交通事故で手・手首を骨折したら?症状・治療・後遺症・慰謝料まで詳しく解説

交通事故では、ハンドルを握っている手に強い衝撃が加わったり、自転車やバイクから転倒して地面に手をついたりすることで、手や手首を骨折することがあります。「事故後から手首が腫れている」「手を動かすと激痛がある」「指がしびれる」「骨折は治ったと言われたのに手首が動かしにくい」などの症状がある場合には注意が必要です。

手や手首には多くの骨・関節・腱・神経などが集まっているため、骨折する場所や程度によって症状や治療方法、その後の機能への影響が異なります。特に交通事故では強い外力が加わることがあるため、単純な骨折だけでなく、骨が大きくずれた骨折、関節面まで及ぶ骨折、神経障害を伴う骨折などが生じる可能性があります。

事故後に手や手首の痛み・腫れ・変形・しびれなどがある場合は自己判断で様子を見ず、まず整形外科などの医療機関を受診して必要な検査を受けることが重要です。この記事では、交通事故による手・手首の骨折について、症状、骨折の種類、検査、治療、リハビリ、後遺症、後遺障害、慰謝料や休業損害まで詳しく解説します。

交通事故で手・手首を骨折する原因

交通事故では、身体に大きな外力が加わるため、さまざまな状況で手や手首を骨折する可能性があります。例えば、自転車やバイク事故で転倒した際にとっさに地面へ手をつく、車内でハンドルを握っている手に衝撃が加わる、車外へ投げ出された際に手をつく、手を車体や道路などに強くぶつけるといった状況です。

なかでも重要なのが、前腕にある橈骨という骨の手首に近い部分を骨折する「橈骨遠位端骨折」です。日本整形外科学会によると、手のひらをついて転倒した場合や、自転車・バイクで転倒した場合、交通事故などで強い外力が加わった場合に発生します。

「手の骨折」といっても負傷する場所はさまざまなので、どの骨をどのように骨折しているのかを正確に診断してもらうことが重要です。

交通事故で起こる主な手・手首の骨折

交通事故では、橈骨遠位端骨折、舟状骨骨折、中手骨骨折、指の骨折などが生じる可能性があります。骨折した場所によって治療方法や注意点が異なります。

橈骨遠位端骨折

橈骨遠位端骨折は、前腕にある橈骨の手首側を骨折するものです。転倒して手をついたときなどに起こりやすく、交通事故のような強い外力によって若い人にも生じることがあります。

骨片が手の甲側へずれたものは「コレス骨折」、手のひら側へずれたものは「スミス骨折」と呼ばれます。強い痛みや腫れが生じ、骨のずれが大きい場合には手首に明らかな変形がみられることがあります。

舟状骨骨折

舟状骨は手首にある小さな骨の一つです。転倒して手をついたときなどに骨折することがあります。事故直後には強い変形がみられず、「ただの捻挫だと思っていた」というケースもあるため注意が必要です。

手首の親指側の痛みが続く場合などは自己判断せず、整形外科などで詳しく診察してもらいましょう。

中手骨骨折・指の骨折

手の甲部分にある中手骨や指の骨も、交通事故の直接的な衝撃などによって骨折することがあります。

骨折の場所やずれ方によっては、指を曲げにくくなる、物を握りにくくなる、指の向きが変わるなど、手の機能へ影響する可能性があります。

手・手首を骨折したときの症状

交通事故によって手や手首を骨折すると、強い痛み、腫れ、内出血、動かしにくさなどが現れることがあります。また、骨のずれが大きい場合には外見上の変形がみられることもあります。

橈骨遠位端骨折では、手首に強い痛みが生じて短時間で腫れることがあり、手に力が入らなくなる場合があります。また、折れた骨や腫れによって正中神経が圧迫されると、親指から薬指にかけて感覚障害が生じることがあります。

事故後に「手を動かせるから骨折していない」と判断するのは危険です。骨折の種類や程度によってはある程度動かせる場合もあるため、痛みや腫れが続いている場合は検査を受けましょう。

こんな症状がある場合は早めに医療機関へ

交通事故後に手や手首が強く腫れている、明らかに変形している、激しい痛みがある、指がしびれている、感覚がおかしい、指に力が入らない、皮膚の色が変化しているなどの場合には、早急な医学的評価が必要です。

特にしびれや感覚障害がある場合には、骨折だけでなく神経への影響も確認する必要があります。橈骨遠位端骨折でも、折れた骨や腫れによって正中神経が圧迫されることがあります。

手・手首の骨折はどうやって診断する?

医療機関では事故状況や症状を確認したうえで、手や手首の状態を診察し、一般的にはX線(レントゲン)検査などを行います。

橈骨遠位端骨折では、レントゲンによって骨折の有無だけでなく、骨折線の状態、骨片の数、骨のずれ、関節面まで骨折が及んでいるかなどを確認します。こうした骨折の状態によって治療方法が異なります。

必要に応じてCTやMRIなど、さらに詳しい画像検査が検討される場合もあります。

交通事故による手・手首骨折の治療

治療方法は、骨折した場所、骨のずれ、関節面への影響、年齢などによって異なります。大きく分けると、ギプスなどで固定する保存療法と、骨折部を固定する手術療法があります。

整復と固定

骨がずれている場合には、骨片を適切な位置へ戻す「整復」が行われることがあります。整復後に骨折部が安定していれば、ギプスやシーネなどを使用して固定します。

日本整形外科学会も、橈骨遠位端骨折では骨片を元の位置へ戻した後、ずれない場合にはギプスなどで固定すると説明しています。

手術が必要になる場合

骨のずれが大きい、整復しても再びずれてしまう、骨折が関節面に及んでいるなどの場合には、手術が検討されることがあります。

橈骨遠位端骨折では、鋼線を使用する方法や創外固定、プレートとスクリューを使用して骨折部を固定する方法などがあります。現在では骨折の状態に応じてロッキングプレートによる固定なども行われています。

手術が必要かどうかは骨折の状態によって異なるため、担当医から説明を受けて治療方法を決定します。

骨折後のリハビリが重要な理由

手や手首の骨折では、骨がつながれば治療がすべて終了するとは限りません。一定期間固定すると、手首や指の関節が動かしにくくなったり、筋力が低下したりすることがあります。

骨折の状態や治療方法に応じて、医師などの指示のもとで手首や指の動きを取り戻すためのリハビリテーションを行います。

ただし、「早く動かした方がいい」と自己判断して骨癒合が不十分な段階から無理に動かすことは避けてください。反対に、必要以上に動かさない期間が続くことも機能回復に影響する可能性があります。いつからどの程度動かすかは、骨折の状態を確認している医師などの指示に従うことが重要です。

手・手首の骨折後に痛みが残る原因

骨折部が癒合した後も、「手首を曲げると痛い」「手をつくと痛い」「物を持つと痛い」「以前のように手首が動かない」といった症状が残ることがあります。

原因は一つとは限りません。関節の可動域制限、長期間の固定による筋力低下、軟部組織への影響、神経症状、骨折後の関節の変化など、さまざまな可能性があります。

現在の記事冒頭には「関節に異常がない場合、筋肉や靱帯が問題」とありますが、これは断定しすぎなので削除してください。骨折後に痛みが残る場合には、まず医療機関で骨癒合の状態や関節、神経などを確認してもらうことが重要です。

手・手首の骨折で残る可能性がある後遺症

骨折の程度によっては、治療後も手首の痛み、可動域制限、握力低下、しびれなどが残る場合があります。

特に手は、物を持つ、文字を書く、パソコンを操作する、料理をする、車を運転するなど、日常生活や仕事で頻繁に使用する部位です。そのため、わずかな可動域制限や握力低下でも職業によっては大きな影響が生じる可能性があります。

手首の可動域制限

骨折や固定、手術などの影響によって、手首を曲げる・反らす・回すといった動作に制限が残ることがあります。

可動域制限が残った場合には、日常生活だけでなく仕事内容によっても影響の程度が異なります。

痛みが残る

骨折部が癒合しても、手首を動かしたときや物を持ったときなどに痛みが残る場合があります。

痛みが続く場合には「骨折は治ったから仕方ない」と判断せず、原因について医師へ相談しましょう。

しびれ・感覚障害

骨折時の神経損傷や、骨折部周辺の腫れなどによって神経が影響を受けると、指のしびれや感覚障害が残る可能性があります。

橈骨遠位端骨折では、正中神経が圧迫されることで親指から薬指にかけて感覚障害が起こる場合があります。

変形が残る

骨折の程度や治癒過程によっては、骨が元の形とは異なる状態で癒合する変形治癒が起こることがあります。

外見上の変形だけでなく、関節の動きや握力などへ影響する場合もあるため、医師による評価が必要です。

骨折後の痛みに鍼灸・整骨院で施術はできる?

交通事故による骨折そのものについては、まず整形外科などの医療機関で適切な診断・治療を受けることが最優先です。骨折の整復や手術、画像検査などは整骨院・鍼灸院では行えません。

骨折が癒合した後や、医師からリハビリを進められる状態になった後に、痛みや筋肉の緊張などに対して施術を検討する場合があります。

ただし、「骨折後に痛みがあるから鍼をすれば治る」「筋肉をほぐせば可動域が戻る」と断定することはできません。骨癒合の状態や残っている症状を確認したうえで、医療機関での治療・リハビリと役割を分けて考えることが大切です。

また、交通事故の損害として整骨院や鍼灸院の施術費を請求する場合には、施術の必要性・相当性などが問題になることがあります。事前に医師や保険会社へ相談しておくとよいでしょう。

手・手首の骨折で後遺障害が認定されることはある?

交通事故による手・手首の骨折で治療を続けても症状が残った場合には、症状固定後に後遺障害等級認定を申請することがあります。

例えば、手首の関節が十分に動かなくなった場合、骨に変形が残った場合、神経症状が残った場合などでは、残存する障害の程度によって後遺障害が問題になる可能性があります。

ただし、骨折したという事実だけで後遺障害が認定されるわけではありません。症状固定時の状態、画像所見、関節可動域、神経症状などをもとに審査されます。

「後遺症」と「後遺障害」は同じではない

交通事故の記事では、この2つを区別することが重要です。

治療後に痛みや動かしにくさなどが残っている状態を一般的に「後遺症」と呼ぶことがあります。一方、自賠責保険などでいう「後遺障害」は、事故との因果関係がある残存症状について所定の審査を受け、後遺障害等級が認定されたものを指します。

「痛みが残った=後遺障害慰謝料を受け取れる」というわけではありません。

交通事故で手を骨折した場合の慰謝料

交通事故によって手や手首を骨折した場合には、ケガによる精神的・肉体的苦痛に対して**入通院慰謝料(傷害慰謝料)**を請求できる可能性があります。

慰謝料額は「手を骨折したら一律○万円」と決まっているわけではなく、入院・通院期間や治療状況、採用される算定基準などによって異なります。

交通事故の慰謝料には、自賠責保険の支払基準、任意保険会社による算定、裁判・弁護士基準などがあり、どの基準を前提にするかによって金額が異なる場合があります。

治療費や休業損害は「慰謝料」とは別

現在の記事では「医療費や休業損害も慰謝料の算定に影響する」としていますが、ここは修正した方が正確です。

治療費・休業損害・慰謝料は、それぞれ別の損害項目です。

交通事故で手を骨折した場合には、事故状況などに応じて治療費、通院交通費、休業損害、入通院慰謝料などを請求できる可能性があります。

そのため、示談金を見るときには「総額はいくらか」だけではなく、「治療費はいくら」「休業損害はいくら」「慰謝料はいくら」というように、損害項目ごとの金額を確認することが重要です。

手の骨折で仕事を休んだ場合の休業損害

交通事故による手の骨折で仕事を休み、収入が減少した場合には休業損害を請求できる可能性があります。

手を使う仕事では特に影響が大きくなる場合があります。例えば、建設業、製造業、調理師、美容師、介護職、運送業など、手を使うことが不可欠な職業では、片手を固定しているだけでも仕事が難しくなることがあります。

デスクワークでも、利き手を骨折すればパソコン入力や書類作成などへ影響する可能性があります。

会社員の場合には勤務先に休業損害証明書を作成してもらうなど、実際に仕事を休んだことや収入への影響を確認できる資料が重要になります。

後遺障害が認定された場合の補償

手・手首の骨折によって一定の後遺障害が認定された場合には、傷害部分の入通院慰謝料とは別に、後遺障害慰謝料や逸失利益が問題になります。

後遺障害慰謝料は、後遺障害が残ったことによる精神的苦痛に対する損害です。逸失利益は、後遺障害によって労働能力が低下し、将来の収入などに影響すると考えられる場合の損害です。

特に手は職業への影響が大きくなりやすいため、残った障害だけでなく仕事内容との関係も重要になることがあります。

示談する前に確認したいこと

交通事故による手の骨折では、骨折が癒合した直後にすべての問題が終わるとは限りません。手首の可動域、握力、痛み、しびれなどがその後どの程度回復するかを確認する必要があります。

症状が残っている段階で示談を急ぐのはおすすめできません。一度示談が成立すると、原則として後から追加の損害賠償を請求することが難しくなります。

治療が終了しているか、症状固定なのか、後遺障害申請を検討する必要があるのか、休業損害が正しく計算されているかなどを確認してから示談を進めましょう。

交通事故後に手を骨折したら記録を残しておく

交通事故の損害賠償では、治療経過や仕事への影響などを確認するための資料が重要です。

診断書、検査結果、治療費の領収書、通院交通費、休業した日、休業損害証明書などは保管しておきましょう。また、事故直後の手や手首の腫れ・内出血・変形などを写真で残しておくことも、後から事故直後の状態を確認する資料になる場合があります。

特に後遺障害が問題になる可能性がある場合には、症状を医師へ継続的に伝えて診療記録に残してもらうことも重要です。

よくある質問

交通事故で手首を骨折したらどんな症状が出ますか?

強い痛み、腫れ、内出血、手首の動かしにくさなどが現れることがあります。骨のずれが大きい場合には変形がみられ、神経が影響を受けると指のしびれや感覚障害が生じる場合もあります。橈骨遠位端骨折では、折れた骨や腫れによって正中神経が圧迫されることがあります。

手が動かせれば骨折していませんか?

手や指を動かせるからといって骨折を完全に否定することはできません。交通事故後に強い痛みや腫れが続いている場合には、医療機関で診察や画像検査を受けましょう。

交通事故で多い手首の骨折は何ですか?

代表的なものの一つが橈骨遠位端骨折です。手をついて転倒した場合や、自転車・バイクで転倒した場合、交通事故などの強い外力によって起こることがあります。

手首の骨折は手術が必要ですか?

すべての骨折で手術が必要なわけではありません。骨のずれや骨折の状態によって、整復後にギプスなどで固定する場合と、プレートなどを使用した手術が必要になる場合があります。

骨がつながったのに手首が痛いのはなぜですか?

関節の可動域制限、固定による筋力低下、軟部組織や神経への影響など、さまざまな原因が考えられます。「筋肉が硬いだけ」と自己判断せず、痛みが続く場合には医師へ相談してください。

骨折後に整骨院へ通えますか?

骨折そのものはまず医療機関で診断・治療を受ける必要があります。骨折の状態や治療経過によって、医師の管理のもとでリハビリや施術を検討する場合があります。

手の骨折で後遺障害が認定されることはありますか?

治療後も関節の可動域制限、変形、神経症状などが残った場合には後遺障害等級認定が問題になることがあります。ただし、骨折しただけで自動的に認定されるわけではありません。

手を骨折したら慰謝料はいくらですか?

「手の骨折なら○万円」と一律には決まりません。入通院期間、治療状況、算定基準などによって金額が異なります。また、治療費や休業損害は慰謝料とは別の損害項目です。

手の骨折で仕事を休んだ場合は補償されますか?

事故による骨折が原因で仕事を休み収入が減少した場合には、休業損害を請求できる可能性があります。職業や収入、実際の休業状況などによって判断されます。

まとめ

交通事故では、自転車やバイクから転倒して手をついたり、車内で手や手首に強い衝撃が加わったりすることで骨折することがあります。代表的なものの一つが橈骨遠位端骨折で、強い痛みや腫れ、変形、手の動かしにくさなどが現れ、神経が圧迫されると指のしびれや感覚障害が生じる場合もあります。

治療方法は骨折した場所や骨のずれなどによって異なります。整復後にギプスなどで固定する場合もあれば、骨折の状態によってプレートなどを使用した手術が必要になる場合もあります。

また、骨が癒合した後も手首の痛み、可動域制限、握力低下、しびれなどが残ることがあります。骨折後の痛みを単純に「筋肉や靱帯が原因」と判断せず、まず医療機関で骨や関節、神経などの状態を確認してもらうことが重要です。

交通事故による手の骨折では、治療費だけでなく、事故状況などに応じて通院交通費、休業損害、入通院慰謝料などが損害として問題になります。さらに後遺障害が認定された場合には、後遺障害慰謝料や逸失利益が問題になる可能性があります。

症状が残っている場合には示談を急がず、治療経過や後遺障害申請の必要性などを確認してから進めることが大切です。