交通事故による肩鎖関節脱臼の症状・治療法・後遺症・慰謝料を解説

交通事故後に肩を強く打ち、「肩鎖関節脱臼」と診断されることがあります。「肩鎖関節とはどこの関節?」「肩が出っ張っているけれど元に戻る?」「手術しないと治らない?」「肩の変形や痛みが残ったら後遺障害になる?」「慰謝料はいくらになる?」など、不安を感じる方も多いでしょう。
肩鎖関節脱臼は、肩甲骨の肩峰と鎖骨をつないでいる肩鎖関節周辺の靱帯などが損傷し、鎖骨と肩甲骨の位置関係がずれた状態です。交通事故では、バイクや自転車から転倒して肩を路面へ強く打った場合や、衝突によって肩へ大きな力が加わった場合などに起こることがあります。
損傷の程度によっては保存療法で治療することもありますが、重度の場合には手術が検討されます。日本整形外傷学会では、肩鎖関節脱臼をRockwood分類で評価し、損傷の程度によって治療方法を判断すると説明しています。
この記事では、交通事故による肩鎖関節脱臼について、原因、症状、Rockwood分類、検査、治療、手術、回復期間、後遺症、後遺障害、慰謝料、治療後の施術まで詳しく解説します。
肩鎖関節とは?
肩鎖関節は、鎖骨の外側と肩甲骨の肩峰がつながっている関節です。肩の上部にあり、腕や肩を動かす際に重要な役割を持っています。
肩鎖関節周辺には肩鎖靱帯や烏口鎖骨靱帯などがあり、鎖骨と肩甲骨の位置関係を保っています。
交通事故や転倒などによって肩へ強い力が加わると、これらの靱帯が損傷・断裂し、肩鎖関節がずれることがあります。これが肩鎖関節脱臼です。
交通事故による肩鎖関節脱臼とは?
肩鎖関節脱臼は、肩鎖関節を支えている靱帯などが外傷によって損傷し、鎖骨と肩甲骨の正常な位置関係が崩れた状態です。
現在の記事でも、交通事故によって肩へ強い力が加わり、関節を支える靱帯が損傷または断裂することで発生すると説明しています。
交通事故では車同士の衝突だけでなく、バイク事故や自転車事故で肩から地面へ転倒した場合にも発生する可能性があります。
特に肩の上部を直接強く打った場合には注意が必要です。
交通事故で肩鎖関節脱臼が起こる原因
代表的なのは、肩の外側や上部へ直接大きな力が加わることです。
例えば、バイク事故で肩から路面へ転倒した、自転車事故で肩を地面へ強く打った、歩行中に車と衝突して肩から転倒した、車内で肩をドアや車体へ強く打ちつけた、といった状況が考えられます。
強い衝撃によって肩鎖靱帯や烏口鎖骨靱帯などが損傷すると、鎖骨と肩甲骨の位置関係が崩れ、肩鎖関節の脱臼につながります。
肩鎖関節脱臼の主な症状
肩鎖関節脱臼では、肩の上部を中心にさまざまな症状が現れます。
代表的なのは、肩上部の強い痛み、腫れ、内出血、腕を上げると痛い、肩を動かしにくい、肩の上部を押すと痛い、肩に段差や出っ張りができるといった症状です。現在の記事でも、強い痛み、腫れ・内出血、可動域制限、変形・突出感などが主な症状として挙げられています。
損傷が強い場合には、肩の上部で鎖骨が浮き上がったように見えることがあります。
ただし、見た目だけで損傷の程度を判断することはできません。交通事故後に肩を強く打ち、痛みや腫れがある場合には整形外科を受診しましょう。
肩の出っ張りはなぜ起こる?
肩鎖関節脱臼で特徴的なのが、肩の上部にみられる出っ張りや段差です。
肩鎖関節を支えている靱帯が損傷すると、鎖骨と肩甲骨の正常な位置関係を維持しにくくなります。その結果、鎖骨の外側部分が浮き上がったように見えることがあります。
この変形の程度は損傷の重症度によって異なります。
また、治療後も外見上の突出が残る場合があります。「痛みがなくなった=見た目も完全に元通りになる」とは限らないことは知っておきましょう。
肩鎖関節脱臼のRockwood分類
肩鎖関節脱臼では、損傷の程度を判断するため「Rockwood分類」が広く使われています。
日本整形外傷学会では、肩鎖靱帯、烏口鎖骨靱帯、三角筋、僧帽筋などの損傷程度によってType I~VIに分類しています。
Type Iは主に肩鎖靱帯の軽度損傷、Type IIでは肩鎖靱帯が断裂し烏口鎖骨靱帯にも損傷が及びます。Type IIIでは肩鎖靱帯と烏口鎖骨靱帯が損傷します。Type IV~VIはさらに大きな転位などを伴う重度の損傷です。
この分類は治療方法を決める重要な判断材料になります。
肩鎖関節脱臼はレントゲンで分かる?
肩鎖関節脱臼が疑われる場合には、診察に加えてX線(レントゲン)検査などで肩鎖関節の位置関係や損傷状態を確認します。
交通事故では肩鎖関節脱臼だけでなく、鎖骨骨折や肩周辺の骨折などを伴っている可能性もあります。
そのため、
「肩を動かせるから骨折や脱臼ではないだろう」
と自己判断しないことが大切です。
交通事故後に肩の強い痛み、腫れ、変形などがある場合には整形外科で検査を受けましょう。
肩鎖関節脱臼の治療方法
肩鎖関節脱臼の治療方法は、損傷の程度、年齢、仕事内容、スポーツ活動、痛み、肩の機能などを考慮して決められます。
大きく分けると、保存療法と手術療法があります。
現在の記事では「Rockwood分類III以上の場合には手術を検討」としていますが、ここは修正をおすすめします。
日本整形外傷学会では、Type I・IIは保存療法が選択され、Type IV~VIは基本的に手術適応としています。一方、Type IIIは一律に手術ではなく、若年者やスポーツを行う人では手術を考慮し、中高年者では保存療法が選択されることも多いと説明しています。
Type IIIについては治療方針に議論があり、保存療法から開始する考え方もあります。
保存療法
比較的軽度の肩鎖関節脱臼では、手術を行わず保存療法が選択されることがあります。
日本整形外傷学会では、保存療法の場合、基本的に安静とし、三角巾を3週間程度装着し、腫れや痛みが軽減した段階で肩関節の可動域訓練を開始すると説明しています。
ただし、固定期間や運動開始時期は損傷の程度によって異なります。
自己判断で三角巾を外したり、痛みを我慢して肩を大きく動かしたりせず、医師の指示に従ってください。
手術療法
損傷が重度の場合には手術が検討されます。
特にRockwood分類Type IV~VIでは基本的に手術療法が適応となると日本整形外傷学会は説明しています。
一方でType IIIについては、年齢、仕事、スポーツ、肩に求められる機能、痛みや不安定感などを考慮して治療方法が判断されます。
手術方法にも複数の選択肢があるため、具体的な方法については担当する整形外科医から説明を受けましょう。
肩鎖関節脱臼はどれくらいで治る?
回復までの期間は、損傷の程度や治療方法によって大きく異なります。
軽度の損傷と靱帯が大きく断裂した重度の脱臼では、当然ながら同じ経過にはなりません。また、痛みが軽くなるまでの期間、肩の可動域が戻るまでの期間、仕事へ復帰できるまでの期間、スポーツへ復帰できるまでの期間もそれぞれ異なります。
そのため、
「肩鎖関節脱臼なら○週間で完全に治る」
と一律に考えることはできません。
治療中は医師の指示に従い、肩の状態を確認しながら段階的に日常生活や仕事へ戻していくことが重要です。
肩鎖関節脱臼のリハビリ
固定や手術後には、肩関節の動きを回復させるためにリハビリが重要になります。
長期間肩を動かさない状態が続くと、肩周辺の筋力が低下したり、肩の動きが悪くなったりすることがあります。
一方で、まだ組織が十分に回復していない段階から無理に動かすことも適切ではありません。
「早く治したいからたくさん動かす」のではなく、損傷の回復段階に合わせてリハビリを進めることが大切です。
肩鎖関節脱臼で後遺症が残ることはある?
適切な治療を受けても、事故の程度によっては症状や変形が残る場合があります。
現在の記事では、慢性的な痛み、肩の可動域制限、関節の不安定性、関節炎、日常生活や仕事への影響などを後遺症として挙げています。
例えば、肩の痛みが残る、腕が十分に上がらない、重い物を持つと痛む、肩の上部に変形が残る、仕事やスポーツに支障が出るといった問題です。
ただし、医学的な意味での「後遺症」と、自賠責保険上の「後遺障害」は同じではありません。
肩の変形が残ることはある?
肩鎖関節脱臼では、治療後も鎖骨外側の突出や肩周辺の形の左右差が残る場合があります。
ここで重要なのは、見た目の変形が残ったことと、肩の機能が失われていることは別に評価する必要があるという点です。
変形があっても肩を十分に動かせるケースもあれば、痛みや可動域制限を伴うケースもあります。
交通事故後に変形が残った場合には、見た目だけでなく、肩の動きや痛みなどについても医師へ伝えておきましょう。
肩鎖関節脱臼で後遺障害は認定される?
治療を続けても肩の機能障害や変形、痛みなどが残った場合には、状態によって後遺障害等級認定を検討することがあります。
ただし、
「肩鎖関節脱臼をした=後遺障害になる」
ということではありません。
国土交通省では、交通事故による傷害が治ったときに残り、傷害との相当因果関係が認められ、その存在が医学的に認められる症状について、自賠責保険上の後遺障害の対象になるとしています。
肩鎖関節脱臼では、治療後に残った状態によって、肩関節の可動域などの機能障害、鎖骨周辺の変形障害、痛みなどの神経症状が問題になる可能性があります。
ただし、実際にどの等級に該当するかは診断名だけでは決まりません。
肩が上がらない場合は医師へ伝える
肩鎖関節脱臼後に、
「腕を真上まで上げられない」「反対側と比べて肩が動かない」「背中へ手を回しにくい」「仕事で腕を上げ続けることができない」
といった問題が残る場合があります。
このような症状がある場合には、単に「肩が痛い」と伝えるだけではなく、どの方向へどの程度動かしにくいのか、日常生活や仕事で何に困っているのかまで主治医へ伝えることが大切です。
治療後に可動域制限が残った場合、後遺障害の判断でも肩関節の可動域などが重要になることがあります。
肩鎖関節脱臼の慰謝料
交通事故によって肩鎖関節脱臼を負った場合、条件を満たせば治療費だけでなく、休業損害や慰謝料なども損害賠償の対象になります。
自賠責保険では、傷害による損害として治療関係費、文書料、休業損害、慰謝料などが対象となり、傷害部分の支払限度額は被害者1人につき120万円です。
ただし、
「肩鎖関節脱臼なら120万円もらえる」
という意味ではありません。
120万円は治療費や休業損害、慰謝料などを含めた自賠責保険の傷害部分全体の支払限度額です。
肩鎖関節脱臼の慰謝料はいくら?
慰謝料は「肩鎖関節脱臼」という傷病名だけで決まるわけではありません。
治療期間、入院期間、通院状況、手術の有無、後遺障害の有無などによって異なります。
さらに交通事故の損害賠償では、自賠責保険だけでなく任意保険や裁判基準などが関係する場合があるため、実際の金額は個々の事故によって異なります。
現在の記事でも、治療期間、入通院状況、後遺症、経済的損失などによって慰謝料が変わるとしています。この基本的な考え方は残して問題ありません。
後遺障害が認定された場合の補償
治療後も一定の障害が残り、後遺障害として認定された場合には、傷害部分とは別に後遺障害による慰謝料や逸失利益などが対象となります。
自賠責保険では、介護を要しない後遺障害について第1級から第14級まで区分され、支払限度額は第1級3,000万円から第14級75万円です。
ここでも重要なのは、肩鎖関節脱臼という診断名だけで等級が決まるわけではないことです。
治療後にどのような障害が残ったのかが重要になります。
仕事を休んだ場合は休業損害も確認する
肩鎖関節脱臼では、仕事内容によって仕事への影響が大きくなることがあります。
特に、重い物を持つ仕事、腕を肩より高く上げる仕事、建設業、運送業などでは、肩の痛みや可動域制限によって仕事を休まなければならないケースがあります。
自賠責保険では、傷害による損害として休業損害も補償対象となっています。
仕事を休んだ場合には、慰謝料だけでなく休業損害についても確認しましょう。
症状が残っている状態で示談を急がない
治療中にもかかわらず、保険会社から示談について話をされることがあります。
肩の痛みや可動域制限、変形などが残っている場合には、今後の治療や後遺障害について確認しないまま示談を急ぐことはおすすめできません。
国土交通省では、自賠責保険における「症状固定」を、症状が安定し、医学上一般に認められた医療を行っても治療効果が期待できなくなった状態と説明しており、症状固定は医師が判断します。
症状が残っている場合には主治医へ相談し、必要に応じて弁護士など専門家への相談も検討しましょう。
肩鎖関節脱臼に鍼治療はできる?
現在の記事では、冒頭で「関節に異常がない場合、筋肉や靱帯が問題であり鍼灸整骨院かまたきで施術を行っています」としています。
ここは少し修正した方がよいです。
鍼治療によって脱臼した肩鎖関節を整復したり、断裂した靱帯そのものを元通りにしたりすることはできません。
交通事故直後や肩鎖関節脱臼の治療中は、まず整形外科で損傷の程度を診断してもらい、必要な固定、手術、リハビリなどを受けることが優先されます。
肩鎖関節脱臼後に鍼灸整骨院でできること
医療機関での治療やリハビリ後も、「肩周辺の筋肉が張る」「肩を動かすと周辺の筋肉がつらい」「肩甲骨周辺まで張る」などの症状が残る場合があります。
このような場合には、肩鎖関節脱臼そのものを治すのではなく、医療機関で関節の状態を確認したうえで、周辺の筋肉などに対する補助的な施術を検討するという位置付けになります。
鍼灸整骨院かまたきでは、整形外科での治療やリハビリを受けても肩周辺の筋肉の張りや痛みが残っている場合などに、身体の状態を確認したうえで施術を検討します。
ただし、肩鎖関節の不安定性や強い可動域制限などが残っている場合には、施術より整形外科での再評価を優先します。
よくある質問
肩鎖関節脱臼とはどこの脱臼ですか?
鎖骨の外側と肩甲骨の肩峰をつないでいる肩鎖関節周辺の靱帯などが損傷し、鎖骨と肩甲骨の正常な位置関係が崩れた状態です。
肩鎖関節脱臼では肩が出っ張りますか?
損傷の程度によって、肩の上部で鎖骨が浮き上がったような出っ張りや段差がみられる場合があります。治療後も外見上の変形が残るケースがあります。
肩鎖関節脱臼は手術しないと治りませんか?
すべての肩鎖関節脱臼で手術が必要なわけではありません。日本整形外傷学会ではType I・IIは保存療法、Type IV~VIは基本的に手術適応とし、Type IIIについては年齢や活動性などを考慮して治療方法を判断するとしています。
肩鎖関節脱臼はどれくらいで治りますか?
損傷の程度や治療方法、年齢、仕事内容などによって異なります。痛みの軽減、肩の可動域回復、仕事・スポーツへの復帰までの期間もそれぞれ異なるため、主治医の指示に従って段階的に回復を目指します。
肩鎖関節脱臼で後遺症が残ることはありますか?
肩の痛み、可動域制限、肩上部の変形、不安定感などが残る場合があります。症状が長引いている場合には主治医へ具体的に伝えましょう。
肩鎖関節脱臼で後遺障害になることはありますか?
治療後も肩の機能障害、変形、痛みなどが残り、自賠責保険上の要件を満たした場合には後遺障害が認定される可能性があります。ただし、肩鎖関節脱臼という診断名だけで認定されるものではありません。
肩鎖関節脱臼の慰謝料はいくらですか?
傷病名だけで慰謝料が決まるわけではありません。治療期間、入通院状況、手術の有無、後遺障害の有無などによって異なります。
肩鎖関節脱臼に鍼治療はできますか?
鍼治療によって脱臼を整復したり断裂した靱帯を元通りにしたりすることはできません。まず整形外科で治療を受け、その後も肩周辺の筋肉の張りなどが残っている場合には、状態に応じて補助的な施術を検討します。
まとめ
交通事故による肩鎖関節脱臼は、肩へ強い衝撃が加わることで肩鎖靱帯や烏口鎖骨靱帯などが損傷し、鎖骨と肩甲骨の位置関係が崩れた状態です。特にバイク・自転車事故などで肩から路面へ転倒した場合には注意が必要です。
肩鎖関節脱臼は損傷の程度によって治療方法が異なります。日本整形外傷学会では、Rockwood分類Type I・IIでは保存療法、Type IV~VIでは基本的に手術療法が適応となり、Type IIIについては年齢や活動性などを考慮して治療方法を判断するとしています。
治療後も肩の痛み、可動域制限、変形などが残ることがあります。交通事故の場合には、症状が残ったときに後遺障害が問題になる可能性もあるため、痛みだけでなく「腕がどこまで上がるのか」「仕事のどの動作ができないのか」「肩の変形が残っているのか」なども主治医へ具体的に伝えておくことが重要です。
また、自賠責保険では傷害部分について治療関係費、休業損害、慰謝料などが対象となり、支払限度額は被害者1人につき120万円です。後遺障害が認定された場合には、障害の程度に応じて逸失利益や慰謝料などが別途対象になります。
鍼灸整骨院を利用する場合には、肩鎖関節脱臼そのものを鍼や整体で治そうとするのではなく、整形外科で診断・治療→必要なリハビリ→関節の状態を確認→残っている筋肉などの症状に対して補助的な施術を検討するという順序が大切です。

