交通事故による腓骨神経麻痺とは?原因・症状・治療法・後遺症・後遺障害・慰謝料を解説

交通事故のあと、「足首が持ち上がらない」「歩くとつま先が引っかかる」「すねの外側から足の甲がしびれる」といった症状がある場合、腓骨神経麻痺の可能性があります。

腓骨神経は、膝の外側にある腓骨頭付近を通り、足首や足指を上に持ち上げる筋肉や、下腿外側から足の甲にかけての感覚に関係する神経です。日本整形外科学会によると、腓骨神経麻痺では足首や足指を上へ反らすことができなくなり、「下垂足(drop foot)」がみられることがあります。また、下腿外側から足背にかけてしびれや感覚低下が現れます。

交通事故による腓骨神経麻痺は、膝周辺への強い打撃、腓骨頭骨折、膝関節周辺の外傷などによって生じることがあります。

この記事では、交通事故による腓骨神経麻痺の原因、症状、検査、治療、後遺症、後遺障害、慰謝料、鍼治療の位置づけについて詳しく解説します。

腓骨神経とは?

腓骨神経は、坐骨神経から分かれて膝の外側へ向かい、腓骨頭の後ろを巻きつくように走行する神経です。

日本整形外科学会によると、腓骨頭付近では神経の移動性が少なく、骨と皮膚・皮下組織の間を通るため、外部からの圧迫を受けやすい特徴があります。

そのため、交通事故で膝の外側を強く打ったり、骨折や脱臼が起こったりすると、腓骨神経が傷つく可能性があります。

交通事故で腓骨神経麻痺が起こる原因

交通事故による腓骨神経麻痺では、直接的な外傷だけでなく、骨折や脱臼、事故後の固定などが関係することがあります。

膝外側への直接的な打撃

交通事故で膝の外側を車内の部品などに強くぶつけたり、バイク・自転車事故で転倒したりすると、腓骨頭付近を走る神経が損傷することがあります。

腓骨神経は皮膚に比較的近い位置を通るため、外部からの衝撃を受けやすい神経です。

腓骨頭骨折・膝周辺の骨折

交通事故の強い衝撃によって腓骨頭付近を骨折すると、骨折そのものや周囲の腫れなどによって腓骨神経が損傷・圧迫されることがあります。

日本整形外科学会も、腓骨頭骨折や膝周辺の外傷が腓骨神経麻痺の原因になるとしています。

膝関節の脱臼

重大な交通事故では膝関節脱臼などの重い外傷を伴う場合があります。

このような外傷では、膝周囲の靭帯だけでなく神経や血管にも損傷が及ぶ可能性があります。

ギプス・固定による圧迫

事故後に骨折などでギプスや装具を使用している場合、その圧迫によって腓骨頭部の神経が圧迫されることもあります。

日本整形外科学会でも、ギプス固定や長時間同じ姿勢で腓骨頭部が圧迫されることが腓骨神経麻痺の原因になるとしています。

腓骨神経麻痺の代表的な症状

腓骨神経麻痺では、運動障害と感覚障害がみられます。

代表的なのが、「足首を上げられない」「つま先を持ち上げられない」という症状です。

足首や足指を上へ反らす動作が難しくなると、足先が下へ垂れた状態になることがあります。これを「下垂足」といいます。

また、下腿の外側から足の甲、第5趾を除く足趾背側などに、しびれや感覚低下が生じることがあります。

下垂足とは?

下垂足とは、足首を上方向へ持ち上げにくくなり、足先が垂れ下がったようになる状態です。

歩くときには本来、つま先を上げて地面に引っかからないようにします。

しかし腓骨神経麻痺によってこの動作が難しくなると、つま先が地面に引っかかりやすくなります。

そのため、

「膝を必要以上に高く上げて歩く」

「つま先が何度も地面に引っかかる」

「階段で転びそうになる」

といった歩行障害が現れることがあります。

事故後にこんな症状があれば早めに受診

交通事故後に、足首が急に動かしにくくなった、つま先が上がらない、足の甲に強いしびれがある、歩くと足先が引っかかる、膝周辺に強い痛みや腫れがある場合には、整形外科などの医療機関を受診してください。

特に、交通事故直後から明らかな筋力低下や麻痺がある場合は、単なる打撲や筋肉痛として様子を見るのはおすすめできません。

骨折、脱臼、神経損傷などが隠れていないか確認する必要があります。

腓骨神経麻痺の検査

腓骨神経麻痺が疑われる場合には、症状や筋力、感覚などを確認し、必要に応じて画像検査や神経機能の検査が行われます。

レントゲン・CT

骨折や脱臼など、腓骨神経麻痺の原因になる骨・関節の外傷を確認するために行われることがあります。

MRI

MRIでは神経周囲の軟部組織や靭帯などを確認する目的で使用されることがあります。

筋力・感覚検査

足首や足指をどの程度動かせるのか、足の甲などの感覚が保たれているかを確認します。

神経伝導検査・筋電図検査

症状に応じて、末梢神経がどの程度働いているかを確認するために神経伝導検査や筋電図検査が行われることがあります。

どの検査が必要かは神経損傷の状態によって異なるため、医師の判断に従いましょう。

腓骨神経麻痺の治療法

治療方法は、神経が圧迫されているのか、外傷によって損傷しているのか、神経が断裂しているのかなどによって異なります。

原因となる圧迫を取り除く

ギプスや装具などによって神経が圧迫されている場合には、まず圧迫の原因を取り除くことが重要です。

保存療法

神経が完全に断裂しておらず回復が期待できるケースでは、経過を確認しながら保存的治療が行われることがあります。

日本整形外科学会では、原因が明らかでないものや回復可能性があるものについて保存的治療を行うと説明しています。

装具療法

下垂足がある場合には、足先が地面に引っかかるのを防ぐため、短下肢装具などを使用することがあります。

装具によって足首の位置を保ち、歩行時の転倒リスクを減らします。

リハビリテーション

筋力低下や歩行障害がある場合には、理学療法などによって筋力や歩行機能の維持・回復を目指します。

ただし、麻痺している筋肉を無理に動かせばよいというものではありません。

神経損傷の程度を確認しながら、医師や理学療法士の指導のもとで行うことが重要です。

手術療法

外傷による神経損傷が強い場合や、明らかな圧迫・断裂などがある場合には、手術が検討されることがあります。

日本整形外科学会でも、骨折・脱臼など外傷性の原因や腫瘤によるものでは、状態により早期手術が必要になるとしています。

手術方法は損傷内容に応じて、神経の減圧、縫合、神経移植などが検討されます。

腓骨神経麻痺は治る?

回復の程度は、神経損傷の原因や重症度によって大きく異なります。

一時的な圧迫による軽度の神経障害では回復する場合があります。

一方、交通事故によって神経が強く損傷したり断裂したりした場合には、回復に長期間かかることや、筋力低下・しびれなどが残ることがあります。

そのため、

「腓骨神経麻痺なら○か月で治る」

と一律には言えません。

症状の経過や神経機能を確認しながら治療を続けることが重要です。

腓骨神経麻痺で残る可能性がある後遺症

腓骨神経麻痺では、治療後も症状が残ることがあります。

代表的なのは、足首を持ち上げにくい状態、下垂足、足の甲のしびれや感覚低下、筋力低下、歩行障害などです。

歩行機能が十分に回復しない場合には、長期間にわたって装具を使用することもあります。

さらに、足が引っかかることによって転倒しやすくなり、日常生活や仕事に影響が出る可能性があります。

腓骨神経麻痺は後遺障害の対象になる?

交通事故による腓骨神経麻痺で症状が残った場合、状態によっては後遺障害等級認定の対象になる可能性があります。

自賠責保険では、交通事故による傷害が治った段階で残った身体的・精神的障害について、事故との相当因果関係が認められ、その存在が医学的に認められる場合に後遺障害として評価されます。

腓骨神経麻痺では、残った症状によって「神経症状」として評価されるケースだけでなく、足関節などの運動機能障害として問題になるケースもあります。

ただし、

「腓骨神経麻痺だから○級」

と自動的に決まるものではありません。

残っている筋力低下、関節運動、感覚障害、神経学的所見、検査結果などによって判断されます。

後遺障害申請で重要になる資料

腓骨神経麻痺の後遺障害では、どの程度の神経障害が残っているのかを客観的に示す資料が重要になります。

例えば、事故直後からの診療記録、画像検査、筋力検査、感覚検査、神経伝導検査・筋電図検査、後遺障害診断書などが判断材料になることがあります。

特に「足が上がらない」「しびれる」という症状がある場合には、症状固定になってから慌てて検査するのではなく、治療中から症状を医師へ正確に伝えておくことが重要です。

腓骨神経麻痺で請求できる可能性がある補償

交通事故による腓骨神経麻痺では、事故状況や損害内容によって治療費、通院交通費、休業損害、入通院慰謝料などが補償対象になる可能性があります。

さらに後遺障害として認定された場合には、後遺障害慰謝料や逸失利益などが問題になります。

国土交通省では、後遺障害による損害について、障害の程度に応じて逸失利益や慰謝料などが補償されるとしています。

腓骨神経麻痺の慰謝料はいくら?

腓骨神経麻痺だから一律に「○万円」と決まっているわけではありません。

治療期間中については、治療内容や入通院期間などに応じて入通院慰謝料が問題になります。

後遺障害が認定された場合には、認定された等級に応じた後遺障害慰謝料や逸失利益などが問題になります。自賠責の後遺障害による損害の支払限度額は、一般の後遺障害では第1級3,000万円から第14級75万円まで設定されています。

ただし、この限度額は「慰謝料だけの金額」ではありません。

後遺障害の損害には逸失利益と慰謝料等が含まれます。

実際の損害賠償額は、後遺障害等級、収入、仕事への影響、過失割合などによって異なります。

仕事への影響も重要

腓骨神経麻痺で下垂足が残ると、立ち仕事や歩行の多い仕事などに大きな影響が出る可能性があります。

例えば、長時間歩けない、階段昇降が難しい、走れない、安全靴を履いて作業しにくいなどです。

事故前と同じ仕事を続けられなくなった場合には、後遺障害認定だけでなく、逸失利益などについて検討する必要が出てくることがあります。

仕事への影響が大きい場合には、具体的な仕事内容や事故前後の変化を記録しておくことも大切です。

腓骨神経麻痺に鍼治療は有効?

現在の記事では「鍼によって血流を改善し、神経再生を促進する可能性がある」としています。(kamataki-seikotsu.net)

この部分は、少し表現を弱めた方が安全です。

鍼治療によって損傷・断裂した腓骨神経そのものを修復できると説明することはできません。

交通事故による腓骨神経麻痺では、まず整形外科などで神経損傷の原因や程度を確認し、必要な治療・リハビリを受けることが基本です。

そのうえで、事故後に残っている下肢周囲の筋緊張や慢性的な痛みなどについて、状態に応じて鍼治療を補完的に検討する場合があります。

鍼灸整骨院かまたきで対応できること

鍼灸整骨院かまたきでは、交通事故後に医療機関で治療やリハビリを受けたものの、下肢の痛みや筋肉の緊張などが残っている方からの相談を受けています。

ただし、腓骨神経麻痺そのものを整骨院で診断したり、断裂した神経を鍼治療で治したりすることはできません。

特に、

「足首が上がらなくなった」

「急に歩きにくくなった」

「足の感覚が大きく低下した」

といった神経症状がある場合には、まず整形外科などの医療機関で診察を受けてください。

その後、医療機関での治療方針を確認しながら、残っている筋肉の緊張や痛みなどについて当院で対応できるか検討します。

よくある質問

腓骨神経麻痺とはどのような症状ですか?

足首や足指を上へ持ち上げにくくなり、下垂足になることがあります。また、下腿外側から足の甲にかけてしびれや感覚低下が現れることがあります。

交通事故で腓骨神経麻痺になることはありますか?

あります。膝外側への強い打撃、腓骨頭骨折、膝周辺の外傷などによって腓骨神経が損傷する可能性があります。

下垂足とは何ですか?

足首や足指を上へ持ち上げにくくなり、足先が下へ垂れた状態です。歩行時につま先が地面へ引っかかりやすくなります。

腓骨神経麻痺は治りますか?

原因や損傷の程度によって異なります。圧迫などによる軽度の障害では回復する場合がありますが、強い外傷や神経断裂などでは長期治療や手術が必要になる場合があります。

腓骨神経麻痺ではどんな検査をしますか?

症状に応じてレントゲン、CT、MRI、筋力・感覚検査、神経伝導検査や筋電図検査などが検討されます。

腓骨神経麻痺は後遺障害になりますか?

交通事故との因果関係があり、治療後も医学的に確認できる運動障害や感覚障害などが残った場合には、後遺障害として評価される可能性があります。

下垂足が残った場合も後遺障害になりますか?

状態によって後遺障害認定の対象になる可能性があります。ただし、症状だけで等級が決まるわけではなく、筋力、運動機能、神経学的所見、検査結果などを踏まえて判断されます。

腓骨神経麻痺に鍼治療はできますか?

損傷した神経そのものを鍼で修復する治療ではありません。医療機関での診断・治療を基本としたうえで、残っている筋緊張や慢性的な痛みなどに対して補完的に検討する場合があります。

まとめ

交通事故による腓骨神経麻痺は、膝外側にある腓骨頭付近への強い衝撃、腓骨頭骨折、膝周辺の外傷などによって腓骨神経が損傷することで起こることがあります。日本整形外科学会では、代表的な症状として、足首・足指を上へ持ち上げられない下垂足や、下腿外側から足背にかけての感覚障害を挙げています。

事故後に足首が急に持ち上がらなくなったり、足の甲にしびれが出たりした場合には、整骨院で様子を見る前に整形外科などで神経損傷の有無を確認することが重要です。

治療は原因や神経損傷の程度によって異なり、保存療法、装具、リハビリ、必要に応じて手術などが検討されます。外傷性の神経損傷などでは手術が必要になるケースもあります。

治療後も下垂足、筋力低下、感覚障害などが残った場合には、後遺障害認定の対象になる可能性があります。後遺障害が認定された場合には、等級に応じて後遺障害慰謝料や逸失利益などが問題になります。

鍼灸整骨院かまたきでは、腓骨神経そのものを修復することを目的とするのではなく、医療機関での治療やリハビリ後に残る筋肉の緊張や痛みなどについて、状態を確認しながら補完的な施術を検討します。