交通事故による関節可動域制限|原因・治療・後遺障害・慰謝料を解説

交通事故のあとに「肩が以前のように上がらない」「肘を最後まで伸ばせない」「膝が曲がらず正座できない」「足首が硬くてしゃがめない」といった症状が残ることがあります。このように関節を動かせる範囲が事故前より狭くなった状態を、関節の可動域制限といいます。

交通事故による可動域制限は、筋肉の緊張だけでなく、骨折、脱臼、靭帯損傷、腱損傷、関節周囲の炎症、長期間の固定などさまざまな原因によって起こります。治療を続けても一定の可動域制限が残った場合には、交通事故の後遺障害として評価される可能性もあります。

この記事では、交通事故による関節可動域制限の原因、症状、検査、治療、リハビリ、後遺障害、慰謝料、整骨院や鍼治療について詳しく解説します。

関節可動域制限とは?

関節可動域とは、肩、肘、手首、股関節、膝、足首などの関節をどこまで動かせるかを示す範囲です。

例えば、交通事故前には腕を頭の上まで上げられたのに事故後は肩の高さまでしか上げられない、膝を十分に曲げられず正座ができないといった状態が可動域制限にあたります。

単に「動かすと痛い」というだけでなく、実際に関節を動かせる角度そのものが狭くなっているかどうかが重要です。

交通事故で可動域制限が起こる原因

交通事故では身体に急激で大きな力が加わるため、骨や関節だけでなく筋肉、靭帯、腱などにも損傷が起こることがあります。

骨折

肩、肘、手首、股関節、膝、足首などの関節周辺を骨折すると、骨折そのものや治療のための固定によって関節を動かせる範囲が狭くなることがあります。

特に関節面まで骨折が及んでいる場合には、骨がついたあとも関節の動きに制限が残る可能性があります。

脱臼

関節が正常な位置から外れる脱臼では、関節包や靭帯など周囲の組織も損傷することがあります。脱臼が整復されたあとも、痛みや関節の硬さによって動かしにくさが残る場合があります。

靭帯損傷

交通事故の衝撃によって関節が強くひねられたり通常の範囲を超えて動かされたりすると、靭帯を損傷することがあります。

膝の前十字靭帯や側副靭帯、足首周囲の靭帯などを損傷すると、痛みや不安定感のために関節を十分に動かせなくなる場合があります。

腱や筋肉の損傷

肩の腱板など、関節を動かすために重要な腱や筋肉を損傷すると、自分の力で関節を十分に動かせなくなることがあります。

例えば交通事故後に腕を上げようとしても力が入らない場合には、単なる筋肉の張りだけではなく、腱や神経などの損傷が関係している可能性もあります。

炎症や腫れ

事故直後は関節周囲に炎症や腫れが起こることがあります。腫れによって関節内部の圧力が高くなったり、動かした際に痛みが出たりすることで、一時的に関節の動きが制限されることがあります。

長期間の固定

骨折や脱臼などの治療では、ギプスや装具によって一定期間関節を固定することがあります。

固定期間が長くなると関節周囲の組織が硬くなり、ギプスを外したあとも「関節が固まったように動かない」という状態になることがあります。このような状態は拘縮と呼ばれます。

交通事故後に可動域制限が起こりやすい関節

交通事故では全身のさまざまな関節に可動域制限が起こる可能性があります。

肩を上まで上げられない、後ろに手を回せない、服を着る動作が難しいといった症状がみられます。

鎖骨骨折、上腕骨骨折、肩関節脱臼、腱板損傷などが原因になることがあります。

肘を完全に伸ばせない、曲げられないことで、食事や着替えなどの日常動作に支障が出る場合があります。

肘周囲の骨折や脱臼などのあとに可動域制限が残ることがあります。

手首

手首を曲げたり反らしたりしにくくなると、物を持つ、ドアノブを回す、パソコンを使うといった動作に影響が出る場合があります。

橈骨遠位端骨折など、手首周辺の骨折後に可動域制限が残ることがあります。

股関節

股関節の可動域が狭くなると、歩行、階段、靴下を履く、車への乗り降りなどが難しくなることがあります。

骨盤や大腿骨周辺の骨折、股関節脱臼などが原因になる場合があります。

膝が曲がらないと正座やしゃがむ動作が難しくなり、伸びない場合には正常な歩行ができなくなることがあります。

大腿骨や脛骨の骨折、膝蓋骨骨折、靭帯損傷、半月板損傷などが関係する場合があります。

足首

足首が十分に曲がらないと、歩行や階段の昇降、しゃがみ動作などに影響します。

足関節周囲の骨折や靭帯損傷などのあとに可動域制限が残ることがあります。

「痛くて動かせない」と「関節が動かない」は違う

交通事故後に関節を動かせない場合でも、その原因は一つではありません。

痛みが強いため本人が動かせない場合もあれば、関節そのものが硬くなり物理的に動かせる範囲が狭くなっている場合もあります。

また、神経や腱の損傷によって、自分では動かせないものの他人が動かすと関節自体は動くこともあります。

そのため、後遺障害などを考える際には、自分で動かす「自動運動」だけでなく、医師などが外から動かす「他動運動」の可動域なども重要になります。

関節可動域は角度で測定する

関節の動きは、単に「動きにくい」「硬い」という感覚だけではなく、角度として測定することができます。

例えば、肩を前から上げる動き、肘を曲げ伸ばしする動き、膝を曲げる動きなどについて、専用の器具を使用して角度を測定します。

後遺障害の機能障害を評価する際には、原則として事故で負傷していない側の関節と比較して、どの程度可動域が制限されているかが重要になります。

交通事故後の可動域制限の検査

事故後に関節が動かしにくい場合には、まず整形外科などの医療機関で原因を確認することが重要です。

レントゲン

骨折や脱臼、骨の変形などを確認します。

CT

複雑な骨折や関節面の状態など、骨をより詳しく確認するときに行われることがあります。

MRI

靭帯、腱、半月板、軟骨など、レントゲンでは分かりにくい軟部組織を確認するときに使用されることがあります。

可動域測定

実際に関節が何度まで動くかを測定します。

後遺障害を検討する場合にも、関節可動域の数値は重要な資料になります。

交通事故による可動域制限の治療

治療方法は可動域制限の原因によって異なります。

骨折や脱臼がある場合には、まず骨や関節を適切な位置に戻し、必要に応じて固定や手術を行います。

靭帯や腱などを損傷している場合も、その程度によって保存療法や手術療法が検討されます。

その後、損傷部位が安定した段階でリハビリを行い、徐々に関節の動きを回復させていきます。

リハビリで可動域を回復させる

関節を長期間動かさない状態が続くと、関節周囲の組織が硬くなり可動域制限が強くなる可能性があります。

そのため、医師の指示のもと、損傷部位の状態に合わせて適切な時期から関節運動や筋力訓練などのリハビリを進めることが重要です。

ただし、「硬いからたくさん動かせばいい」というものではありません。

骨折が十分に安定していない状態や靭帯損傷の急性期などに無理に関節を動かすと、症状を悪化させる可能性があります。

自己判断で強いストレッチを行わず、医師やリハビリ担当者の指示に従ってください。

リハビリ終了後も可動域制限が残ることがある

治療やリハビリを行っても、事故前と同じ可動域まで完全に戻らない場合があります。

特に関節周囲の骨折、重度の脱臼、靭帯や腱の損傷などでは、一定の制限が残る可能性があります。

「リハビリが終わったから治った」と考えるのではなく、どの程度関節の機能が回復しているのかを確認することが大切です。

可動域制限が残ると日常生活にどんな影響がある?

可動域制限は、関節の種類によって日常生活への影響が異なります。

肩が上がらなければ洗髪や着替えが難しくなることがあります。肘が曲がらなければ食事動作に支障が出る場合があります。

膝や足首に制限が残れば、歩行、階段、正座、しゃがむ動作などが難しくなることがあります。

仕事で腕を上げる、高い場所の物を取る、重い物を持つ、長時間歩くといった動作が必要な方では、仕事への影響も大きくなる可能性があります。

交通事故の可動域制限は後遺障害になる?

交通事故による骨折や脱臼などの治療を続けても関節の可動域制限が残った場合には、後遺障害の「機能障害」として評価される可能性があります。

ただし、関節が少し動かしにくいだけで自動的に後遺障害として認定されるわけではありません。

どの関節を負傷したのか、どの程度可動域が制限されているのか、事故による骨折や脱臼などの医学的な原因が確認できるかなどが重要になります。

後遺障害では健側との比較が重要

関節の機能障害を評価する際には、原則として事故で負傷した関節と、負傷していない反対側の関節の可動域を比較します。

例えば右肩を負傷した場合には、右肩と左肩の可動域を比較して、どの程度制限されているかを確認します。

ただし、反対側の関節にも以前から障害がある場合などは、参考可動域角度などを使用して評価する場合があります。

後遺障害診断書と可動域測定

交通事故の後遺障害認定を申請する場合には、医師が作成する後遺障害診断書が重要になります。

可動域制限が残っている場合には、関節が何度まで動くかなどを測定し、その結果が診断書へ記載されることがあります。

そのため、可動域制限が残っているにもかかわらず自己判断で通院を終了してしまうのではなく、症状について主治医へ伝えておくことが大切です。

交通事故による可動域制限と慰謝料

交通事故によって治療が必要になった場合には、事故状況などに応じて治療費、通院交通費、休業損害、入通院慰謝料などが補償の対象になる場合があります。

さらに治療後も可動域制限が残り、後遺障害として認定された場合には、後遺障害慰謝料や逸失利益などが問題になる可能性があります。

ただし、単に関節が動かしにくいというだけで慰謝料が増えるわけではありません。

症状と交通事故との因果関係、医学的な所見、可動域の測定結果、後遺障害等級などによって補償内容は異なります。

自賠責保険の補償

自賠責保険では、傷害による損害について治療関係費、休業損害、慰謝料などを含め、被害者1人につき120万円が支払限度額となっています。

治療後に後遺障害が認定された場合には、傷害とは別に後遺障害について等級に応じた支払限度額が設定されています。

交通事故の補償は事故状況や過失割合などによっても異なるため、保険会社から提示された内容について疑問がある場合には、交通事故に詳しい弁護士などへ相談する方法もあります。

整形外科と整骨院は併用できる?

交通事故後に可動域制限がある場合には、まず整形外科などの医療機関で原因を確認することが重要です。

骨折、脱臼、靭帯損傷、腱損傷などが原因の場合には、画像検査や医学的な診断が必要になります。

そのうえで、医師による治療やリハビリと並行して、筋肉の緊張や身体全体のバランスなどに対する施術を整骨院で受けるケースもあります。

交通事故の保険を利用して整骨院へ通院する場合には、医師や保険会社へ確認しておくことも大切です。

可動域制限に鍼治療は使える?

鍼治療によって、骨折した骨や断裂した靭帯・腱そのものを元に戻すことはできません。

そのため、交通事故後に関節が動かしにくい場合には、最初に医療機関で原因を確認することが重要です。

一方、骨折などが安定し医師による治療を受けているものの、関節周囲の筋肉の緊張や痛みなどが残っている場合には、身体の状態に応じて鍼施術を補助的に検討することがあります。

鍼灸整骨院かまたきでは、事故後に「肩が上がりにくい」「膝が曲げにくい」「リハビリ終了後も関節が硬い」といったお悩みについて、状態を確認したうえで施術を行っています。

千葉市で交通事故後の可動域制限にお悩みの方へ

交通事故後の関節可動域制限は、単なる筋肉の硬さだけでなく、骨折、脱臼、靭帯損傷、腱損傷、長期間の固定など、さまざまな原因によって起こります。

そのため、まず原因を正確に確認し、その状態に合った治療やリハビリを進めることが重要です。

「リハビリを続けているけれど肩が上がらない」「骨折は治ったと言われたのに膝が曲がらない」「治療終了後も足首が硬く歩きにくい」といった場合にはご相談ください。

鍼灸整骨院かまたきでは、整形外科へ通院している方や他院からの変更についてのご相談にも対応しています。

まとめ

交通事故による関節可動域制限は、骨折、脱臼、靭帯損傷、腱損傷、関節周囲の炎症、長期間の固定などによって起こることがあります。

肩が上がらない、肘を伸ばせない、膝が曲がらない、足首が硬いなどの症状が残っている場合には、自己判断で無理に動かすのではなく、整形外科などの医療機関で原因を確認することが重要です。

治療やリハビリを行っても可動域制限が残った場合には、交通事故の後遺障害として評価される可能性があります。関節可動域は角度として測定され、原則として負傷していない側との比較などによって機能障害が評価されます。

事故後の可動域制限を放置せず、適切な診断、治療、リハビリを受けながら回復を目指しましょう。