交通事故による前十字靭帯損傷とは?症状・MRI・治療・手術・後遺障害・慰謝料まで解説

交通事故のあとから膝が腫れて痛い、歩いていると膝がガクッと抜ける、階段の上り下りが怖い。このような症状がある場合、膝の「前十字靭帯(ACL)」を損傷している可能性があります。

前十字靭帯は膝関節を安定させる重要な靭帯です。交通事故で膝に強い衝撃が加わったり、膝が強くねじられたりすると、前十字靭帯が部分的または完全に断裂することがあります。

注意したいのは、痛みが軽くなったからといって靭帯が正常とは限らないことです。

日本整形外科学会でも、前十字靭帯などは痛みを感じにくい場合があり、高度な靱帯損傷でも1~2か月程度で日常生活に支障が少なくなることがあるため、「普通に歩けるようになったから大丈夫」と判断してはいけないと説明しています。

この記事では、交通事故による前十字靭帯損傷について、原因、症状、検査、MRI、保存療法、前十字靭帯再建術、リハビリ、後遺症、後遺障害、慰謝料まで詳しく解説します。

前十字靭帯(ACL)とは?

前十字靭帯は、膝関節の中にある重要な靭帯の一つです。

英語ではAnterior Cruciate Ligamentと呼ばれ、頭文字を取って「ACL」と呼ばれています。

膝関節には、大腿骨と脛骨を安定させる複数の靭帯があります。

前十字靭帯は特に、脛骨が大腿骨に対して前方へずれすぎるのを抑えたり、膝の回旋方向の安定性を保ったりする役割があります。

そのため前十字靭帯を断裂すると、単純に「膝が痛い」というだけでなく、

膝がガクッと抜ける
方向転換すると膝が不安定になる
階段が怖い
スポーツができない

など、膝の安定性に関係する問題が起こることがあります。

交通事故で前十字靭帯を損傷することはある?

あります。

膝の靱帯損傷は、膝へ直接大きな力が加わる場合だけでなく、身体の動きによって膝が強くねじられるなどの間接的な外力でも起こります。

日本整形外科学会では、膝の靱帯損傷について、直接膝へ力が加わる「直達外力」と、着地時に膝をねじるような「介達外力・非接触性外傷」があると説明しています。

交通事故でも同様に、衝突によって膝へ大きな力が加わったり、転倒・転落時に膝がねじられたりすることで前十字靭帯を損傷する可能性があります。

交通事故による前十字靭帯損傷の原因

衝突時に膝へ強い力が加わる

自動車事故では、衝突の瞬間に膝周辺へ強い力が加わる場合があります。

膝に直接外力が加わった場合には、前十字靭帯だけでなく他の靭帯や半月板なども損傷している可能性があります。

膝が強くねじられる

交通事故では、衝撃によって身体だけが回転したり、足が固定された状態で膝がねじられたりする場合があります。

特にバイク事故や自転車事故、歩行者事故などでは、転倒するときに足が地面へついたまま身体が回転することがあります。

このような強いねじれが膝へ加わることで、前十字靭帯を損傷する可能性があります。

膝が不自然な方向へ動く

事故の大きな外力によって膝関節が通常の可動範囲を超えて動けば、靭帯へ大きな負荷がかかります。

日本整形外科学会では、関節へ力が加わり、通常の範囲を超えて骨同士が動くことで靭帯などを損傷することがあると説明しています。

前十字靭帯損傷の主な症状

前十字靭帯を損傷すると、受傷直後からさまざまな症状が現れる可能性があります。

膝の痛み

事故直後には膝に強い痛みを感じる場合があります。

ただし、前十字靭帯損傷では時間の経過とともに痛みが軽くなるケースもあるため、痛みの程度だけで損傷の重症度を判断することはできません。

日本整形外科学会も、前十字靭帯などは痛みを感じにくい場合があるため、痛くないから大丈夫と考えてはいけないとしています。

膝が腫れる

前十字靭帯を損傷すると、膝関節内に出血して腫れることがあります。

事故後に膝が急激に腫れてきた場合には、靭帯損傷などの関節内損傷を疑う必要があります。

膝がガクッと抜ける

前十字靭帯損傷で特徴的な問題の一つが、膝の不安定感です。

歩行中や方向転換、階段の上り下りなどで、

「膝がガクッとする」
「膝が抜ける感じがする」
「膝に力が入らない」

と感じることがあります。

いわゆる「膝崩れ」と呼ばれる症状です。

痛みがなくなっても安心できない理由

ここは交通事故後の前十字靭帯損傷で非常に重要です。

事故直後には膝が腫れて痛かったものの、数週間から数か月すると痛みが軽くなり、普通に歩けるようになることがあります。

すると、

「もう治った」

と思ってしまう方もいるでしょう。

しかし、日本整形外科学会は、高度な靱帯損傷があっても1~2か月以内に日常生活へ支障がない程度まで回復することがあり、普通に歩けるようになったから大丈夫とは限らないとしています。

靭帯による不安定性が残ったまま無理をすると、膝関節内に二次的な損傷が起こる可能性があります。

前十字靭帯だけを損傷するとは限らない

交通事故のように大きな外力が膝へ加わった場合、前十字靭帯だけが損傷しているとは限りません。

半月板、軟骨、その他の靭帯などを同時に損傷している可能性があります。

そのため、

「膝が痛い=前十字靭帯損傷」

と自己判断するのではなく、膝関節全体を評価する必要があります。

日本整形外科学会も、膝の外傷では診察やMRIによって靭帯・半月板・軟骨損傷などの最終診断を確定することが重要としています。

前十字靭帯損傷の検査・診断

事故状況を確認する

診断では、どのように膝を負傷したのかが重要です。

事故の方向、膝へどのような力が加わったのか、膝がどのような位置にあったのかなどを確認します。

日本整形外科学会でも、靭帯損傷の診断では受傷時にどのような外力が加わったかを詳しく確認することが重要としています。

交通事故の場合は、

車内で膝をぶつけた
バイクから転倒した
歩行中にはねられた
足を地面についた状態で身体が回転した

など、できるだけ具体的に医師へ伝えましょう。

徒手検査

診察では、膝の腫れや圧痛、可動域などを確認するとともに、膝関節に不安定性がないかを調べます。

前十字靭帯損傷では、膝の前後方向の不安定性などを確認する徒手検査が行われます。

レントゲン

レントゲンでは骨折などを確認できます。

しかし、前十字靭帯は骨ではなく軟部組織なので、通常のレントゲンだけで靭帯断裂そのものを詳しく評価することはできません。

「レントゲンで骨に異常なし」と言われても、靭帯や半月板などを損傷している可能性があります。

MRI

前十字靭帯損傷を確認するうえで重要な画像検査の一つがMRIです。

日本整形外科学会でも、膝関節の捻挫ではMRIが靭帯や半月板、軟骨損傷などの診断に有用な情報を得られる検査としています。

MRIでは前十字靭帯だけでなく、半月板などの合併損傷についても評価できます。

交通事故後に膝の腫れや不安定感が続いている場合には、整形外科で詳しく診てもらうことが重要です。

前十字靭帯損傷の治療

治療方法は、

損傷の程度
膝の不安定性
年齢
仕事内容
スポーツ活動
合併損傷
本人が希望する活動レベル

などによって異なります。

大きく分けると「保存療法」と「手術療法」があります。

保存療法

すべての前十字靭帯損傷で手術が必要になるわけではありません。

症状や活動レベルなどによっては、手術を行わず、リハビリテーションなどによって膝の機能回復を目指す場合があります。

筋力、可動域、バランス能力などを改善し、膝関節を安定させていきます。

前十字靭帯再建術

膝の不安定性が強い場合や、高い活動レベルへの復帰を希望する場合などには、前十字靭帯再建術が検討されます。

手術が必要かどうかは「断裂しているから必ず手術」という単純な判断ではなく、患者さんの状態や活動レベル、合併損傷などを踏まえて整形外科医が判断します。

手術後のリハビリ

前十字靭帯再建術では、手術を受ければすぐに元通りになるわけではありません。

術後はリハビリテーションを行い、

膝の可動域
太ももの筋力
膝関節の安定性
バランス能力
歩行能力

などを段階的に回復させていきます。

AAOSも、ACL再建術後には多くの患者で理学療法・リハビリが必要であり、患者ごとの損傷状態に応じたプログラムが重要としています。

前十字靭帯損傷で後遺症が残ることはある?

治療後も症状や機能障害が残る場合があります。

膝の不安定感

前十字靭帯損傷後に問題になりやすいのが膝関節の不安定性です。

歩行はできても、

「方向転換すると膝が抜ける」
「階段を下りるのが怖い」
「走れない」
「仕事中に膝がガクッとする」

などの症状が残る場合があります。

膝の可動域制限

治療後も膝を十分に曲げられない、伸ばせないなどの可動域制限が残る場合があります。

膝関節の動きが制限されると、歩行、階段、しゃがむ動作、正座など日常生活へ影響することがあります。

慢性的な痛み

治療後も膝周辺の痛みが続くケースがあります。

特に前十字靭帯以外に半月板や軟骨なども損傷している場合には、症状が複雑になる可能性があります。

将来的な変形性膝関節症

膝関節に不安定性が残ると、関節内へ繰り返し負担が加わる可能性があります。

日本整形外科学会では、外傷や関節動揺性が変形性関節症の発症原因・悪化要因になると説明しています。

そのため、前十字靭帯損傷では事故直後の痛みだけでなく、長期的な膝関節の安定性も重要です。

交通事故による前十字靭帯損傷で後遺障害になることはある?

交通事故によって前十字靭帯を損傷し、適切な治療を行っても膝の機能障害などが残った場合には、状態によって後遺障害認定を検討することがあります。

ただし、

「前十字靭帯断裂と診断された=後遺障害が認定される」

わけではありません。

治療後に実際にどのような障害が残っているのかが重要です。

例えば、

膝関節の不安定性
膝の可動域制限
痛みなどの神経症状

などが問題になる可能性があります。

膝がグラグラする「動揺関節」

前十字靭帯は膝の安定性を保つ重要な靭帯なので、損傷後に膝関節の不安定性が残る場合があります。

治療後も膝が異常に動揺し、日常生活や仕事に支障をきたしている場合には、その程度が後遺障害認定で問題になる可能性があります。

重要なのは本人の、

「膝がグラグラする」

という自覚症状だけではありません。

MRIなどによる損傷の確認、医師による診察、膝の不安定性についての客観的な所見、装具が必要かどうかなどを含めて評価されます。

交通事故との因果関係も重要

前十字靭帯損傷について後遺障害や損害賠償を考える場合には、

そのACL損傷が交通事故によって生じたものなのか

という点も重要です。

そのため、

事故直後から膝の症状を訴えているか、医療機関を早期に受診しているか、事故時に膝へどのような外力が加わったのか、MRIなどで損傷が確認されているか、その後も継続して症状があるかなどが重要になります。

事故後から膝が腫れている、膝が抜ける、歩きにくいなどの症状がある場合には、我慢せず早い段階で医療機関へ伝えてください。

前十字靭帯損傷の慰謝料

現在の記事では「治療費やリハビリ費用」「逸失利益」を慰謝料の項目に含めていますが、ここは分けて説明した方が正確です。

交通事故による損害賠償には、慰謝料以外にも複数の損害項目があります。

例えば、

治療関係費
通院交通費
休業損害
入通院慰謝料
後遺障害が認定された場合の後遺障害慰謝料
後遺障害逸失利益

などです。

したがって、

「前十字靭帯断裂なら慰謝料○万円」

という決まり方ではありません。

治療期間、入通院状況、後遺障害の有無などによって変わります。

仕事を休んだ場合は休業損害も確認

前十字靭帯損傷では、仕事内容によって長期間仕事ができなくなることがあります。

特に、

建設業、運送業、介護職、立ち仕事、階段の昇降が多い仕事などでは、膝の不安定性によって業務へ大きな影響が出る可能性があります。

交通事故による傷害のため仕事を休み、収入が減少した場合には、条件に応じて休業損害が問題になります。

これは慰謝料とは別の損害項目です。

後遺障害が認定された場合

治療を続けても膝の機能障害などが残り、後遺障害として認定された場合には、後遺障害慰謝料や逸失利益などが問題になります。

また、自賠責保険における後遺障害等級の認定結果に納得できない場合には、損害保険会社等へ異議申立てを行う制度があります。国土交通省によれば、支払金額、後遺障害等級、その判断理由などについて情報提供を求めることもできます。

前十字靭帯損傷に鍼治療は有効?

ここは現在の記事から表現を変更することをおすすめします。

現在の記事では「鍼によって血行が促進され、組織修復や炎症軽減が期待される」などとしています。

しかし、前十字靭帯断裂は膝関節内にある靭帯の構造的な損傷です。

そのため、

鍼治療によって断裂した前十字靭帯を元通りに再建できるわけではありません。

まず整形外科でMRIなど必要な検査を受け、前十字靭帯の損傷程度、膝の不安定性、半月板などの合併損傷を確認し、保存療法・手術・リハビリなど必要な治療を受けることが重要です。

そのうえで、治療後に膝周囲の筋肉の緊張や痛みなどが残っている場合には、医師による治療やリハビリを妨げない範囲で補助的な施術を検討します。

鍼灸整骨院かまたきでできること

交通事故後から、

膝が痛い
膝が腫れている
膝がガクッと抜ける
歩くと膝が不安定になる

という場合には、まず整形外科などの医療機関で検査を受けることが重要です。

特に前十字靭帯損傷では、レントゲンだけでは靭帯そのものを十分評価できないため、症状によってMRIなどの検査が必要になる場合があります。日本整形外科学会もMRIが靭帯や半月板などの診断に有用としています。

鍼灸整骨院かまたきでは、医療機関で必要な診断・治療を受けたうえで、事故後に残った膝周囲の筋肉の緊張や身体の動かしにくさなどについて、状態を確認しながら施術を検討します。

前十字靭帯損傷そのものを整骨院だけで判断せず、医療機関と連携しながら回復を目指すことが重要です。

よくある質問

交通事故で前十字靭帯を損傷することはありますか?

あります。交通事故によって膝へ強い外力が加わったり、足が固定された状態で膝が強くねじられたりすることで、前十字靭帯を損傷する可能性があります。

前十字靭帯が切れるとどんな症状が出ますか?

膝の痛みや腫れ、不安定感などが現れる可能性があります。特に歩行や方向転換の際に「膝がガクッと抜ける」と感じることがあります。

普通に歩ければ前十字靭帯は切れていませんか?

普通に歩けるからといって前十字靭帯損傷を否定することはできません。日本整形外科学会も、高度な靱帯損傷があっても1~2か月以内に日常生活へ支障が少ない程度まで回復する場合があると説明しています。

レントゲンで異常なしなら大丈夫ですか?

レントゲンでは主に骨折などを確認します。前十字靭帯や半月板などの軟部組織については、症状に応じてMRIなどによる評価が必要になる場合があります。

前十字靭帯損傷ではMRIを撮りますか?

MRIは前十字靭帯や半月板、軟骨などを評価するうえで有用な検査です。必要性については症状や診察所見などから医師が判断します。

前十字靭帯断裂は必ず手術しますか?

必ず手術になるわけではありません。膝の不安定性、年齢、活動レベル、仕事、スポーツ、合併損傷などを考慮して保存療法または手術療法が検討されます。

前十字靭帯損傷で後遺障害になることはありますか?

治療後も膝関節の不安定性や可動域制限などが残った場合には、状態によって後遺障害認定を検討することがあります。ただし、前十字靭帯損傷という診断名だけで等級が決まるわけではありません。

前十字靭帯損傷の慰謝料はいくらですか?

診断名だけで慰謝料額は決まりません。治療期間、入通院状況、事故との因果関係、後遺障害の有無などによって異なります。また、休業損害や逸失利益は慰謝料とは別の損害項目です。

前十字靭帯損傷に鍼治療はできますか?

鍼によって断裂した前十字靭帯を再建することはできません。まず整形外科で損傷状態を確認し、必要な治療やリハビリを受けることが重要です。そのうえで残っている膝周囲の筋肉の緊張や痛みなどについて、補助的な施術を検討します。

まとめ

交通事故では、膝への直接的な衝撃だけでなく、転倒や衝突時に膝が強くねじられることによって前十字靭帯を損傷する可能性があります。

前十字靭帯損傷では、膝の痛み、腫れ、不安定感、膝がガクッと抜ける「膝崩れ」などが現れることがあります。

特に注意したいのは、痛みが軽くなったり普通に歩けるようになったりしても、前十字靭帯が正常とは限らないことです。日本整形外科学会も、高度な靱帯損傷があっても比較的早期に日常生活へ支障が少なくなるケースがあるため、普通に歩けるから大丈夫とは考えないよう注意を促しています。

診断では事故時の膝の状態や診察所見を確認し、必要に応じてMRIなどで前十字靭帯、半月板、軟骨などを評価します。

治療方法は損傷程度や膝の不安定性、年齢、仕事、活動レベルなどによって異なり、保存療法または前十字靭帯再建術などが検討されます。

治療後も膝の不安定性や可動域制限などが残った場合には、後遺障害認定を検討することがあります。

事故後に膝が腫れている、膝がガクッと抜ける、歩行時に不安定感がある場合には、痛みの強さだけで判断せず、早い段階で整形外科などの医療機関を受診することが重要です。