交通事故による末梢神経障害とは?しびれ・痛み・麻痺の症状、治療・後遺症・慰謝料を解説

交通事故のあと、「手足のしびれが取れない」「触った感覚がおかしい」「手に力が入らない」「足首を動かしにくい」「焼けるような痛みが続いている」といった症状に悩んでいませんか?交通事故では、衝突や転倒によって神経が直接損傷したり、骨折・脱臼・腫れなどによって神経が圧迫されたりすることで、末梢神経障害が起こることがあります。
末梢神経は脳や脊髄から身体の各部へ伸び、感覚や筋肉の運動などに関わっています。そのため神経が損傷すると、痛みやしびれだけでなく、感覚低下、筋力低下、手足の動かしにくさ、筋萎縮などが現れることがあります。末梢神経障害では、感覚障害、疼痛、筋力低下、筋萎縮、反射低下などが単独または組み合わさって現れることがあります。
交通事故後のしびれを「むちうちだから仕方ない」と自己判断するのはおすすめできません。神経のどこに問題があるのかによって治療方法や予後が異なるため、症状が続く場合には医療機関で原因を確認することが重要です。この記事では、交通事故による末梢神経障害について、原因、症状、検査、治療、回復、後遺症、後遺障害、慰謝料、鍼治療を検討する場合の注意点まで詳しく解説します。
末梢神経障害とは?
神経系は大きく中枢神経と末梢神経に分けられます。脳と脊髄が中枢神経、それ以外の身体各部へ伸びている神経が末梢神経です。
末梢神経には、皮膚などで感じた刺激を中枢へ伝える感覚神経、筋肉を動かすための情報を伝える運動神経などがあります。そのため末梢神経が損傷すると、「しびれる・感覚が鈍い」という感覚障害だけでなく、「力が入らない・動かせない」といった運動障害が起こることがあります。
交通事故では一つの末梢神経だけが損傷する場合もあります。例えば腕や手では橈骨神経、正中神経、尺骨神経、脚では坐骨神経、脛骨神経、腓骨神経などが問題になることがあります。
交通事故で末梢神経障害が起こる原因
交通事故による末梢神経障害には複数の原因があります。現在の記事にある「直接外傷・牽引や圧迫」という方向性は合っていますが、もう少し具体的にすると検索者に伝わりやすくなります。
神経への直接的な損傷
交通事故による強い衝撃で神経そのものが損傷することがあります。重度の場合には神経線維が大きく損傷したり、断裂したりすることもあります。
特に自転車・バイク事故や歩行者事故などでは身体を路面や車体へ直接ぶつけることがあり、神経だけでなく骨・筋肉・血管などを同時に損傷する可能性があります。
骨折や脱臼に伴う神経損傷
交通事故による骨折や脱臼に伴って、その近くを走行している神経が損傷することがあります。骨折した骨片による直接損傷だけでなく、脱臼や腫れによって神経が圧迫される場合もあります。
日本整形外科学会も正中神経麻痺について、骨折や脱臼などの外傷が原因になることがあり、神経損傷の状態によって神経剥離・神経縫合・神経移植などが行われる場合があると説明しています。
神経が強く引き伸ばされる
事故の衝撃によって腕や脚などが急激に引っ張られると、神経に強い牽引力が加わることがあります。
神経が完全に切れていなくても、強い牽引によって神経線維が損傷すると、事故後にしびれや筋力低下などが現れる可能性があります。
腫れや血腫による圧迫
交通事故後に周囲の組織が腫れたり出血したりすると、その近くを通っている神経が圧迫されることがあります。
神経への直接的な衝撃だけでなく、このような二次的な圧迫によって症状が現れる可能性もあります。
末梢神経障害で起こる主な症状
末梢神経障害では、損傷した神経の場所や程度によって症状が異なります。代表的なのは、しびれ、痛み、感覚低下、筋力低下、麻痺などです。
しびれ・感覚異常
「ビリビリする」「ジンジンする」「チクチクする」といったしびれのほか、触った感覚が鈍い、熱さや冷たさを感じにくいなどの感覚異常が現れる場合があります。
症状がどこに出ているのかは、損傷した神経を推測する重要な情報になります。
神経障害性疼痛
神経そのものが損傷すると、通常の打撲や筋肉痛とは異なる痛みが現れることがあります。「焼けるように痛い」「電気が走るように痛い」「針で刺されるように痛い」などと表現されることがあります。
筋力低下・麻痺
運動神経が影響を受けると筋肉を十分に動かせなくなり、握力が低下する、物をつかみにくい、指を動かしにくい、足首を上げられないなどの症状が現れることがあります。
筋萎縮
重度の神経障害が長期間続くと、神経から十分な刺激を受けられない筋肉が痩せてくることがあります。末梢神経障害では筋力低下だけでなく筋萎縮がみられることがあります。
交通事故後のしびれは末梢神経障害とは限らない
交通事故後に手足がしびれているからといって、必ず末梢神経が損傷しているとは限りません。
例えば首の神経根が圧迫・損傷されても腕や手にしびれが現れることがあります。また、脊髄の損傷によって手足の感覚や運動に問題が生じる場合もあります。
そのため、「しびれ=末梢神経障害」と自己判断せず、神経根・神経叢・末梢神経など、どの部分に問題があるのかを確認することが重要です。筋電図や神経伝導検査は、障害部位を判断するためにも利用されています。
末梢神経障害はどうやって検査する?
交通事故後に神経障害が疑われる場合には、事故状況や症状について問診し、感覚、筋力、反射などを診察します。
骨折や脱臼などが疑われる場合にはレントゲンやCT、神経を圧迫している組織などを詳しく確認するためにMRIなどの画像検査が検討される場合があります。
さらに末梢神経の機能を詳しく調べるために重要なのが「神経伝導検査」と「筋電図検査」です。
神経伝導検査
神経伝導検査では神経を電気的に刺激し、神経を信号が伝わる速度などを調べます。感覚神経と運動神経の両方を評価することができます。
筋電図検査
筋電図検査では筋肉の電気的活動を調べます。神経が損傷して筋肉への信号が十分に届いていない場合などに、異常が確認されることがあります。
神経伝導検査と筋電図検査を組み合わせることで、神経根、神経叢、末梢神経など障害の位置を判断したり、軸索障害と脱髄性障害を区別したりするための情報が得られます。
交通事故による末梢神経障害の治療
治療方法は神経損傷の場所や程度、骨折・脱臼などの有無によって異なります。軽度の神経障害と神経が断裂しているような重度の損傷では、治療方針が大きく異なります。
薬物療法
痛みがある場合には症状に応じて薬物療法が行われることがあります。神経障害性疼痛では一般的な鎮痛薬だけでなく、神経障害性疼痛に対する薬剤などが検討される場合があります。
使用する薬は症状や基礎疾患などによって異なるため、医師の指示に従ってください。
リハビリテーション
筋力低下や関節の動かしにくさなどがある場合には、神経の回復状態を確認しながらリハビリテーションを行います。
関節が硬くなることを防ぐための運動、残っている筋力を維持・改善する訓練、日常生活動作の練習など、障害の状態に合わせて進めます。
手術が必要になる場合
神経が切断されている場合や、骨折・脱臼などによって神経が強く圧迫されている場合などには手術が必要になることがあります。
例えば外傷性の正中神経麻痺では、状態によって神経剥離、神経縫合、神経移植などの手術が行われる場合があります。
そのため、強い筋力低下や麻痺がある場合に「しばらく様子を見れば治る」と自己判断するのはおすすめできません。
末梢神経障害はどれくらいで治る?
末梢神経障害について「何週間で治るのか?」と気になる方は多いと思いますが、回復期間を一律に決めることはできません。
神経が一時的に圧迫されている程度なのか、軸索が損傷しているのか、神経が断裂しているのかによって回復の可能性や期間は大きく異なります。また、損傷部位から筋肉までの距離、年齢、合併損傷なども関係します。
そのため、事故からの日数だけで「もう治らない」「○か月で治る」と判断するのではなく、診察や神経伝導検査、筋電図検査などによって回復状態を評価することが重要です。
末梢神経障害で残る可能性がある後遺症
神経損傷の程度によっては治療を続けても完全には回復せず、症状が長期間残る場合があります。現在の記事にも慢性的な痛み、運動障害、感覚異常などが挙げられており、この方向性は残して問題ありません。
しびれ・感覚低下
指先や手、足などにしびれが残ったり、触覚や温度感覚が低下したりすることがあります。
慢性的な神経痛
神経損傷によって、事故から時間が経過した後も焼けるような痛みや電気が走るような痛みなどが続く場合があります。
筋力低下・麻痺
運動神経の障害が残ると、握力低下、指を動かしにくい、足首を上げられないなどの機能障害が残る可能性があります。
日常生活・仕事への影響
手の神経障害であれば、文字を書く、パソコンを操作する、物を持つなどの動作に影響する場合があります。脚の神経障害では、歩行、階段昇降、運転、立ち仕事などへ影響する可能性があります。
同じ神経障害でも、仕事内容によって生活や労働への影響は大きく異なります。
末梢神経障害で後遺障害が認定されることはある?
交通事故による末梢神経損傷で治療を続けても症状が残った場合には、症状固定後に後遺障害等級認定を申請することがあります。
問題になる可能性があるのは、しびれや神経痛などの神経症状だけでなく、神経麻痺によって手指や足などの機能障害が残った場合です。
ただし、**「末梢神経障害と診断された=後遺障害が認定される」というものではありません。**事故との因果関係、残っている症状、画像検査、神経伝導検査、筋電図検査、筋力、可動域など、個別の状態をもとに判断されます。
特に神経症状では、症状を医学的に説明できる検査所見が重要になる場合があります。そのため、事故後から継続しているしびれや筋力低下などは担当医へ具体的に伝えておくことが大切です。
後遺症と後遺障害は違う
「後遺症」と「後遺障害」は同じ意味ではありません。一般的な後遺症は、治療後にも何らかの症状が残っている状態を指します。
一方、交通事故における後遺障害は、事故によって残った障害について所定の審査を受け、後遺障害等級として認定されたものです。
そのため、「しびれが残った=後遺障害慰謝料を受け取れる」とは限りません。
交通事故による末梢神経障害の慰謝料
現在の記事では「症状の重症度、治療期間、後遺症の程度、生活への影響などが考慮され慰謝料額が決定」としていますが、もう少し整理した方が分かりやすくなります。
交通事故によって末梢神経障害を負い、入院・通院した場合には、事故状況などに応じて入通院慰謝料(傷害慰謝料)が問題になります。
慰謝料は「末梢神経障害なら○万円」と一律に決まるわけではありません。入院・通院期間、治療状況、採用される算定基準などによって金額が異なります。
また、治療後に一定の障害が残って後遺障害等級が認定された場合には、入通院慰謝料とは別に後遺障害慰謝料が問題になることがあります。
治療費・休業損害は慰謝料とは別
交通事故による損害には、治療費、通院交通費、休業損害、入通院慰謝料などがあります。これらすべてを「慰謝料」と呼ぶわけではありません。
末梢神経障害によって手に力が入らない、歩行が困難になったなどの理由で仕事を休み、収入が減少した場合には、条件を満たせば休業損害を請求できる可能性があります。
特に手作業が必要な仕事や運転業務、建設業、製造業などでは、神経障害による筋力低下や感覚障害が仕事へ大きく影響する場合があります。
後遺障害が認定された場合の補償
一定の後遺障害が認定された場合には、後遺障害慰謝料だけでなく逸失利益が問題になることがあります。
逸失利益とは、後遺障害によって労働能力が低下し、将来得られるはずだった収入などが減少すると考えられる場合の損害です。
末梢神経障害では、どの神経がどの程度障害され、実際の仕事内容へどのような影響が残ったのかが重要になる場合があります。
末梢神経障害では示談を急がない
事故後にしびれや麻痺などが残っている場合には、症状の経過を十分に確認する前に示談を急ぐことはおすすめできません。
一度示談が成立すると、原則として後から追加の損害賠償を請求することが難しくなります。
まだ神経機能が回復途中なのか、症状固定と判断される状態なのか、後遺障害申請を検討する必要があるのかなどを確認してから示談を進めることが重要です。
末梢神経障害に鍼治療は有効?
現在の記事では、鍼治療について「血流を促進して炎症を抑える」「神経再生や機能回復をサポートする」としていますが、この部分は断定を弱めることをおすすめします。
末梢神経障害全般を対象とした鍼治療の研究はあり、糖尿病性末梢神経障害や手根管症候群など一部の疾患で有効性を示唆した研究があります。しかし研究対象となった末梢神経障害の原因はさまざまで、交通事故による外傷性末梢神経損傷にそのまま当てはめることはできません。また、研究方法にもばらつきがあり、より質の高い研究が必要とされています。
そのため、交通事故による末梢神経障害では、まず医療機関で神経損傷の場所や程度を診断してもらい、薬物療法、リハビリ、必要に応じた手術など適切な治療を受けることが基本です。
そのうえで、医療機関での治療やリハビリを続けても痛みなどが残っている場合に、補助的な選択肢として鍼治療を検討することがあります。ただし、鍼によって切断された神経をつなぐことはできず、「鍼をすれば神経が再生する」「麻痺が治る」と断定することもできません。
こんな症状がある場合は医療機関を優先する
交通事故後に急激に手足へ力が入らなくなった、麻痺が悪化している、広範囲に感覚がない、歩けない、排尿・排便に異常があるなどの場合には、鍼灸や整骨院での施術を優先するのではなく医療機関での評価が必要です。
特に複数の手足に症状が出ている場合には、末梢神経だけでなく脊髄など中枢神経系の問題も除外する必要があります。
交通事故後に残しておきたい記録
末梢神経障害では症状の経過を記録しておくことも重要です。診断書、MRIなどの画像検査、神経伝導検査、筋電図検査の結果、治療費の領収書、通院交通費、休業した日などは保管しておきましょう。
また、「右手の親指から中指がしびれる」「物を落とすようになった」「握力が低下した」「足首を上げられずつまずく」「10分歩くとしびれが強くなる」など、症状の場所や日常生活への影響を具体的に記録しておくと、治療経過を医師へ説明するときにも役立ちます。
よくある質問
末梢神経障害とは何ですか?
脳や脊髄以外の末梢神経に機能障害が生じた状態です。感覚障害、痛み、筋力低下、筋萎縮など、障害された神経によってさまざまな症状が現れます。
交通事故で末梢神経は損傷しますか?
交通事故による直接的な外傷、神経の牽引、骨折や脱臼、腫れなどによる圧迫によって末梢神経が損傷する可能性があります。
末梢神経障害ではどんな症状が出ますか?
しびれ、感覚低下、神経痛、筋力低下、麻痺、筋萎縮などが現れることがあります。症状は損傷した神経と損傷の程度によって異なります。
交通事故後のしびれは末梢神経障害ですか?
必ずしもそうとは限りません。末梢神経だけでなく、神経根、神経叢、脊髄などの障害によってもしびれが起こる可能性があります。
末梢神経障害はどうやって検査しますか?
感覚、筋力、反射などを診察し、必要に応じて画像検査、神経伝導検査、筋電図検査などが行われます。神経伝導検査と筋電図検査は、障害部位や神経障害の状態を評価するために利用されます。
末梢神経障害は治りますか?
回復の可能性や期間は神経損傷の程度によって大きく異なります。一時的な圧迫と重度の軸索損傷、神経断裂では予後が異なるため、検査結果などをもとに医師が評価します。
末梢神経障害で手術することはありますか?
あります。神経の断裂や強い圧迫などがある場合には、神経剥離、神経縫合、神経移植などが検討されることがあります。
末梢神経障害で後遺障害が認定されることはありますか?
治療後もしびれ、神経痛、麻痺など一定の障害が残った場合には後遺障害等級認定が問題になる可能性があります。ただし、末梢神経障害と診断されただけで自動的に認定されるわけではありません。
末梢神経障害の慰謝料はいくらですか?
一律には決まりません。入通院期間、治療状況、採用される算定基準などによって異なります。また、治療費や休業損害は慰謝料とは別の損害項目です。
末梢神経障害に鍼治療はできますか?
末梢神経障害に対する鍼治療の研究はありますが、原因によってエビデンスは異なり、交通事故による外傷性末梢神経損傷への有効性が確立しているとはいえません。まず医療機関で神経損傷の場所や程度を診断してもらい、必要な治療を受けることが重要です。
まとめ
交通事故では、衝突や転倒による直接的な外傷、神経の牽引、骨折・脱臼、腫れによる圧迫などによって末梢神経が損傷することがあります。末梢神経障害では、しびれや痛みだけでなく、感覚低下、筋力低下、麻痺、筋萎縮などが現れる場合があります。
交通事故後のしびれがすべて末梢神経障害とは限りません。神経根、神経叢、脊髄など別の場所の障害でも似た症状が現れるため、症状が続く場合には医療機関で原因を確認することが重要です。
診断では身体診察や画像検査に加えて、神経伝導検査や筋電図検査が行われる場合があります。これらの検査は、障害されている神経や筋肉の特定、神経障害の状態を評価するために利用されます。
治療方法は神経損傷の程度によって異なり、薬物療法やリハビリテーションなどの保存療法だけでなく、重度の神経損傷では手術が必要になる場合もあります。
治療後もしびれ、神経痛、筋力低下、麻痺などが残った場合には、後遺障害等級認定が問題になることがあります。また交通事故では、治療費のほか、事故状況などに応じて休業損害や入通院慰謝料などが問題になり、後遺障害が認定された場合には後遺障害慰謝料や逸失利益が問題になる可能性があります。
事故後からしびれや筋力低下が続いている場合は、「時間が経てば治る」と自己判断せず、症状の場所や変化を担当医へ具体的に伝え、必要な検査と治療を受けることが大切です。

