交通事故による手根管症候群とは?手のしびれ・原因・治療・後遺障害・慰謝料まで解説

交通事故後から親指、人差し指、中指などにしびれが出て、「手根管症候群」と診断されることがあります。「交通事故が原因で手根管症候群になることはある?」「事故後から手がしびれるけれど、むちうちとは違う?」「手術が必要?」「しびれや握力低下が残ったら後遺障害になる?」など、不安を感じる方もいるでしょう。

手根管症候群とは、手首にある「手根管」という狭いトンネルの中で正中神経が圧迫されることで、手指のしびれや痛み、細かな動作のしにくさなどが現れる疾患です。日本整形外科学会では、原因不明の特発性が多いものの、骨折などのケガやケガによるむくみによって発症することもあるとしています。

交通事故では手首を強く打ったり、転倒時に手をついたりして、手首の骨折や腫れなどが起こることがあります。その結果として手根管内の正中神経が圧迫され、手根管症候群につながる可能性があります。

この記事では、交通事故による手根管症候群について、原因、特徴的なしびれ、検査、治療、手術、後遺症、後遺障害、慰謝料、鍼施術を検討する際の注意点まで詳しく解説します。

手根管症候群とは?

手根管症候群は、手首にある「手根管」の中を通っている正中神経が圧迫されることで発症する末梢神経障害です。

手根管は、手根骨と横手根靱帯(屈筋支帯)に囲まれたトンネル状の空間で、その中を正中神経と指を動かす腱が通っています。この空間で正中神経が圧迫されると、正中神経が担当する指にしびれや痛みが現れます。

症状が進行すると感覚だけでなく運動機能にも影響し、親指の付け根にある母指球筋がやせたり、物をつまむなどの細かな動作が難しくなったりすることがあります。

交通事故で手根管症候群になることはある?

可能性はあります。

日本整形外科学会では、手根管症候群の多くは原因がはっきりしない特発性ですが、骨折などのケガや、ケガによるむくみなどによって正中神経が圧迫されて発症する場合があると説明しています。

交通事故では、ハンドルへ手を強くぶつける、バイクや自転車から転倒して手をつく、車との衝突で手首を負傷するなど、手首へ大きな外力が加わることがあります。

その結果、骨折や腫れなどによって手根管内部の圧力が高まり、正中神経が圧迫されれば、手根管症候群につながる可能性があります。

ただし、交通事故後に手がしびれているからといって、すべてが手根管症候群とは限りません。

交通事故後の手のしびれは原因を確認することが重要

交通事故後の手や指のしびれには、さまざまな原因が考えられます。

例えば、手根管で正中神経が圧迫される手根管症候群だけでなく、事故による手首周辺の神経損傷や、より上位での神経障害などが関係する場合があります。

そのため、

「事故後に手がしびれる=手根管症候群」

と自己判断しないことが重要です。

特に交通事故では首にも大きな力が加わることがあります。手のしびれがある場合には、どこで神経に問題が起きているのかを医療機関で確認することが大切です。

交通事故による手根管症候群の主な原因

交通事故後に手根管症候群が発症する場合には、事故による手首周辺の外傷が関係することがあります。

手首の骨折

交通事故で手をついたり手首へ強い衝撃を受けたりすると、手首周辺を骨折することがあります。骨折などの外傷によって手根管周辺の状態が変化すると、正中神経が圧迫される原因になる場合があります。日本整形外科学会でも、骨折などのケガを手根管症候群の原因の一つとして挙げています。

外傷後の腫れ

交通事故によって手首を負傷すると、周辺組織が腫れることがあります。手根管は伸び縮みしにくい狭い空間なので、内部でむくみなどが生じると正中神経が圧迫される可能性があります。

手首周辺の外傷

事故によって手首周辺を負傷した場合には、骨折だけでなくさまざまな組織が影響を受ける可能性があります。そのため、手根管症候群だけを見るのではなく、事故によってどのような損傷が起きているのかを確認することが重要です。

手根管症候群ではどの指がしびれる?

手根管症候群の特徴を理解するうえで非常に重要なのが、しびれる場所です。

日本整形外科学会では、初期には人差し指と中指にしびれや痛みが現れ、進行すると親指から薬指の親指側までの3本半に症状が現れると説明しています。これは正中神経が感覚を担当している領域です。

つまり、

親指
人差し指
中指
薬指の親指側

などにしびれや痛みが出るのが特徴です。

反対に、小指のしびれが中心の場合には、手根管症候群とは異なる原因も考える必要があります。

夜中や明け方にしびれが強くなることがある

手根管症候群では、夜間から明け方にかけて症状が強くなることがあります。

日本整形外科学会では、急性期にはしびれや痛みが明け方に強くなり、症状によって目が覚める場合があると説明しています。また、手を振ったり指を曲げ伸ばししたりすると、一時的に症状が軽くなることがあります。

事故後から、

「夜中に手がしびれて目が覚める」
「朝起きると親指から中指がしびれている」
「手を振ると少し楽になる」

という症状がある場合には、医師へ具体的に伝えてください。

手根管症候群が進行するとどうなる?

正中神経への圧迫が続くと、しびれだけではなく手の運動機能にも影響することがあります。

症状が進行すると、親指の付け根にある母指球筋がやせてきたり、親指と人差し指を使った細かな動作が難しくなったりすることがあります。日本整形外科学会では、重症になると親指と人差し指できれいなOKサインを作りにくくなり、縫い物などの細かな作業や小さい物をつまむ動作が難しくなると説明しています。

AAOSも、正中神経への圧迫が長期間続くと、手の感覚や機能に永続的な障害が残る可能性があるため、早期の診断と治療が重要としています。

こんな症状があれば早めに整形外科へ

交通事故後に手のしびれが出ている場合には、放置せず整形外科などで評価を受けることをおすすめします。

特に、しびれが続いている、握力が落ちた、物を頻繁に落とすようになった、親指に力が入りにくい、細かい作業ができない、親指の付け根がやせてきたなどの症状がある場合には注意が必要です。

手根管症候群以外の神経障害が隠れている可能性もあるため、事故との関係も含めて診断してもらいましょう。

手根管症候群の検査

手根管症候群の診断では、症状が出ている場所や経過を確認したうえで、手首や手指の診察を行います。

日本整形外科学会では、ティネル様サイン、ファレンテスト、母指球筋の筋力・萎縮の確認などを行い、補助検査として神経伝導などを調べる電気生理学的検査を行うことがあるとしています。

ティネル様サイン

手首の手根管部分を軽く叩き、親指、人差し指、中指などへしびれや痛みが響くか確認する検査です。

症状が指先へ響く場合にはティネル様サイン陽性と呼ばれます。

ファレンテスト

手首を曲げた状態を一定時間保ち、しびれや痛みが強くなるか確認する方法です。

日本整形外科学会では、手首を直角に曲げて手の甲を合わせ、1分以内に症状が悪化する場合をファレンテスト陽性と説明しています。

神経伝導検査・筋電図検査

必要に応じて、正中神経の働きを詳しく確認するために電気生理学的検査が行われます。

日本整形外科学会では、手根管を挟んだ正中神経の伝導速度を測定すると説明しています。

なお、2024年のAAOSガイドラインでは、典型的な手根管症候群ではCTS-6という臨床評価によって診断できる場合があり、神経伝導検査や筋電図などをすべての患者へ routinely 行う必要はないという考え方も示されています。

MRIは必要?

手根管症候群だからといって、すべての患者さんにMRIが必要というわけではありません。

日本整形外科学会では、腫瘤などが疑われる場合にはエコーやMRIなどが必要になることがあるとしています。

一方、2024年のAAOSガイドラインでは、一般的な手根管症候群の診断目的でMRIを使用することは推奨していません。

交通事故の場合には手根管症候群だけでなく骨折など他の外傷を確認する必要があるため、どの画像検査が必要かは医師が事故状況や症状に応じて判断します。

手根管症候群の治療

治療方法は、症状の程度や原因、神経障害の進行度などによって異なります。

大きく分けると保存療法と手術療法があります。

保存療法

症状や状態によっては、まず保存的な治療が行われます。

日本整形外科学会では、薬物療法、仕事や運動量の調整、シーネによる局所安静、手根管内への注射などを治療方法として挙げています。

手首の固定

手首を強く曲げた状態では手根管内の正中神経へ負担がかかりやすいため、症状によってはシーネや装具を使用して手首を安静にします。

AAOSでも、夜間に手首を中間位に保つスプリント・装具は、初期症状に対して使用される治療方法の一つとしています。

薬や注射

症状によって薬物療法や手根管内への注射が行われることがあります。

ただし、2024年のAAOSガイドラインでは、ステロイド注射について短期的な症状軽減は期待できるものの、長期的な改善効果は認められていないとしています。

そのため、注射をすれば根本的に治ると考えるのではなく、症状や神経障害の程度を確認しながら治療方針を決めることが重要です。

手術が必要になる場合

保存療法を行っても症状が改善しない場合や、母指球筋の萎縮など神経障害が進行している場合には手術が検討されます。

日本整形外科学会では、難治性のものや母指球筋がやせているもの、腫瘤があるものなどでは手術が必要になるとしています。現在は内視鏡を使用する鏡視下手根管開放術や、小さな切開で行う直視下手根管開放術などがあります。

手術では横手根靱帯を切開して手根管を広げ、正中神経への圧迫を取り除きます。

手術すればしびれは必ず治る?

手術によって正中神経への圧迫を解除しても、すべての症状がすぐ完全になくなるとは限りません。

特に長期間にわたって正中神経が強く圧迫され、感覚障害や筋萎縮などが進んでいる場合には回復に時間がかかったり、一部の症状が残ったりする可能性があります。

そのため、症状が強くなってから長期間放置するのではなく、早期に医療機関で診断を受けることが重要です。AAOSも、長期間治療されない正中神経圧迫では永続的な手の機能・感覚障害につながる可能性があるとしています。

交通事故による手根管症候群で後遺症が残ることはある?

交通事故後に発症した手根管症候群では、治療を行っても症状が残る場合があります。

例えば、親指から薬指にかけてのしびれ、感覚低下、握力低下、親指の筋力低下、母指球筋の萎縮、細かな物をつまみにくい、ボタンを留めにくい、物を落としやすいなどです。

現在の記事でも慢性的なしびれ、感覚鈍麻、筋萎縮、握力低下などを後遺症として挙げています。この部分は方向性として問題ありません。

手根管症候群で後遺障害になることはある?

交通事故による外傷が原因で手根管症候群が発症し、治療後も神経症状などが残った場合には、状態によって後遺障害認定を検討することがあります。

ただし、

「手根管症候群と診断された=後遺障害が認定される」

わけではありません。

国土交通省では、交通事故による傷害が治ったときに障害が残り、傷害との相当因果関係が認められ、その存在が医学的に認められる場合に後遺障害の対象となるとしています。

そのため、交通事故による手根管症候群では、事故との因果関係、症状の経過、神経学的所見、検査結果、治療経過、最終的に残った症状などが重要になります。

交通事故との因果関係も重要

手根管症候群は交通事故だけで起こる疾患ではありません。

日本整形外科学会では、原因不明の特発性が多く、妊娠・出産期や更年期の女性に多いほか、骨折などのケガ、手の使いすぎ、透析、腫瘤などでも発症すると説明しています。

そのため交通事故後に手根管症候群と診断された場合でも、事故との因果関係が自動的に認められるわけではありません。

事故直後から症状が出ているのか、手首を負傷しているのか、事故前には症状がなかったのか、どのような検査結果が出ているのかなどが重要になります。

事故後から手のしびれが出た場合には、早い段階で医師へ症状を伝え、診療記録に残してもらうことも重要です。

手根管症候群の慰謝料

交通事故によって手根管症候群を発症した場合、事故との因果関係が認められれば、治療費だけでなく、条件に応じて休業損害や慰謝料などが損害賠償の対象になる可能性があります。

自賠責保険では、傷害による損害として治療関係費、文書料、休業損害、慰謝料などが対象となり、支払限度額は被害者1人につき120万円です。

ただし、

「手根管症候群なら120万円もらえる」

という意味ではありません。

120万円は慰謝料だけではなく、治療費や休業損害などを含めた自賠責保険の傷害部分全体の限度額です。

手根管症候群の慰謝料はいくら?

慰謝料は「手根管症候群」という診断名だけでは決まりません。

治療期間、入通院状況、事故との因果関係、症状の程度、後遺障害の有無などによって変わります。

現在の記事では「症状の重症度、治療期間、後遺症の有無、日常生活や職業への影響などを総合的に評価」としていますが、より正確には、慰謝料とその他の損害項目を分けて説明した方がよいでしょう。

特に、仕事への影響による収入減については、慰謝料そのものではなく休業損害や、後遺障害が認定された場合の逸失利益として問題になる場合があります。

仕事を休んだ場合は休業損害も確認

手根管症候群によって仕事ができず、収入が減少する場合があります。

特に、パソコン操作、調理、介護、美容、製造業、建設業など、手や指を頻繁に使う仕事では影響が大きくなる可能性があります。

自賠責保険では、交通事故による傷害のため仕事を休み収入が減少した場合、休業損害も補償対象となります。

後遺障害が認定された場合の補償

治療後も事故による神経障害などが残り、後遺障害として認定された場合には、障害の程度に応じて逸失利益や慰謝料などが補償対象となります。

自賠責保険では、介護を要しない後遺障害について第1級から第14級まであり、支払限度額は第1級3,000万円から第14級75万円です。

ただし、これも手根管症候群という診断名だけで等級が決まるわけではありません。

最終的にどのような神経症状や機能障害が残り、それが医学的にどの程度裏付けられているかが重要になります。

手根管症候群に鍼治療は有効?

現在の記事では「血流改善、神経刺激、炎症抑制によって痛みの軽減や機能改善に寄与する可能性がある」としています。

この部分は少し慎重な表現へ変更することをおすすめします。

手根管症候群は、手根管内で正中神経が圧迫されている状態です。そのため、まず圧迫の程度や原因を医療機関で確認することが重要です。

特に母指球筋の萎縮や強い筋力低下などがある場合には、鍼施術を優先するのではなく、整形外科・手外科で手術の必要性などを評価してもらう必要があります。

また、AAOSのガイドラインでは手根管症候群に対する鍼治療について確立した標準治療として位置付けるだけの十分な根拠は示されていません。したがって、「鍼で正中神経の圧迫を解除できる」「手根管症候群そのものを治せる」などの表現は避けた方がよいです。

鍼灸整骨院かまたきでできること

交通事故後から手のしびれが出ている場合には、まず整形外科などの医療機関を受診し、手根管症候群なのか、それ以外の神経障害なのかを確認することが重要です。

鍼灸整骨院かまたきでは、医療機関で必要な検査・治療を受けたうえで、手首や前腕周辺の筋肉の緊張、身体の動かしにくさなどが残っている場合に、身体の状態を確認して補助的な施術を検討します。

ただし、しびれが急激に強くなる、親指に力が入らない、物をつまめない、母指球筋がやせてきたといった症状がある場合には、整骨院での施術より整形外科・手外科での評価を優先してください。

よくある質問

交通事故が原因で手根管症候群になることはありますか?

交通事故による手首の骨折や外傷後のむくみなどによって正中神経が圧迫され、手根管症候群を発症する可能性があります。ただし、手根管症候群には交通事故以外にもさまざまな原因があるため、事故との因果関係を個別に確認する必要があります。

手根管症候群ではどの指がしびれますか?

主に親指、人差し指、中指、薬指の親指側にしびれや痛みが現れます。小指は正中神経の支配領域ではないため、小指中心のしびれでは他の原因も考える必要があります。

手根管症候群は夜に症状が強くなりますか?

夜間から明け方にしびれや痛みが強くなり、症状で目が覚めることがあります。手を振ったり指を動かしたりすると一時的に楽になる場合があります。

手根管症候群ではどんな検査をしますか?

症状や診察に加え、ティネル様サイン、ファレンテスト、母指球筋の筋力・萎縮などを確認します。必要に応じて神経伝導検査や筋電図検査などを行う場合があります。

手根管症候群は手術が必要ですか?

すべてのケースで手術が必要なわけではありません。保存療法で改善する場合もありますが、難治性の場合や母指球筋の萎縮など神経障害が進行している場合には手根管開放術が検討されます。

交通事故後の手のしびれは手根管症候群ですか?

必ずしもそうではありません。交通事故後の手のしびれには、手根管症候群以外の神経障害なども考えられるため、医療機関で原因を確認することが重要です。

手根管症候群で後遺障害になることはありますか?

事故による傷害との因果関係が認められ、治療後も医学的に認められる神経症状や機能障害が残った場合には、後遺障害認定の対象となる可能性があります。ただし、診断名だけで認定されるわけではありません。

手根管症候群の慰謝料はいくらですか?

診断名だけで慰謝料額は決まりません。治療期間、入通院状況、事故との因果関係、後遺障害の有無などによって異なります。

手根管症候群に鍼治療はできますか?

鍼施術を検討する場合でも、まず医療機関で正中神経の圧迫状態や原因を確認することが重要です。鍼によって物理的な神経圧迫を解除できるわけではないため、必要な医療を受けたうえで補助的な施術として検討します。

まとめ

手根管症候群は、手首にある手根管内で正中神経が圧迫され、親指、人差し指、中指、薬指の親指側などにしびれや痛みが現れる疾患です。進行すると母指球筋がやせたり、物をつまむなどの細かな動作が難しくなったりすることがあります。

手根管症候群の多くは原因が明確ではありませんが、骨折などのケガや外傷後のむくみが原因になる場合もあるため、交通事故後に発症する可能性があります。一方で、交通事故後の手のしびれには手根管症候群以外の原因も考えられるため、自己判断せず医療機関で原因を確認することが重要です。

治療では症状に応じて手首の固定などの保存療法が行われ、難治性の場合や母指球筋の萎縮などがある場合には手根管開放術が検討されます。神経への圧迫が長期間続くと感覚や手の機能に障害が残る可能性があるため、早期の診断と治療が重要です。

交通事故による傷害では、治療関係費、休業損害、慰謝料などが自賠責保険の対象となり、傷害部分の支払限度額は被害者1人につき120万円です。治療後も事故による障害が残り後遺障害として認定された場合には、障害の程度に応じて逸失利益や慰謝料などが対象となります。

鍼灸整骨院を利用する場合には、医療機関で原因を診断→必要な治療→その後も残る手首や前腕周辺の筋肉の緊張などについて補助的な施術を検討するという流れがおすすめです。