑に組み合わさって形成され、肩・腕・手へつながっている神経の集まりです。

日本整形外科学会によると、オートバイの転倒事故などで肩と頭部が引き離されるような強い力が加わると、腕神経叢が引き伸ばされて損傷することがあります。損傷する場所や程度によって、肩・肘・手指などに運動麻痺や感覚障害が現れます。

特に重度の場合には、

手指が動かない
腕全体が動かない
感覚が低下する

などの大きな障害につながることがあります。

バイク事故や自転車事故など、身体が投げ出されるような事故のあとに手や腕へ力が入らなくなった場合は注意が必要です。

3.頚髄の損傷

さらに注意が必要なのが、首の中を通る「頚髄」の損傷です。

脊髄は脳から手足へ命令を伝える重要な神経組織です。

頚髄が損傷すると、損傷の程度や場所によって手足の運動や感覚に障害が現れることがあります。

日本整形外科学会によると、頚髄損傷は必ずしも骨折や脱臼を伴うとは限らず、もともと脊柱管が狭い人などでは、衝撃によって「非骨傷性頚髄損傷」が起こる場合があります。

つまり、

「レントゲンで骨折がなかったから大丈夫」

とは限りません。

手だけでなく足にも力が入りにくい、歩きにくいなどの症状がある場合は、より慎重な評価が必要です。

「物を落とすようになった」は見逃さない

事故後、

「握力が少し弱くなった気がする」

だけでは本人も重要な症状だと思わないことがあります。

しかし、

スマートフォンを落とす
箸を使いにくい
ボタンを留めにくい
文字を書きにくい
ペットボトルのふたを開けにくい
小銭をつまみにくい

といった変化も神経機能の異常を示す可能性があります。

頚髄の障害では、ボタンのはめ外し、箸の使用、文字を書くといった細かな手指の動作が不器用になることがあります。

「痛くないから大丈夫」ではなく、事故前には普通にできていた動作ができなくなっていないかを確認することが重要です。

しびれる指によって障害されている神経が違うこともある

手には複数の神経が分布しています。

そのため、どの指がしびれているのか、どの動きができないのかは原因を調べる手掛かりになります。

例えば正中神経の障害では、親指から薬指の親指側にかけての感覚障害や、手指を曲げる筋肉、親指の付け根の筋肉などの筋力低下が起こることがあります。

一方、小指と薬指の小指側にしびれが出る場合には尺骨神経、親指・人差し指・中指の手の甲側のしびれに加えて手首を反らしにくい場合には橈骨神経の障害などが疑われます。

ただし、症状だけで自分で診断することはできません。

事故後に筋力低下やしびれが続いている場合は、医師による神経学的な評価を受けましょう。

むちうちでも手がしびれることはある?

交通事故後の外傷性頚部症候群、いわゆる「むちうち」では、首の痛みだけでなく、肩こり、頭痛、めまい、手のしびれなどが現れる場合があります。

しかし、

「交通事故後の手の症状=全部むちうち」

と考えるのはおすすめできません。

特に、

明らかな握力低下
手指の麻痺
物を頻繁に落とす
手だけでなく足も動かしにくい

などがある場合には、神経や脊髄などの障害がないか確認する必要があります。

骨折や脱臼によって神経が損傷することもある

交通事故では、鎖骨、肩、上腕、肘、前腕、手首などを骨折・脱臼することがあります。

骨折や脱臼そのものだけでなく、周囲を通る神経が同時に損傷する可能性があります。

例えば日本整形外科学会は、鎖骨骨折の骨片や肩関節脱臼などでも腕神経叢が損傷する場合があるとしています。

事故後に骨折や脱臼を指摘され、

「治療しているのに手の力だけ戻らない」

という場合は、神経機能についても医師へ伝えてください。

交通事故後に手に力が入らない場合は何科?

基本的には整形外科を受診します。

特に事故直後から手や腕に明らかな筋力低下・麻痺・感覚障害などがある場合には、早めに医療機関で評価を受けることが重要です。

症状によっては脊椎脊髄を専門とする医師や手外科、神経内科・脳神経外科など、別の専門科での評価が必要になることもあります。

重要なのは、

「手に力が入りません」

だけで終わらせず、

「事故前は普通に開けられたペットボトルが開けられない」

「右手だけ物を落とす」

「親指と人差し指が動かしにくい」

「右手の握力が明らかに落ちた」

「手だけでなく足も動かしにくい」

など、事故前との違いを具体的に医師へ伝えることです。

どんな検査をする?

原因によって必要な検査は異なります。

レントゲン

骨折、脱臼、頚椎の状態などを確認するために行われます。

ただし、レントゲンだけですべての神経障害を確認できるわけではありません。

MRI

MRIでは頚椎や脊髄などの状態を詳しく確認します。

脊髄損傷では、麻痺などの症状とMRIやレントゲンなどによって損傷部位を評価します。

腕神経叢損傷でも、頚部から鎖骨上部のMRIが診断の参考になることがあります。

神経学的検査

筋力、感覚、反射などを確認し、

どこの神経が障害されている可能性があるのか

を調べます。

単に「痛い・しびれる」だけではなく、どの筋肉がどの程度動くのかを評価することが重要です。

筋電図・神経伝導検査

症状によっては、電気生理学的検査が行われる場合があります。

腕神経叢損傷では、損傷している場所の特定などに電気生理学的検査が利用されます。

末梢神経障害でも神経伝導検査や筋電図が診断の参考になります。

手に力が入らない場合の治療

治療方法は原因によって大きく異なります。

軽度の神経症状で保存療法が選択される場合もあれば、重度の神経損傷や脊髄圧迫などでは手術が必要になる場合もあります。

そのため、

「手に力が入らないからマッサージ」

というように、症状だけを見て治療方法を決めることはできません。

まず原因を確認することが最優先です。

診断後は状態に応じて、

薬物療法
リハビリテーション
理学療法・作業療法
装具
手術

などが検討されます。

例えば、自然回復が期待できない腕神経叢損傷では、損傷状態によって神経移植術や神経移行術などが検討されることがあります。

こんな症状がある場合は早めに医療機関へ

特に注意したいのは、単なる痛みではなく神経機能そのものが低下している可能性がある症状です。

事故後に、手や腕がほとんど動かない、急激に筋力が低下した、物を何度も落とす、しびれと筋力低下が悪化している、両手や両足に症状がある、歩きにくい・足がもつれるなどの症状がある場合は、早めに医療機関で評価を受けてください。

頚髄損傷では手だけでなく下肢にも運動・感覚障害が生じる可能性があります。

交通事故後の握力低下は記録しておく

交通事故後の症状では、

いつから症状が出たのか

という経過も重要です。

手に力が入らない場合には、

「事故当日から右手がしびれた」

「翌日から物を落とすようになった」

「1週間経っても握力が戻らない」

などを医師へ具体的に伝えましょう。

また、症状が続いているにもかかわらず診察時に伝えていなければ、後になって事故との関係を説明しにくくなる可能性があります。

我慢せず、症状がある段階から診療記録に残してもらうことが重要です。

手に力が入らない症状が後遺症として残ることはある?

神経や脊髄などの損傷程度によっては、治療を続けても、

握力低下
手指の運動障害
しびれ
感覚障害
巧緻運動障害

などが残ることがあります。

例えば、

「仕事で工具を握れない」

「パソコンのキーボード操作がしにくい」

「箸を使いにくい」

「ボタンを留められない」

といった障害は、仕事や日常生活へ大きな影響を与える可能性があります。

後遺障害認定との関係

交通事故による神経損傷などで治療後も症状が残った場合には、状態によって後遺障害認定を検討することがあります。

ただし、

「手に力が入らない=○級」

と症状だけで等級が決まるわけではありません。

どの部位を損傷したのか、画像検査や神経学的所見、筋力・運動機能などの客観的所見、治療経過、事故との因果関係などが重要になります。

現在の記事では「生活への影響や苦しみなどを基に後遺障害等級が判断される」としていますが、これだけでは説明として不十分です。

後遺障害を考える場合にも、事故後の早い段階から適切な検査・診断を受け、症状を継続して医師へ伝えることが重要です。

慰謝料だけでなく休業損害なども関係する

現在の記事では、治療費や休業損害などを「慰謝料」とまとめて説明していますが、ここは分けた方が正確です。

交通事故による損害には、

治療関係費
通院交通費
休業損害
入通院慰謝料
後遺障害が認定された場合の後遺障害慰謝料
逸失利益

などがあります。

特に手の機能は多くの仕事で重要です。

美容師、調理師、整備士、建設業、介護職、パソコン作業、製造業などでは、握力や細かな手指の動きが低下すると仕事へ大きな影響が出る可能性があります。

事故によって仕事を休み収入が減少した場合には、条件に応じて休業損害が問題になります。

鍼治療は「原因を確認してから」

現在の記事では冒頭から「鍼治療を行っています」と案内しています。

ここは変更をおすすめします。

手に力が入らない症状には、腕神経叢損傷、頚髄損傷、神経根障害、末梢神経損傷、骨折・脱臼など、医療機関での診断・治療を優先すべき原因が含まれます。

そのため、まず整形外科などで原因を確認してください。

医療機関で必要な治療・リハビリを受けたうえで、首・肩・腕周囲の筋緊張や痛みなどが残っている場合には、主治医による治療を妨げない範囲で補助的な施術を検討します。

鍼治療によって断裂した神経や損傷した脊髄そのものを修復できるという意味ではありません。

鍼灸整骨院かまたきでできること

交通事故後に、

首から腕にかけて痛い
腕や手がしびれる
握力が低下した
手に力が入りにくい
リハビリ後も首・肩・腕周辺の症状が残っている

という場合は、まず医療機関で神経や脊髄などに重大な損傷がないか確認することが重要です。

鍼灸整骨院かまたきでは、医療機関で必要な検査・診断・治療を受けたうえで、交通事故後に残っている首・肩・腕周辺の痛みや筋緊張などについて状態を確認しながら施術を検討します。

手に力が入らない原因を整骨院だけで判断するのではなく、医療機関と連携しながら原因に応じた対応を行うことが大切です。

よくある質問

交通事故後に手に力が入らないのはむちうちが原因ですか?

むちうちなどの頚部外傷に伴って手のしびれなどが現れることはありますが、手の筋力低下には腕神経叢、神経根、末梢神経、頚髄などの障害が関係している可能性もあります。特に明らかな筋力低下がある場合は医療機関で原因を確認してください。

交通事故後に物を落とすようになったのですが大丈夫ですか?

物を頻繁に落とす、ボタンを留めにくい、箸を使いにくいなどの症状は、手指の運動機能が低下している可能性があります。事故後から症状が出た場合は医師へ具体的に伝えましょう。

レントゲンで異常なしなら神経も大丈夫ですか?

レントゲンで骨折や脱臼が確認されなくても、神経や脊髄などの障害を完全に否定できるわけではありません。頚髄損傷には骨折・脱臼を伴わないものもあります。

手のしびれと握力低下は首が原因になることがありますか?

あります。首から腕・手へつながる神経が影響を受けると、腕や手指のしびれ、感覚障害、筋力低下などが現れることがあります。

交通事故後に手に力が入らない場合は何科を受診しますか?

まず整形外科で相談するのが基本です。症状や検査結果によっては脊椎脊髄、手外科、神経内科、脳神経外科などの専門的な評価が必要になる場合があります。

MRIを撮った方がいいですか?

すべての人にMRIが必要とは限りません。症状や診察所見から医師が必要性を判断します。筋力低下や麻痺などがある場合には、その症状を医師へ正確に伝えることが重要です。

手に力が入らない症状で後遺障害になることはありますか?

神経などの損傷によって治療後も運動障害や感覚障害などが残った場合には、状態によって後遺障害認定を検討することがあります。ただし症状だけで等級が決まるものではありません。

手に力が入らない症状に鍼治療はできますか?

まず医療機関で原因を確認することが重要です。神経や脊髄などの重大な損傷がないか確認し、必要な治療・リハビリを受けたうえで、残っている筋緊張や痛みなどについて補助的な施術を検討します。

まとめ

交通事故後に「手に力が入らない」「握力が落ちた」「物を落とす」という症状が出た場合、単なる首や肩の筋肉痛だけとは限りません。

交通事故の衝撃によって、

神経根
腕神経叢
末梢神経
頚髄
骨折・脱臼周辺の神経

などが影響を受けている可能性があります。

特に腕神経叢損傷では、損傷部位によって肩・肘・手指などの運動麻痺や感覚障害が現れます。また頚髄損傷では、骨折や脱臼がなくても神経症状が起こる場合があります。

事故後から、

握力が明らかに低下した
物を頻繁に落とす
指が動かしにくい
しびれと筋力低下がある
両手や足にも症状がある
歩きにくくなった

という場合には、自己判断で様子を見続けず医療機関へ相談してください。

そして「手に力が入らない」という表現だけではなく、事故前にできていた何ができなくなったのかを具体的に医師へ伝えることが大切です。