交通事故の加害者でも補償は受けられる?自賠責・任意保険の仕組みを解説

交通事故を起こしてしまい、自分にもケガがあるものの、「加害者だから治療費はすべて自腹なのでは?」「相手の自賠責保険は使えない?」「自分の任意保険から補償を受けられる?」「健康保険を使って病院へ通ってもいい?」と悩んでいる方もいるでしょう。
交通事故では、過失割合が大きい側を一般的に「加害者」と呼ぶことがありますが、加害者側だからという理由だけで、自分のケガに対するすべての補償がなくなるわけではありません。
事故状況や過失割合、自分が加入している自動車保険などによって、相手方への損害賠償請求、自分の人身傷害保険、健康保険、傷害保険などを利用できる可能性があります。
また、交通事故によるケガでも、仕事中・通勤途中の事故などを除き、健康保険を使える場合があります。協会けんぽも、第三者による交通事故で負傷した場合に健康保険を利用でき、その際には「第三者行為による傷病届」が必要になると説明しています。
この記事では、交通事故の加害者になってしまった方が自分のケガについてどのような補償を受けられる可能性があるのか、自賠責保険、人身傷害保険、健康保険、自損事故の場合まで詳しく解説します。
交通事故の加害者でも自分のケガを治療できる?
もちろん治療できます。
交通事故で相手にケガをさせてしまったとしても、自分自身も首や腰、肩などを負傷している場合があります。
「自分が事故を起こしたから」と治療を我慢する必要はありません。
特に交通事故後の首痛や腰痛などは、事故直後にはそれほど強くなくても、数時間後から翌日以降に症状が目立ってくる場合があります。
事故後に痛み、しびれ、頭痛、めまい、身体の動かしにくさなどがある場合には、加害者・被害者という立場にかかわらず医療機関を受診してください。
問題になるのは、治療を受けられるかどうかではなく、その治療費などを誰がどの保険で負担するのかです。
「加害者=補償なし」ではない
交通事故では過失割合によって「自分の方が悪い」と判断されることがあります。
例えば、自分70%・相手30%という事故であれば、自分の方が過失割合は大きくなります。
しかし、自分にもケガがあり、相手側にも過失が認められる場合には、事故状況によって相手側へ損害賠償を請求できる可能性があります。
さらに、自分が加入している任意保険に人身傷害保険などが付いていれば、自分の過失割合にかかわらず補償対象となる可能性があります。
そのため、
「自分の方が悪い事故だから治療費は全部自腹」
と自己判断しないことが重要です。
まず自分の自動車保険の契約内容を確認しましょう。
加害者が自分のケガについて確認したい4つの補償
交通事故で自分の過失が大きい場合、自分のケガについて主に確認したいのは次の4つです。
① 相手方に対する損害賠償請求
② 自分の任意保険の人身傷害保険など
③ 健康保険
④ 自分が加入している傷害保険・生命保険など
どの制度を利用できるかは事故状況や契約内容によって異なります。
一つずつ解説します。
① 相手側にも過失がある場合
「自分が加害者」と思っていても、必ずしも自分の過失が100%とは限りません。
交通事故では双方に過失が認められるケースがあります。
例えば自分70%・相手30%なら、自分の方が過失は大きいものの、相手側にも過失があります。
このような場合には、自分のケガについて相手側への損害賠償請求が問題になる可能性があります。
ここで重要なのは、「加害者と呼ばれているか」ではなく、実際の事故状況と過失割合です。
事故直後に自分で「完全に自分が悪い」と決めつけず、自分の保険会社へ事故状況を正確に伝えて過失割合について確認しましょう。
自分の過失が100%の場合は?
例えば、信号待ちで完全に停止している車へ自分が追突した場合など、自分側の過失が100%と判断される事故があります。
相手に過失がなく、自分に相手への損害賠償請求権がない場合には、相手側から自分のケガについて賠償を受けることは基本的にできません。
しかし、
「相手へ請求できない=自分のケガをすべて自費で治療する」
とは限りません。
この場合に重要になるのが、自分の任意保険に付帯している人身傷害保険などです。
② 人身傷害保険とは?
自分の自動車保険に人身傷害保険が付いている場合には、自分のケガについて補償を受けられる可能性があります。
日本損害保険協会では、人身傷害保険について、自動車事故によって死傷した場合に、過失割合にかかわらず治療費、休業損害、逸失利益、精神的損害など、実際に生じた損害について保険会社所定の基準で算定した額が保険金額の範囲内で支払われる保険と説明しています。
つまり、
自分70%・相手30%
という事故だけでなく、
自分100%・相手0%
という事故でも、自分の人身傷害保険が利用できる可能性があります。
加害者側になった場合には、まず自分の保険証券や契約内容を確認し、人身傷害保険が付帯しているか保険会社へ問い合わせてみましょう。
人身傷害保険では何が補償される?
契約内容や事故状況によって異なりますが、人身傷害保険では一般的に、自動車事故によって生じた自分の身体への損害について補償されます。
日本損害保険協会では、治療費、休業損害、死亡による逸失利益、精神的損害などを補償例として挙げています。
ただし、補償範囲や保険金額、対象となる事故などは契約によって異なります。
「人身傷害が付いているから必ず○○円もらえる」
というものではありません。
必ず契約している保険会社へ確認してください。
人身傷害保険を使うと等級は下がる?
現在の記事では「人身傷害補償はノンフリート等級に影響を与えない」としています。
一般的に、人身傷害保険のみを請求する事故はノーカウント事故として扱われることがありますが、同じ事故で車両保険など別の補償を利用すると扱いが異なる可能性があります。
そのため、記事では、
「人身傷害保険を利用する場合の翌年の等級や保険料への影響については、事故で利用する他の補償も含めて契約している保険会社へ確認してください」
という表現にしておく方が安全です。
③ 交通事故でも健康保険は使える?
ここは現在の記事から大きく修正するポイントです。
交通事故によるケガでも健康保険を使える場合があります。
協会けんぽでは、交通事故など第三者の行為によってケガをした場合でも、仕事中または通勤途中の事故でなければ健康保険を使って治療を受けることができると明記しています。
そのため、
「交通事故だから健康保険は絶対に使えない」
という説明は正しくありません。
ただし、相手がいる交通事故で健康保険を使用する場合には手続きが必要になります。
第三者行為による傷病届とは?
相手がいる交通事故で健康保険を使って治療を受けた場合には、加入している健康保険へ「第三者行為による傷病届」などを提出します。
本来、第三者の行為によって発生したケガの治療費は加害者側が負担するのが原則です。
しかし健康保険を使うと、健康保険が医療費の保険者負担分を一時的に支払い、その後、必要に応じて加害者側へ請求する仕組みになっています。
協会けんぽでは、交通事故の場合には「交通事故証明書」の添付が必要で、物件事故として処理されている場合には「人身事故証明書入手不能理由書」が必要になると案内しています。
加入している健康保険によって手続きが異なる場合があるため、実際に利用する際には自分の健康保険へ問い合わせましょう。
自分の過失が大きくても健康保険は使える?
「自分の過失が大きいから健康保険は使えない」と考える必要はありません。
健康保険が利用できるかどうかと、交通事故の過失割合は別の問題です。
協会けんぽの第三者行為による傷病届では、書類上の「被害者」「加害者」という表記について、過失の大小ではなく、ケガをした被保険者を「被害者」として記入すると説明しています。
事故状況によって必要な手続きが異なるため、健康保険を利用したい場合には加入している保険者へ相談してください。
仕事中・通勤途中の交通事故では健康保険ではなく労災を確認
仕事中や通勤途中に交通事故へ遭った場合には注意が必要です。
協会けんぽでは、仕事中や通勤途中のケガは労災保険の給付対象となるため、健康保険を使用することはできず、本人や会社が健康保険と労災保険を自由に選択することもできないと説明しています。
つまり、
仕事中・通勤中の交通事故→まず労災保険を確認
という流れになります。
自分の過失が大きい事故であっても、業務中・通勤中であれば労災保険の対象になる可能性があるため、勤務先や労働基準監督署などへ確認しましょう。
示談する前に健康保険へ確認する
第三者行為による交通事故で健康保険を利用している場合には、相手と示談する前に注意が必要です。
協会けんぽは、加害者と示談する場合には事前に報告するよう案内しています。
健康保険が立て替えた医療費について加害者側へ請求する権利があるため、先に示談を成立させてしまうと健康保険側の請求に影響する可能性があるためです。
健康保険を利用して治療している場合には、自己判断で示談を進めず、加入している健康保険や保険会社へ確認しましょう。
④ 生命保険や傷害保険も確認する
自動車保険だけでなく、自分が加入している生命保険や傷害保険から給付を受けられる可能性もあります。
例えば、入院給付金、通院給付金、手術給付金などが契約に含まれている場合があります。
自動車保険とは別に請求できるケースもあるため、
生命保険
医療保険
傷害保険
勤務先の団体保険
クレジットカードなどに付帯する保険
なども確認してみましょう。
ただし、補償条件は契約によって大きく異なります。保険証券や契約内容を確認し、保険会社へ問い合わせることをおすすめします。
自損事故で自分がケガをした場合は?
電柱やガードレールに衝突した、操作を誤って単独で転倒したなど、相手がいない事故を「自損事故」「単独事故」などと呼びます。
この場合には相手がいないため、相手側の自賠責保険や対人賠償保険へ自分のケガを請求することはできません。
しかし、自分の任意保険や健康保険などを利用できる可能性があります。
自損事故では自賠責保険から自分自身は補償されない
自賠責保険は、交通事故による被害者を救済するための対人賠償制度です。
そのため、自分一人で起こした単独事故について、運転者自身のケガを自分の自賠責保険から補償してもらうことはできません。
一方、事故時に同乗者が負傷している場合には状況が異なり、自賠責保険の対象になる可能性があります。
自損事故でも人身傷害保険を確認
自損事故で自分が負傷した場合に特に確認したいのが人身傷害保険です。
人身傷害保険では過失割合にかかわらず自動車事故による自身の損害を補償する仕組みがあるため、単独事故でも契約内容によって補償対象になる可能性があります。
「自分一人で起こした事故だから保険は何も使えない」と判断せず、保険会社へ連絡してください。
自損事故でも健康保険は使える?
自損事故についても、健康保険を利用できる場合があります。
協会けんぽでは現在、「交通事故、自損事故、第三者(他人)等の行為による傷病(事故)届」の様式を用意しています。
必要な届出などは加入している健康保険によって確認してください。
ただし、仕事中・通勤途中の事故であれば健康保険ではなく労災保険の対象となる可能性があります。
加害者になったときの治療までの流れ
交通事故を起こし、自分にもケガがある場合には、次の順序で対応すると分かりやすいでしょう。
事故発生→警察へ届け出る→自分の保険会社へ事故を連絡→身体に痛みや違和感があれば整形外科など医療機関を受診→診断を受ける→自分の人身傷害保険などの契約を確認→必要に応じて健康保険の手続きを確認→継続的に治療する
事故直後には痛みが軽くても、後から首痛や腰痛などが出てくる場合があります。
自分が加害者側だからという理由で受診を我慢しないことが重要です。
加害者でも整骨院へ通院できる?
加害者側でも整骨院へ通院すること自体は可能です。
ただし、交通事故後はまず整形外科など医療機関を受診し、骨折や脱臼、神経損傷などがないか確認してもらうことをおすすめします。
そのうえで、医師による診断や治療を受けながら、身体の状態や保険会社との手続きを確認したうえで整骨院への通院を検討します。
特に人身傷害保険などを利用して整骨院へ通院したい場合には、通院を始める前に自分の保険会社へ確認しておくと安心です。
加害者だからといって治療を我慢しない
交通事故を起こしてしまうと、
「相手に申し訳ない」
「自分が悪いから治療するのは気が引ける」
「治療費まで保険会社へ請求していいのだろうか」
と考えてしまう方がいます。
しかし、事故の責任と自分の身体の治療は分けて考える必要があります。
事故に対する責任については保険会社や警察などと適切に対応し、自分にケガがあるのであれば必要な診断・治療を受けましょう。
治療を我慢したことで症状が長引いてしまっては、その後の仕事や日常生活にも影響する可能性があります。
よくある質問
交通事故の加害者でも治療費の補償を受けられますか?
可能性があります。相手側にも過失がある場合の損害賠償請求、自分の人身傷害保険、健康保険、傷害保険などを利用できる場合があります。事故状況や保険契約によって異なるため、まず自分の保険会社へ確認してください。
自分の過失が100%でも治療できますか?
治療できます。相手への損害賠償請求ができない場合でも、自分の人身傷害保険や健康保険などを利用できる可能性があります。
加害者でも健康保険は使えますか?
交通事故によるケガでも、仕事中・通勤途中の事故などを除き健康保険を使える場合があります。第三者がいる事故で健康保険を使用した場合には「第三者行為による傷病届」などの提出が必要です。
交通事故では健康保険が使えないというのは本当ですか?
一律に使えないわけではありません。協会けんぽでは、仕事中・通勤途中以外の交通事故によるケガについて健康保険を使って治療を受けることができると案内しています。
人身傷害保険は自分の過失が大きくても使えますか?
人身傷害保険は一般的に過失割合にかかわらず、自動車事故によって生じた自身の損害について契約範囲内で補償する保険です。具体的な補償条件は契約内容を確認してください。
自損事故でも自分のケガは補償されますか?
自分の自賠責保険から運転者自身への補償はありませんが、人身傷害保険などの任意保険や健康保険を利用できる可能性があります。
加害者でも整骨院へ通院できますか?
通院自体は可能ですが、交通事故後はまず医療機関で診断を受けることをおすすめします。人身傷害保険などを利用する場合には、整骨院へ通院する前に保険会社へ確認しておきましょう。
仕事中の交通事故でも健康保険を使えますか?
仕事中や通勤途中の交通事故は労災保険の対象となるため、原則として健康保険は使用できません。協会けんぽも健康保険と労災保険を自由に選択することはできないと説明しています。
まとめ
交通事故の加害者になってしまっても、自分自身が負ったケガについて治療を受けることができます。また、「加害者だから補償は一切ない」というわけでもありません。
相手にも過失が認められる事故であれば、相手側への損害賠償請求が問題になる可能性があります。また、自分の任意保険に人身傷害保険が付帯していれば、自分の過失割合にかかわらず、契約内容に応じて治療費や休業損害などの補償を受けられる可能性があります。
さらに、交通事故によるケガだからといって健康保険が一律に使えないわけではありません。協会けんぽでは、仕事中・通勤途中でなければ交通事故によるケガでも健康保険を使えると説明しており、相手がいる交通事故では「第三者行為による傷病届」などの手続きが必要になります。
自分の過失が100%の事故や単独事故であっても、人身傷害保険や健康保険などを利用できる可能性があります。そのため、事故後にケガをした場合には「自分が悪いから全部自費」と決めつけず、まず医療機関を受診し、自分の保険会社や加入している健康保険へ確認することが大切です。
鍼灸整骨院かまたきでは、交通事故で加害者側になってしまった方からの身体の症状や通院についての相談にも対応しています。まず医療機関で必要な検査・診断を受け、自分の保険会社へ補償内容を確認したうえで、通院方法についてご相談ください。

