交通事故の後遺障害が非該当になる理由とは?認定されない原因と異議申立ての方法を解説

交通事故によるケガの治療を続けても、痛みやしびれ、関節の動かしにくさなどの症状が残ることがあります。しかし、症状が残っているだけで自動的に「後遺障害」と認められるわけではありません。

後遺障害等級認定を申請した結果、「非該当」という通知を受けることもあります。「まだ首が痛いのになぜ認められないの?」「しびれが残っているのに非該当なのはおかしい」「もう慰謝料を請求できないの?」と疑問や不安を感じる方もいるでしょう。

自賠責における後遺障害は、交通事故による傷害が治ったときに身体に残った精神的または肉体的な毀損状態のうち、傷害との相当因果関係が認められ、その存在が医学的に認められるものが対象になります。

そのため、本人に症状が残っていても、事故との因果関係や医学的な裏付けなどが十分に確認できなければ非該当となる可能性があります。

この記事では、交通事故の後遺障害が非該当になる主な理由、後遺障害認定で確認されるポイント、非該当になった場合の異議申立てや紛争処理について詳しく解説します。

後遺障害の「非該当」とは?

後遺障害の非該当とは、後遺障害等級認定を申請したものの、自賠責の後遺障害等級に該当すると認められなかった状態です。

重要なのは、「非該当=症状がない」と断定されたわけではないということです。

実際に痛みやしびれが残っていたとしても、自賠責の後遺障害として評価するために必要な医学的資料や事故との因果関係などが十分ではない場合、非該当となる可能性があります。

自賠責では後遺障害について、傷害と残存症状との相当因果関係が認められ、その存在が医学的に認められることなどが前提となっています。

後遺障害が非該当になる主な原因

非該当となる理由は一つではありません。事故の状況、症状、治療経過、検査結果、提出された資料などを踏まえて判断されます。

代表的なポイントを確認していきましょう。

1.症状を裏付ける医学的所見が十分ではない

後遺障害認定では、「痛い」「しびれる」という本人の訴えだけではなく、その症状を医学的にどの程度説明できるかが重要になります。

例えば、症状によってMRI・CT・レントゲンなどの画像検査や神経学的検査などが判断材料になることがあります。

一方、むちうちなどでは画像検査で明確な異常が確認できないケースもあります。

そのため、画像に異常がないという一点だけで後遺障害の可能性がすべて否定されるわけではありませんが、どのような症状がいつから続き、どのような検査・治療を受けてきたのかという医療記録が重要になります。

2.後遺障害診断書から症状が十分に伝わらない

後遺障害等級認定では、医師が作成する後遺障害診断書が重要な資料になります。

後遺障害診断書には、傷病名、症状固定日、自覚症状、他覚症状・検査結果、障害内容などが記載されます。

ここで注意したいのは、患者本人が普段の症状を医師へ十分に伝えていなければ、診療記録や後遺障害診断書にも症状が十分反映されない可能性があることです。

例えば「右手がしびれる」「長時間座ると腰から脚に痛みが出る」「首を右へ向けると痛い」など、症状は診察時に具体的に伝えておくことが大切です。

3.事故から初診までの期間が空いている

交通事故から医療機関を受診するまで長期間空いている場合、事故と症状との因果関係が問題になる可能性があります。

例えば事故からかなり経過してから初めて「首が痛い」と受診した場合、その首の痛みが本当に事故によるものなのか判断が難しくなることがあります。

交通事故直後には興奮や緊張などによって痛みを感じにくく、翌日以降に症状を自覚することもあります。

そのため、事故後に身体の痛みや違和感がある場合には、我慢せず早めに医療機関を受診することが重要です。

4.症状の経過に一貫性が確認できない

事故後から症状固定まで、症状がどのように続いていたのかも重要です。

例えば事故直後から首の痛みを訴え、治療期間中も継続して首の症状について診察を受けているケースと、事故から数か月経過して突然首の痛みを訴え始めたケースでは、事故との関連性の評価が異なる可能性があります。

症状が途中で変化すること自体は珍しくありませんが、新しい症状が出た場合にはその時点で医師へ伝え、必要な診察を受けておくことが大切です。

5.通院期間中に長期間の空白がある

通院回数が少ないから必ず非該当になるという基準はありません。

しかし、症状を訴えているにもかかわらず長期間医療機関を受診していない場合には、「その期間も症状が継続していたのか」「治療を必要とする状態だったのか」という点が問題になる可能性があります。

仕事や家庭の事情で通院できない期間がある場合には、その事情について医師へ相談しておくことも重要です。

「後遺障害を取るために○日に1回通えばいい」という考え方ではなく、症状に応じて医師の指示に従い、必要な診察・治療を継続することが基本です。

6.事故の衝撃と症状との関係が問題になる

事故の規模や車両の損傷状況などから、申告している症状との因果関係が争われることもあります。

例えば車両の損傷が非常に小さい事故で長期間強い症状が続いている場合などは、事故による身体への影響について慎重に判断される可能性があります。

ただし、車の損傷が小さいという理由だけで身体への影響がないと一律に判断できるものでもありません。

事故状況、診断内容、症状の経過、検査結果などを総合的に確認することが重要です。

7.既往症や事故前からの症状がある

事故以前から同じ部位に痛みがあったり、頚椎や腰椎などに既往症があったりする場合には、現在の症状が事故によるものなのか、以前から存在していたものなのかが問題になることがあります。

既往症があるから後遺障害が必ず認められないわけではありません。

事故前の状態と事故後の状態を比較し、事故によってどのような変化が生じたのかを医学的資料から確認することが重要になります。

8.必要な検査を受けていない

残っている症状によっては、画像検査や神経学的検査などが重要な資料になることがあります。

例えば、手足のしびれや筋力低下などが残っているにもかかわらず、それに関連する検査が十分行われていなければ、症状を客観的に評価する資料が不足する可能性があります。

必要な検査は症状によって異なるため、「後遺障害のために検査を受ける」というよりも、現在残っている症状を医師へ正確に伝え、必要な検査について医師に判断してもらうことが大切です。

むちうちは後遺障害が認定されにくい?

むちうちでは、首の痛み、頭痛、肩の痛み、手のしびれなどが長期間残ることがあります。

一方で、レントゲンやMRIなどで症状の原因となる明確な異常が確認できないケースもあります。

そのため、むちうちの後遺障害認定では、画像検査だけでなく、事故直後からの症状、診療記録、症状の一貫性、治療経過、神経学的所見など複数の資料が重要になります。

「6か月通えば認定される」「週○回通えば14級になる」といった単純な仕組みではありません。

後遺障害認定には事前認定と被害者請求がある

後遺障害等級認定の手続きでは、大きく「事前認定」と「被害者請求」という方法があります。

事前認定では、一般的に加害者側の任意保険会社を通して必要書類を提出します。一方、被害者請求では、被害者自身が加害車両の自賠責保険会社・共済へ必要書類を提出します。

損害保険料率算出機構も、自賠責には加害者からの請求と被害者からの請求があることを案内しています。

被害者請求では、自分で必要な資料を確認しながら手続きを進められる点が特徴です。

ただし、**「事前認定だから非該当になりやすい」「被害者請求なら認定されやすい」と一律に言えるものではありません。**最終的には提出された資料や医学的所見などをもとに判断されます。

後遺障害が非該当になったら最初にすること

非該当の通知が届いたからといって、すぐに諦める必要はありません。

損害保険料率算出機構によると、自賠責の支払結果については、後遺障害等級とその判断理由などの情報が提供されます。また、調査結果や支払額に不服がある場合には異議申立てを行うことができます。

まず重要なのは、なぜ非該当になったのかを確認することです。

理由を確認せず同じ資料だけでもう一度申請しても、結果が変わらない可能性があります。

非該当の理由を確認する

結果通知を確認し、

「医学的な裏付けが不足しているのか」

「事故との因果関係が問題なのか」

「症状の経過が問題なのか」

「提出資料が不足しているのか」

など、何が認定されなかった理由なのかを整理します。

そのうえで、その理由に対応する資料を追加できるか検討します。

新しい医学的資料を確認する

非該当の理由によっては、新たな資料が重要になる場合があります。

例えば、追加の検査結果、画像資料、診療記録、医師の医学的な意見を示す資料などです。

ただし、「後遺障害を認めてもらうために医師へ有利な内容を書いてもらう」ということではありません。

実際の症状や医学的所見を正確に記録してもらうことが重要です。

後遺障害の異議申立てとは?

自賠責の調査結果や保険金等の支払いに納得できない場合には、保険会社・共済組合に対して異議申立てを行うことができます。

損害保険料率算出機構では、異議申立てをする際、異議申立ての趣旨などを書面に記載し、主張を裏付ける新しい資料があれば添付すると案内しています。

単に「痛いから認定してほしい」と主張するのではなく、

非該当となった理由 → その理由に対する反論 → 反論を裏付ける医学的資料

という形で整理することが重要になります。

異議申立てでは再審査が行われる

損害保険料率算出機構では、異議申立てがあったケースなどについて、慎重かつ客観的な判断が必要な事案では、自賠責保険(共済)審査会による審査体制を設けています。

審査会には弁護士、専門医、交通法学者、学識経験者など外部の専門家も参加します。

ただし、異議申立てをすれば必ず結果が変わるわけではありません。

最初の判断を覆すだけの新たな医学的資料や根拠を準備できるかが重要です。

自賠責保険・共済紛争処理機構へ申請する方法もある

自賠責保険会社・共済組合の判断に納得できない場合には、一般財団法人 自賠責保険・共済紛争処理機構へ紛争処理を申請する方法もあります。

この制度では、弁護士、医師、学識経験者などで構成される紛争処理委員会が、中立的な立場から自賠責保険会社等の判断が適切だったかを審査します。原則として書類による審査で、費用も原則無料です。

保険会社・共済組合には調停結果に従う義務があります。

ただし、紛争処理機構の調停結果について再度紛争処理を申し立てることはできません。結果に納得できない場合には、裁判所への訴訟を検討することになります。

裁判で後遺障害を争う方法

自賠責の後遺障害認定と、裁判所による損害賠償上の後遺障害の判断は別のものです。

そのため、自賠責で非該当となった場合でも、訴訟で事故と症状との因果関係や後遺障害について主張することは可能です。

ただし、医学的資料や法律上の争点を整理する必要があるため、裁判を検討する場合には交通事故を扱う弁護士へ相談した方がよいでしょう。

非該当のまま示談してしまう前に確認する

後遺障害が非該当となった直後に、保険会社から示談の話が進むことがあります。

しかし、認定結果に納得できず異議申立てなどを検討している場合には、示談を成立させる前に内容を十分確認することが重要です。

一度示談が成立すると、原則として後から追加の損害賠償を請求することが難しくなる可能性があります。

非該当の結果に疑問がある場合には、示談書へ署名する前に弁護士などへ相談することも検討してください。

時効にも注意する

異議申立てなどを検討するときには、請求権の時効にも注意が必要です。

自賠責保険・共済紛争処理機構も、症状固定から3年を経過した後の後遺障害請求などでは時効のおそれがあると案内しています。また、紛争処理を申請しただけでは時効は更新されません。

長期間にわたって手続きを行っている場合には、自賠責保険会社・共済組合や弁護士などへ期限を確認しておきましょう。

後遺障害認定を考えるなら治療中から大切なこと

後遺障害申請の直前になってから資料を集めようとしても、事故直後の状態を後から証明することが難しい場合があります。

事故後は早めに医療機関を受診し、症状を具体的に医師へ伝え、必要な検査・治療を受けることが重要です。

また、症状が変化した場合にも、その都度医師へ伝えましょう。

後遺障害認定のために通院するのではなく、身体を回復させるために必要な治療を受け、その治療経過が結果として医療記録に残ることが重要です。

鍼灸整骨院かまたきで交通事故施術を受けている場合

交通事故後の首・腰の痛みなどについて、鍼灸整骨院かまたきへ通院されている方もいらっしゃいます。

ただし、後遺障害診断書を作成できるのは医師です。

そのため、後遺障害の可能性がある場合には、整骨院だけで施術を続けるのではなく、整形外科などの医療機関でも継続して診察を受け、症状や治療経過を医師に確認してもらうことが重要です。

当院では、交通事故後の痛みなどについて施術を行っていますが、後遺障害等級認定そのものを判断することはできません。認定手続きや異議申立てなど法律上の問題については、必要に応じて弁護士などの専門家へ相談してください。

よくある質問

後遺障害が非該当とはどういう意味ですか?

後遺障害等級認定を申請したものの、自賠責の後遺障害等級に該当すると認められなかったことを意味します。症状そのものが存在しないと断定されたという意味ではありません。

痛みが残っているのに非該当になることはありますか?

あります。後遺障害認定では本人の自覚症状だけではなく、事故との因果関係、医学的所見、検査結果、治療経過などを踏まえて判断されます。

MRIで異常なしだと後遺障害は認定されませんか?

画像上の異常が確認できないからといって、それだけで必ず非該当になるとは限りません。症状の内容、診療記録、神経学的所見、事故との因果関係なども含めて判断されます。

むちうちは6か月通院すれば後遺障害になりますか?

6か月通院すれば自動的に認定されるという基準ではありません。通院期間だけでなく、症状の一貫性、医学的所見、事故との因果関係などさまざまな事情が判断材料になります。

後遺障害が非該当になったら再申請できますか?

自賠責の判断に不服がある場合には、保険会社・共済組合へ異議申立てを行うことができます。新しい資料がある場合には、それを添付して判断を求めることができます。

異議申立てでは何を提出すればいいですか?

非該当となった理由によって異なります。追加検査の結果や医療記録など、異議の内容を裏付ける新たな資料が重要になる場合があります。

事前認定と被害者請求ではどちらが認定されやすいですか?

申請方法だけで認定・非該当が決まるわけではありません。重要なのは、症状や事故との因果関係を判断するために必要な資料が適切に提出されているかどうかです。

紛争処理機構へ何度でも申請できますか?

同一事案について再度紛争処理を申し立てることはできません。調停結果に納得できない場合には、裁判所への訴訟を検討することになります。

整骨院だけの通院で後遺障害診断書を作ってもらえますか?

後遺障害診断書は医師が作成します。後遺障害の可能性がある場合には、整形外科など医療機関で継続的に診察を受けることが重要です。

まとめ

交通事故後に痛みやしびれが残っていても、必ず後遺障害等級が認定されるわけではありません。

非該当になる背景には、医学的所見が十分ではない、事故と症状との因果関係が確認しにくい、症状の経過が十分に記録されていない、必要な検査資料が不足しているなど、さまざまな理由があります。

非該当になった場合に最も重要なのは、「なぜ認定されなかったのか」を確認することです。

その理由を確認したうえで、新たな医学的資料などを準備できる場合には、保険会社・共済組合への異議申立てを検討できます。損害保険料率算出機構も、自賠責の判断に不服がある場合には異議申立てを行い、新たな資料があれば添付できると案内しています。

さらに、自賠責保険・共済紛争処理機構へ紛争処理を申請する方法や、最終的には裁判で争う方法もあります。

「非該当だったからもう終わり」と考えるのではなく、まず認定理由を確認し、異議を申し立てるだけの医学的・法的根拠があるのかを検討することが大切です。