
交通事故で車が大きく損傷し、保険会社から「修理費が車の時価額を上回るため全損です」と言われることがあります。
そのとき、「まだ普通に乗っていた車なのに、こんなに価値が低いの?」「同じ車を中古車で買い直すと、もっと高い」「レッドブックの価格と言われたけれど、レッドブックとは何?」と疑問を感じる方も少なくありません。
結論からいうと、レッドブックは交通事故における車両時価額を検討するときの重要な参考資料ですが、レッドブックに掲載された金額だけで車の時価額が必ず決まるわけではありません。
最高裁判例でも、中古車の事故当時の取引価格は原則として、同じ車種・年式・型で、使用状態や走行距離なども同程度の車を中古車市場で取得するために必要な価格によって決めるべきとの考え方が示されています。
この記事では、レッドブックとは何なのか、車両時価額との関係、経済的全損の仕組み、中古車市場価格との違い、保険会社から提示された時価額に納得できない場合の確認方法まで解説します。
- 1 交通事故で使われるレッドブックとは?
- 2 「レッドブック」と交通事故の「赤い本」は違う
- 3 レッドブックにはどんな車が掲載されている?
- 4 交通事故でレッドブックが使われる理由
- 5 交通事故における車両時価額とは?
- 6 「レッドブック価格=絶対的な時価額」ではない
- 7 レッドブック価格より中古車販売価格が高いのはなぜ?
- 8 保険会社の時価額に納得できない場合に確認すること
- 9 中古車サイトで同等車を複数探す
- 10 古い車や希少車はレッドブックだけでは判断しにくいことがある
- 11 レッドブックに載っていない車は価値がない?
- 12 修理費が時価額を超えると「経済的全損」になることがある
- 13 時価額が変われば全損の判断が変わる場合もある
- 14 全損の場合は買替諸費用も確認する
- 15 カスタムパーツを付けている車は高く評価される?
- 16 レッドブックは個人でも購入できる?
- 17 保険会社の提示額が正しいとは限らないが、高い中古車を探せばよいわけでもない
- 18 よくある質問
- 19 交通事故後の補償や通院でお困りの方へ
- 20 まとめ
交通事故で使われるレッドブックとは?
交通事故の車両損害で「レッドブック」と呼ばれているものは、有限会社オートガイドが発行している「オートガイド自動車価格月報」です。
オートガイドによると、1958年に創刊された中古車価格情報の専門誌で、自動車業界、損害保険業界、法曹、官公庁などの専門家に利用されています。中古車市場にあるさまざまな価格情報をもとに、標準的な価格を予測・算出した資料です。
つまりレッドブックは、「この条件の中古車なら標準的にどの程度の価値があるか」を確認するための専門資料と考えると分かりやすいでしょう。
「レッドブック」と交通事故の「赤い本」は違う
交通事故について調べていると、「レッドブック」と「赤い本」という似た言葉が出てきますが、まったく別の資料です。
レッドブックは、有限会社オートガイドが発行する中古車価格資料です。
一方、交通事故の慰謝料などで使われる「赤い本」は、日弁連交通事故相談センター東京支部が編集する「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」です。
日弁連交通事故相談センターによると、赤い本は東京地裁の実務に基づく賠償額の基準や参考判例を掲載した法曹関係者向けの専門書で、毎年2月に改訂されています。2026年版は2026年2月6日発行です。
したがって、
レッドブック=車の価格を調べる資料
赤い本=交通事故の損害賠償額を検討する資料
と区別してください。
レッドブックにはどんな車が掲載されている?
2026年現在、オートガイドのレッドブックは、商用車、国産乗用車、軽自動車・二輪車、輸入自動車の4シリーズに分かれています。
国産乗用車は毎月発行、商用車と軽自動車・二輪車は奇数月、輸入自動車は偶数月に発行されています。
また、2026年5月1日からは「RED Book Digital」が開始され、パソコン・タブレット・スマートフォンのブラウザから利用できるようになりました。2023年1月号以降のバックナンバーも閲覧できます。
交通事故でレッドブックが使われる理由
交通事故で車が損傷した場合、修理費だけでなく、事故当時その車にどれくらいの価値があったのかを確認する必要があります。
たとえば、修理費が100万円かかるのに事故時の車両価値が50万円だった場合、「100万円をかけて修理することが損害賠償上合理的なのか」という問題が出てきます。
そこで判断材料になるのが車両時価額です。
レッドブックには車種や年式などに応じた標準的な中古車価格が掲載されているため、損害保険実務などで車両時価額を検討するときの参考資料として利用されています。
ただし、ここで重要なのは、レッドブックは参考資料の一つであって、それだけで必ず時価額が確定するわけではないという点です。
交通事故における車両時価額とは?
「購入時300万円だった車だから、5年経ったので半額の150万円」といった単純な計算で決めるものではありません。
最高裁は、中古車が事故で損傷した場合の事故当時の取引価格について、原則として、同一車種・年式・型で、同程度の使用状態・走行距離などの車を中古車市場で取得するために必要な価格によって定めるべきと判断しています。
そのため、車両時価額を検討するときには、車種、年式、型式、グレード、走行距離、使用状態、装備、中古車市場の状況などが重要になります。
「レッドブック価格=絶対的な時価額」ではない
ここがこのページで最も重要なポイントです。
保険会社から、
「レッドブックでは50万円なので時価額は50万円です」
と言われても、必ず50万円で確定するとは限りません。
レッドブックは非常に有用な価格資料ですが、実際の中古車市場で事故車と同条件の車がどの程度で販売されているのかが重要になる場合があります。
実際に、名古屋地裁令和3年11月26日判決では、同一車種・年式・型の中古車についてインターネット上の販売価格を調べ、走行距離などが近い複数車両の価格から事故車の時価額を認定しています。
したがって、レッドブックと中古車市場の価格が大きく異なる場合には、時価額の算定根拠を確認する余地があります。
レッドブック価格より中古車販売価格が高いのはなぜ?
たとえば、
保険会社の提示額:50万円
同じような車の中古車販売価格:80万円
という場合、「50万円では同じ車を買えない」と感じるでしょう。
ただし、中古車の価格は車種と年式だけで決まりません。
グレード、走行距離、初度登録年月、駆動方式、修復歴、車検残期間、装備、ボディカラー、車両状態などによって価格差が生じます。
そのため、中古車サイトで80万円の車を1台見つけただけで、「事故車の時価額も80万円」と認められるとは限りません。
重要なのは、事故車と条件が近い車を複数比較することです。
保険会社の時価額に納得できない場合に確認すること
まず、保険会社に「なぜこの時価額になったのか」を確認しましょう。
確認したいのは、レッドブックを使ったのか、どの車種・型式・年式・グレードを基準にしたのか、走行距離や装備をどのように評価したのか、加算・減額があるのか、中古車市場価格を調査したのか、といった点です。
「時価額は50万円です」と金額だけを聞いて終わらせるのではなく、算定根拠を確認することが重要です。
中古車サイトで同等車を複数探す
保険会社の提示額と中古車市場価格に大きな差がある場合には、事故車と条件の近い中古車を探します。
できるだけ同じ車種、グレード、年式、型式、走行距離、駆動方式、装備などの車を複数集めてください。
そして、「同じ条件の車を買い直す場合、この程度の金額が必要になる」という資料として提示します。
実際の裁判でも、複数の中古車販売価格を参考に事故時の車両時価額を認定した例があります。
中古車サイトで都合のよい高額車1台だけを選ぶよりも、条件の近い複数車両を比較する方が説得力があります。
古い車や希少車はレッドブックだけでは判断しにくいことがある
年式の古い車でも、中古車市場で高い人気があり、高額で取引されている車があります。
旧車、希少車、スポーツカー、生産終了車などが代表例です。
そのため、「古い=ほとんど価値がない」とは限りません。
一方で、中古車市場に同等車がほとんど存在しない場合には、市場価格そのものを算定することが難しくなることがあります。
実際に大阪地裁令和2年2月27日判決では、中古車市場に同一条件の車が十分存在しない特殊車両について、使用年数、新車価格、使用状況など別の事情を考慮して時価額を判断しています。
レッドブックに載っていない車は価値がない?
いいえ。
レッドブックに掲載されていない=車両価値が0円ではありません。
古い車や特殊な車では、レッドブックに価格が掲載されていないことがあります。
その場合には、同一・類似車両の中古車販売価格、過去の価格資料、車両の使用状況、走行距離、整備状態など、別の資料を使って事故時の価値を検討することになります。
修理費が時価額を超えると「経済的全損」になることがある
交通事故でいう全損には、車が物理的に修理できないケースだけではなく、修理はできても修理費が車両価値などを上回る「経済的全損」があります。
たとえば、
車両時価額:50万円
修理費:100万円
なら、修理自体は技術的に可能でも、損害賠償上100万円の修理費を負担することが合理的なのかが問題になります。
そのため、経済的全損では修理費だけでなく、事故時の車両時価額がいくらなのかが極めて重要になります。
時価額が変われば全損の判断が変わる場合もある
たとえば保険会社が、
車両時価額:60万円
修理費:80万円
として経済的全損と判断したとします。
ところが、事故車と同条件の中古車を複数調査した結果、実際の市場価格が90万円程度だったことを合理的に示せる場合には、時価額の前提について再検討を求める余地があります。
名古屋地裁の判例でも、中古車市場価格だけでなく買替えに必要な費用などを考慮した結果、修理費を上回るとして経済的全損ではないと判断されたケースがあります。
したがって、保険会社から「全損です」と言われた場合には、修理費と同時に時価額の算定根拠を確認することが重要です。
全損の場合は買替諸費用も確認する
この項目は元原稿に追加した方がよいです。
全損事故では、車両本体の時価額だけではなく、代替車を購入するために必要となる一定の買替諸費用が損害として問題になることがあります。
ただし、新しい車を購入するために支払った費用がすべて相手方へ請求できるわけではありません。
そのため保険会社から全損の提示を受けた場合は、「車両時価額だけなのか」「買替諸費用についてどのように扱っているのか」も確認するとよいでしょう。
カスタムパーツを付けている車は高く評価される?
高額なホイール、エアロパーツ、ナビ、オーディオなどを付けていても、「100万円かけて改造したから、時価額も100万円上乗せされる」とは限りません。
実際に支払ったカスタム費用と、中古車市場における価値は別だからです。
一方、カスタム内容や装備が車両価値の評価材料となる場合はあります。カスタム車について、ベース車両の市場価格に加えて改造内容を考慮した裁判例もあります。
購入明細、領収書、取付記録、写真などが残っていれば保管しておきましょう。
レッドブックは個人でも購入できる?
オートガイドのレッドブックは専門家向けの資料ですが、公式サイトから年間購読を申し込むことができます。
2026年現在の冊子版年間購読料は、国産乗用車が12,540円、軽自動車・二輪車が5,940円、商用車が9,240円、輸入自動車が8,580円です。
また、2026年5月1日にスタートした「RED Book Digital」でも同シリーズを閲覧できます。デジタル版は年間契約で、国産乗用車12,540円、軽自動車5,940円などとなっています。
保険会社の提示額が正しいとは限らないが、高い中古車を探せばよいわけでもない
ここは誤解しないことが重要です。
保険会社から提示されたレッドブック価格が絶対に正しいとは限りません。
しかし逆に、中古車サイトで最も高額な車を探してきて、その価格を事故車の時価額として主張すればよいわけでもありません。
基準になるのは、事故当時に事故車と同程度の車を中古車市場で取得するため、合理的にどの程度の費用が必要だったのかという点です。
レッドブック、中古車販売情報、車種、型式、グレード、年式、走行距離、使用状態、装備などを総合的に検討する必要があります。
よくある質問
交通事故のレッドブックとは何ですか?
有限会社オートガイドが発行する「オートガイド自動車価格月報」の通称です。中古車の標準的な価格を確認する資料として、自動車業界、損害保険業界、法曹、官公庁などで利用されています。
レッドブックと交通事故の「赤い本」は同じですか?
違います。レッドブックは中古車価格を調べる資料です。「赤い本」は日弁連交通事故相談センター東京支部の「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」で、慰謝料など交通事故の損害賠償実務に使われる専門書です。
車の時価額はレッドブックだけで決まりますか?
必ずしも決まりません。レッドブックは重要な参考資料ですが、同じ車種・年式・型、同程度の使用状態・走行距離などの車を中古車市場で取得するために必要な価格が重要になります。
レッドブックより中古車価格が高い場合はどうすればいいですか?
事故車と車種、グレード、年式、走行距離などが近い中古車を複数探し、保険会社へ時価額の算定根拠を確認しましょう。中古車サイトの販売価格がそのまま時価額になるとは限りません。
レッドブックに掲載されていない車は価値がないのですか?
いいえ。掲載がないことだけで価値が0円になるわけではありません。同等車両の市場価格や過去の価格資料、使用状態などから検討する場合があります。
保険会社から全損と言われたら修理できませんか?
修理自体は可能でも、修理費が車両時価額などを上回れば経済的全損として扱われることがあります。「修理できるか」と「修理費全額を損害賠償として認められるか」は別の問題です。
車両時価額が上がれば全損ではなくなることがありますか?
時価額の算定結果によって、修理費との関係が変わる可能性があります。提示された時価額に疑問がある場合には、まず算定根拠を確認してください。
保険会社の提示額に納得できない場合は交渉できますか?
提示額が変更されるとは限りませんが、事故車と条件の近い中古車市場価格などの資料を示し、算定根拠の説明や再検討を求めることは考えられます。法律上の争いになっている場合は、交通事故を扱う弁護士へ相談してください。
交通事故後の補償や通院でお困りの方へ
鍼灸整骨院かまたきでは、千葉市で交通事故後のむちうちや首・腰などの症状についてご相談を受け付けています。
事故後に痛みやしびれなどがある場合は、まず整形外科などの医療機関を受診してください。整形外科と整骨院の併用、保険会社への連絡、通院方法などについて不安がある場合には、現在の状況を確認しながらご案内します。
なお、車両時価額、経済的全損、損害賠償額などの法的判断や保険会社との紛争については、必要に応じて交通事故に詳しい弁護士へご相談ください。
まとめ
交通事故で使われるレッドブックは、有限会社オートガイドが発行する中古車価格資料「オートガイド自動車価格月報」です。
保険会社が車両時価額を検討するときの重要な参考資料ですが、「レッドブックの金額=絶対的な時価額」ではありません。
最高裁は、中古車の事故当時の価格について、原則として同じ車種・年式・型で、使用状態や走行距離なども同程度の車を中古車市場で取得するために必要な価格によって定めるべきとの考えを示しています。
そのため保険会社から「レッドブックでは50万円なので全損です」と言われた場合には、金額だけで判断せず、どの車種・型式・年式・グレード・走行距離を基準にしたのか確認してください。
実際の中古車市場と大きな差がある場合には、事故車と条件の近い複数の中古車情報を集め、時価額の再検討を求めることが考えられます。

