
交通事故で頭を強く打ったあと、
「事故前より忘れっぽくなった」
「仕事の段取りができなくなった」
「同じ話を何度もするようになった」
「急に怒りっぽくなった」
「集中力が続かない」
といった変化が現れることがあります。
このような症状の背景に「高次脳機能障害」が隠れている場合があります。
高次脳機能障害は、脳外傷などによって脳が損傷し、記憶、注意、判断、計画、感情や行動のコントロールなどに障害が生じる状態です。
手足の骨折のように外見から分かりやすい障害ではないため、本人だけでなく周囲の人も症状に気付くまで時間がかかることがあります。
また、本人自身が自分の変化を十分に認識できないケースもあります。
交通事故後に、
「身体は治ったはずなのに事故前の生活に戻れない」
という場合には、単なる疲労や性格の問題と考えず、脳神経外科や神経内科、リハビリテーション科など専門の医療機関へ相談することが重要です。
この記事では、交通事故による高次脳機能障害の原因、症状、診断方法、リハビリ、後遺症、自賠責保険の後遺障害認定、慰謝料や逸失利益について詳しく解説します。
- 1 高次脳機能障害とは?
- 2 「身体は元気なのに以前と違う」ことがある
- 3 交通事故による高次脳機能障害の原因
- 4 頭部への直接的な衝撃
- 5 急激な加速・減速
- 6 脳挫傷
- 7 びまん性軸索損傷
- 8 頭蓋内出血
- 9 高次脳機能障害の主な症状
- 10 記憶障害
- 11 注意障害
- 12 遂行機能障害
- 13 社会的行動障害
- 14 失語
- 15 失行
- 16 失認
- 17 疲れやすくなる
- 18 家族だからこそ気付ける症状がある
- 19 高次脳機能障害は事故直後に分からないこともある
- 20 高次脳機能障害はどのように診断する?
- 21 事故直後の意識障害
- 22 CT検査
- 23 MRI検査
- 24 MRIで異常があれば必ず高次脳機能障害?
- 25 神経心理学的検査
- 26 事故前と事故後の生活の変化も重要
- 27 高次脳機能障害の治療・リハビリ
- 28 作業療法
- 29 言語聴覚療法
- 30 神経心理学的リハビリ
- 31 心理的な支援
- 32 薬物療法
- 33 高次脳機能障害は治る?
- 34 高次脳機能障害で残る可能性がある後遺症
- 35 高次脳機能障害は後遺障害認定の対象になる?
- 36 後遺障害認定では何を見られる?
- 37 家族の報告が重要になる理由
- 38 家族が記録しておきたいこと
- 39 高次脳機能障害で請求できる可能性がある補償
- 40 治療費
- 41 入通院慰謝料
- 42 休業損害
- 43 後遺障害慰謝料
- 44 逸失利益
- 45 将来介護費
- 46 慰謝料はいくらになる?
- 47 「慰謝料」と「治療費」は別の補償
- 48 高次脳機能障害では早い段階で弁護士へ相談する意味がある
- 49 弁護士に相談するメリット
- 50 高次脳機能障害の支援制度も活用する
- 51 よくある質問
- 52 まとめ
高次脳機能障害とは?
高次脳機能障害とは、脳の損傷によって、
記憶する
注意を向ける
考える
判断する
計画を立てる
言葉を理解する
行動をコントロールする
感情を調整する
といった高度な脳機能に障害が生じる状態です。
国立障害者リハビリテーションセンターでは、脳外傷や脳卒中などによる脳損傷によって、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などが生じ、日常生活や社会生活に支障をきたしている状態を高次脳機能障害として扱っています。
「身体は元気なのに以前と違う」ことがある
高次脳機能障害が分かりにくい理由の一つは、身体的には大きな障害がないように見える場合があることです。
例えば、
普通に歩ける
会話もできる
食事もできる
見た目に大きな外傷がない
という状態でも、
仕事の予定を覚えられない
複数の作業を同時にできない
以前ならしなかった失敗を繰り返す
怒りを抑えられない
という問題が生じることがあります。
そのため、高次脳機能障害は周囲から、
「やる気がない」
「性格が変わった」
「怠けている」
などと誤解されてしまうことがあります。
交通事故による高次脳機能障害の原因
交通事故による高次脳機能障害では、事故の衝撃によって脳そのものが損傷することが原因になります。
頭部への直接的な衝撃
交通事故で、
フロントガラス
ハンドル
ダッシュボード
路面
車体
などに頭部を強くぶつけることで、脳が損傷することがあります。
急激な加速・減速
頭を直接ぶつけていなくても、強い衝突によって頭部が急激に動かされると、頭蓋骨内部で脳へ大きな力が加わる場合があります。
特に高速道路での衝突事故やバイク事故など、大きなエネルギーが加わる事故では注意が必要です。
脳挫傷
脳挫傷とは、強い衝撃によって脳そのものが損傷した状態です。
損傷した場所によって、記憶、注意、感情、判断などさまざまな機能に影響が出る可能性があります。
びまん性軸索損傷
強い回転力や加速・減速によって、脳内の神経線維が広い範囲で損傷することがあります。
これを「びまん性軸索損傷」といいます。
重症の場合は事故直後から意識障害が続くことがあります。
頭蓋内出血
交通事故によって、
硬膜外血腫
硬膜下血腫
くも膜下出血
脳内出血
などが生じることがあります。
脳への圧迫や損傷によって、その後に高次脳機能障害が残ることがあります。
高次脳機能障害の主な症状
高次脳機能障害の症状は、脳の損傷部位や程度によって大きく異なります。
一人の患者さんに複数の症状が現れることもあります。
記憶障害
交通事故後に比較的気付かれやすい症状の一つです。
例えば、
さっき聞いた話を忘れる
約束を忘れる
物を置いた場所を忘れる
同じ質問を何度もする
新しい仕事を覚えられない
予定を管理できない
といった問題が起こります。
昔の出来事は覚えていても、事故後の新しい出来事を覚えにくくなる場合もあります。
注意障害
一つのことへ注意を向け続けたり、複数の情報を処理したりすることが難しくなる障害です。
例えば、
仕事中にすぐ別のことへ気を取られる
テレビを見ながら会話できない
長時間集中できない
周囲の状況に気付かない
ミスが増える
といった変化が現れます。
交通事故後に、
「以前より仕事が遅くなった」
という場合、注意機能の低下が関係している可能性があります。
遂行機能障害
目的に向かって計画を立て、その計画どおりに行動する能力が低下する障害です。
例えば料理なら、
材料を準備する
調理する順番を考える
複数の料理を同時に作る
時間を調整する
といった作業が必要です。
遂行機能障害があると、
何から始めればよいか分からない
途中で作業が止まる
優先順位を決められない
仕事の段取りを組めない
といった問題が生じることがあります。
社会的行動障害
感情や行動を適切にコントロールすることが難しくなる場合があります。
例えば、
すぐ怒る
暴言を吐く
感情が急激に変化する
欲求を我慢できない
相手の気持ちを考えにくくなる
何事にもやる気が出ない
他人へ過度に依存する
といった変化がみられることがあります。
事故前と人格が変わったように家族が感じる場合もあります。
失語
脳の言語機能に関係する部分が損傷すると、
言いたい言葉が出てこない
相手の話を理解しづらい
文字を読みにくい
文章を書けない
などの失語症状が生じる場合があります。
失行
筋力や感覚に大きな問題がないにもかかわらず、それまでできていた動作がうまくできなくなることがあります。
例えば、
道具を正しく使えない
服をうまく着られない
指示された動作ができない
などです。
失認
目や耳そのものに大きな問題がないにもかかわらず、見たり聞いたりしたものが何なのか正しく認識できなくなる場合があります。
疲れやすくなる
高次脳機能障害では、
「少し作業しただけで非常に疲れる」
「午後になると頭が働かない」
といった症状がみられることがあります。
脳損傷後の疲労によって、午前中は問題なくできていた作業が午後になると難しくなることもあります。
家族だからこそ気付ける症状がある
高次脳機能障害では、本人自身が障害を認識しにくい場合があります。
そのため、家族からの情報が非常に重要です。
国立障害者リハビリテーションセンターでも、高次脳機能障害の評価では、本人への検査だけでなく、家族や職場など実際の生活場面から得られる情報が重要とされています。
家族は、
事故前はどのような人だったか
事故後何ができなくなったか
性格は変わったか
家事ができるか
一人で外出できるか
お金を管理できるか
仕事へ戻れるか
などを記録しておくと診断や後遺障害申請の際に役立つ可能性があります。
高次脳機能障害は事故直後に分からないこともある
重い脳損傷であれば、事故直後から症状が分かる場合があります。
しかし、事故直後は、
命を守る治療
骨折
出血
身体の麻痺
などへの治療が優先され、高次脳機能障害がすぐには目立たないことがあります。
退院後に自宅へ戻ってから、
「以前と違う」
と家族が気付くケースもあります。
さらに、職場復帰したことで初めて、
仕事を覚えられない
複数の仕事を処理できない
ミスが増えた
対人関係でトラブルになる
といった問題が明らかになることもあります。
高次脳機能障害はどのように診断する?
高次脳機能障害の診断では、一つの検査だけを見るのではありません。
国立障害者リハビリテーションセンターでは、本人・家族への面接、神経学的診察、神経心理学的評価、画像診断などを組み合わせて診断・評価しています。
事故直後の意識障害
交通事故による高次脳機能障害を考えるうえで、事故直後の意識状態は重要な情報です。
例えば、
意識を失っていた
呼びかけへの反応が悪かった
事故前後の記憶がない
集中治療室へ入院していた
といった情報です。
自賠責保険の後遺障害認定でも、受傷直後の意識障害の有無や程度、持続時間などが重要な判断要素とされています。
CT検査
頭部CTでは、
脳挫傷
頭蓋内出血
頭蓋骨骨折
などを確認します。
事故直後の脳損傷を確認する重要な検査です。
MRI検査
MRIでは、脳のより詳細な状態を評価します。
CTでは分かりにくい脳損傷が確認されることもあります。
自賠責保険の高次脳機能障害認定でも、事故直後から症状固定までのCT・MRIなどの画像資料、特に頭部画像が重要な判断材料とされています。
MRIで異常があれば必ず高次脳機能障害?
いいえ。
画像検査だけで高次脳機能障害を診断するものではありません。
反対に、画像所見だけでは日常生活でどの程度困っているか分からないこともあります。
そのため、
画像検査
神経心理学的検査
医師の診察
本人の症状
家族からの情報
事故前後の生活状況
などを総合的に評価します。
神経心理学的検査
高次脳機能障害では、記憶、注意、知能、遂行機能などを詳しく調べるために神経心理学的検査が行われます。
検査内容は患者さんの症状によって異なります。
一つの検査だけで判断するのではなく、複数の検査結果や日常生活の状況を総合して評価することが重要です。
事故前と事故後の生活の変化も重要
高次脳機能障害では、
「検査で何点だったか」
だけでは十分に評価できないことがあります。
例えば、
事故前は会社で管理職だった
↓
事故後は予定を管理できなくなった
事故前は家計を管理していた
↓
事故後はお金の計算ができなくなった
事故前は一人で生活していた
↓
事故後は家族の見守りが必要になった
という変化です。
自賠責保険でも、事故前後で日常生活、就労・就学、社会生活が具体的にどう変わったかが重要な判断材料となります。
高次脳機能障害の治療・リハビリ
高次脳機能障害では、患者さんごとの症状に合わせてリハビリテーションを行います。
国立障害者リハビリテーションセンターでは、医師、心理専門職、作業療法士、理学療法士、言語聴覚士、看護師、医療ソーシャルワーカーなどが連携するチームアプローチが行われています。
作業療法
日常生活や仕事に必要な能力を訓練します。
例えば、
料理
買い物
予定管理
道具の使用
仕事の手順
など、実生活に近い練習を行うことがあります。
言語聴覚療法
言葉の障害だけではなく、
記憶
注意
コミュニケーション
などに対するリハビリを行う場合があります。
神経心理学的リハビリ
記憶障害や注意障害に対し、
メモを使う
スマートフォンで予定管理する
チェックリストを使う
作業手順を見える化する
など、低下した機能を補う方法を身につけます。
心理的な支援
高次脳機能障害では、
「以前のように仕事ができない」
「家族との関係が変わった」
など、本人や家族が大きな心理的負担を抱えることがあります。
必要に応じて心理相談などの支援が行われます。
国立障害者リハビリテーションセンターでも、高次脳機能障害に対する神経心理学的評価、認知訓練、代償手段の活用、本人・家族への心理支援が行われています。
薬物療法
高次脳機能障害そのものを薬だけで元に戻す治療ではありませんが、
不眠
抑うつ
不安
興奮
てんかん
など、伴う症状に対して薬物療法が行われることがあります。
使用する薬については医師が症状や全身状態を確認して判断します。
高次脳機能障害は治る?
回復には大きな個人差があります。
リハビリなどによって症状が改善し、生活や仕事への適応が進む方もいます。
一方で、一定の認知障害や行動上の問題が長期間残る場合もあります。
重要なのは、
「完全に事故前へ戻ることだけ」
を目標にするのではなく、残った機能を活用したり、道具や周囲のサポートを利用したりして、生活しやすい環境を作ることです。
高次脳機能障害で残る可能性がある後遺症
記憶障害
新しい出来事を覚えられない状態が長く続くことがあります。
仕事や日常生活で周囲のサポートが必要になる場合があります。
注意障害
集中力が続かず、仕事のミスが多くなることがあります。
長時間働くことが難しくなるケースもあります。
遂行機能障害
複雑な仕事、計画、スケジュール管理などが難しくなる場合があります。
社会的行動障害
怒りやすさ、無気力、依存、衝動的行動などが残ることがあります。
家族や職場との関係に大きく影響する場合があります。
就労への影響
身体を問題なく動かせても、以前の仕事に戻れないことがあります。
例えば、
営業職で顧客との約束を忘れる
事務職で複数の仕事を処理できない
管理職として部下の仕事を管理できない
といった問題です。
高次脳機能障害は後遺障害認定の対象になる?
交通事故によって脳を損傷し、治療後も高次脳機能障害が残った場合は、自賠責保険の後遺障害等級認定を申請できる可能性があります。
国土交通省によると、自動車事故を原因とする高次脳機能障害については、審査の公平性・客観性を確保するため、脳神経外科医や弁護士などで構成される専門部会による審査体制が設けられています。
後遺障害認定では何を見られる?
高次脳機能障害の後遺障害認定では、診断名だけではなく複数の資料を確認します。
特に重要なのが、
・事故直後の意識障害
・CT・MRIなどの頭部画像
・事故から現在までの症状経過
・神経心理学的検査
・医師の診断
・日常生活への影響
・就労・就学への影響
・家族による報告
などです。
家族の報告が重要になる理由
高次脳機能障害は、病院の診察室だけでは分からないことがあります。
診察中は、
普通に会話できる
質問にも答えられる
落ち着いて座っていられる
という人でも、自宅では、
薬を飲み忘れる
火を消し忘れる
お金を管理できない
一人で外出すると迷う
感情が爆発する
といった問題がある場合があります。
そのため、自賠責保険の認定でも医師だけではなく、家族や実際に介護している人へ日常生活状況について報告書の作成が求められる場合があります。
家族が記録しておきたいこと
事故後の変化はできるだけ具体的に記録しておきましょう。
例えば、
「忘れっぽくなった」
だけではなく、
「同じ質問を30分以内に5回した」
「ガスコンロを消し忘れた」
「月3回仕事の予定を忘れた」
「一人で駅へ行ったところ帰れなくなった」
など、具体的な出来事を記録します。
事故前にはできていたことと比較すると、変化を説明しやすくなります。
高次脳機能障害で請求できる可能性がある補償
交通事故による高次脳機能障害では、慰謝料だけでなく複数の損害項目が問題になります。
治療費
事故による脳損傷の治療や必要なリハビリについて、必要かつ相当な治療費を請求できる可能性があります。
入通院慰謝料
事故によって入院・通院した精神的、肉体的苦痛に対する慰謝料です。
休業損害
治療中に仕事を休み、収入が減った場合は休業損害を請求できる可能性があります。
後遺障害慰謝料
高次脳機能障害について後遺障害等級が認定された場合は、入通院慰謝料とは別に後遺障害慰謝料を請求できる可能性があります。
逸失利益
高次脳機能障害によって、
以前の仕事へ戻れない
勤務時間を短くした
仕事内容を変更した
退職した
など、将来の収入が減少すると考えられる場合は、逸失利益を請求できる可能性があります。
将来介護費
高次脳機能障害が重く、将来にわたって家族などによる見守りや介護が必要になる場合には、将来介護費が損害として問題になることがあります。
高次脳機能障害では身体介護だけではなく、
金銭管理
外出時の見守り
服薬管理
危険行動の防止
などの見守りが必要になるケースがあります。
慰謝料はいくらになる?
高次脳機能障害という診断名だけで、一律に慰謝料が決まるわけではありません。
金額は、
治療期間
入院期間
後遺障害等級
日常生活への影響
労働能力への影響
介護の必要性
過失割合
採用される慰謝料算定基準
などによって異なります。
高次脳機能障害では、後遺障害慰謝料だけでなく逸失利益や将来介護費などが大きな金額になる可能性があるため、損害全体を確認する必要があります。
「慰謝料」と「治療費」は別の補償
元の記事では、慰謝料の中に治療費やリハビリ費用が含まれるようにも読める説明がありましたが、それぞれ別の損害項目です。
例えば、
治療費
=実際の治療に必要となった費用
入通院慰謝料
=入院や通院による精神的・肉体的苦痛への賠償
後遺障害慰謝料
=後遺障害が残ったことによる精神的苦痛への賠償
逸失利益
=後遺障害による将来の収入減少への賠償
という違いがあります。
一つひとつ分けて考えることが大切です。
高次脳機能障害では早い段階で弁護士へ相談する意味がある
すべての交通事故で弁護士への依頼が必要なわけではありません。
しかし、高次脳機能障害では、
後遺障害等級
逸失利益
将来介護費
家族の介護負担
仕事への影響
など多くの問題が生じる可能性があります。
また、本人自身が障害を十分に認識できず、自分で保険会社と複雑な交渉を行うことが難しい場合もあります。
そのため、重い脳外傷や高次脳機能障害が疑われる場合には、交通事故を扱う弁護士へ早めに相談することを検討してもよいでしょう。
弁護士に相談するメリット
弁護士へ相談することで、
損害賠償項目の確認
後遺障害申請についての相談
必要な資料の整理
保険会社との示談交渉
適正な慰謝料の検討
逸失利益の検討
将来介護費の検討
などについてアドバイスを受けることができます。
ただし、高次脳機能障害の医学的診断を行うのは医師です。
弁護士が診断や治療方針を決定するわけではありません。
医療上の問題は専門医、損害賠償上の問題は弁護士というように、それぞれの専門家へ相談することが大切です。
高次脳機能障害の支援制度も活用する
高次脳機能障害では、交通事故の損害賠償だけでなく、生活や就労を支える福祉的な支援を利用できる場合があります。
各都道府県・指定都市には高次脳機能障害に関する専門的な相談支援の仕組みがあります。
また、2026年4月1日から「高次脳機能障害者支援法」が施行され、高次脳機能障害のある方や家族に対する支援体制の充実が進められています。
治療だけでなく、
生活
仕事
福祉サービス
家族支援
などについて困っている場合は、地域の高次脳機能障害支援拠点機関などへ相談する方法があります。
よくある質問
交通事故による高次脳機能障害とは何ですか?
交通事故などによって脳が損傷し、記憶、注意、判断、計画、感情や行動のコントロールなどに障害が生じる状態です。
身体的には大きな問題がないように見えても、仕事や日常生活に大きな支障が生じることがあります。
高次脳機能障害は事故直後に分かりますか?
必ずしも事故直後に分かるとは限りません。
退院後の日常生活や職場復帰後に、記憶障害や注意障害、遂行機能障害などが明らかになる場合があります。
高次脳機能障害ではどのような症状が出ますか?
代表的な症状には、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などがあります。
そのほか失語、失行、失認などがみられる場合もあります。
事故後に性格が変わったのも高次脳機能障害ですか?
脳損傷によって怒りやすくなる、感情を抑えにくくなる、無気力になるなどの社会的行動障害が現れることがあります。
ただし、性格の変化には他の原因もあるため、専門医による評価が必要です。
MRIで異常がなければ高次脳機能障害ではありませんか?
画像だけで高次脳機能障害の有無を判断するものではありません。
画像検査、神経心理学的検査、医師の診察、症状の経過、本人や家族からの情報などを総合的に評価します。
高次脳機能障害の診断ではどのような検査をしますか?
CTやMRIなどの画像検査のほか、記憶、注意、知能、遂行機能などを調べる神経心理学的検査を行う場合があります。
本人や家族への面接、日常生活状況の確認も重要です。
高次脳機能障害は治りますか?
回復には個人差があります。
リハビリによって機能が改善する場合もありますが、一定の症状が長期的に残る場合もあります。
残った機能を活用したり、メモやスマートフォンなどを利用したりして生活を補うことも重要です。
高次脳機能障害は後遺障害認定の対象になりますか?
交通事故による脳損傷との因果関係があり、治療後も認知・行動上の障害が残っている場合は、自賠責保険の後遺障害等級認定の対象になる可能性があります。
後遺障害認定では何が重要ですか?
CT・MRIなどの頭部画像、事故直後の意識障害、症状の経過、神経心理学的検査、医師の診断、事故前後の日常生活や仕事の変化などが重要な資料になります。
家族の話も後遺障害認定で重要ですか?
高次脳機能障害では本人自身が障害を認識できない場合があるため、家族が確認した事故前後の生活や行動の変化が重要になることがあります。
高次脳機能障害ではどのような補償を請求できますか?
事故状況や障害の程度によって、治療費、入通院慰謝料、休業損害、後遺障害慰謝料、逸失利益、将来介護費などを請求できる可能性があります。
まとめ
交通事故による高次脳機能障害は、脳外傷によって記憶、注意、判断、計画、感情や行動のコントロールなどの機能に障害が生じる状態です。
主な症状には、
記憶障害
注意障害
遂行機能障害
社会的行動障害
失語
失行
失認
などがあります。
高次脳機能障害の特徴は、外見だけでは障害が分かりにくいことです。
普通に歩き、普通に会話できていても、
仕事を覚えられない
予定を管理できない
以前と性格が変わった
同じ失敗を繰り返す
といった問題が生じる場合があります。
そのため、事故後の本人の変化を家族や職場の人が記録しておくことも重要です。
診断では、CT・MRIなどの画像検査だけではなく、神経心理学的検査、医師による診察、本人・家族からの情報などを総合的に評価します。
治療では、作業療法、言語聴覚療法、心理的支援などを組み合わせたリハビリテーションが行われます。
また、交通事故が原因で高次脳機能障害が残った場合には、自賠責保険の後遺障害等級認定を申請できる可能性があります。
後遺障害認定では、
事故直後の意識障害
CT・MRI
症状の経過
神経心理学的検査
日常生活への影響
仕事への影響
家族からの報告
などが重要になります。
後遺障害が認定された場合には、後遺障害慰謝料だけでなく逸失利益などが損害として認められる可能性があります。
重症例では将来の見守りや介護が必要となり、将来介護費が問題になるケースもあります。
高次脳機能障害は本人だけで問題を抱えるのではなく、家族、医療機関、リハビリスタッフ、福祉機関などが連携して長期的に支えていくことが重要です。

