高齢者の逆走事故はなぜ起こる?原因・危険性・防止策を詳しく解説

高速道路を走っているとき、正面から突然車が走ってきたらどうなるでしょうか。

高速道路では双方の車が高い速度で走っているため、逆走車との事故は正面衝突につながり、重大な被害を生じる危険があります。

ニュースなどで、

「高齢ドライバーが高速道路を逆走」

という報道を見ることもあります。

実際、NEXCOが公表している高速道路の逆走事案の分析では、逆走した運転者の68%が65歳以上、そのうち49%が75歳以上となっています。

また、全国の高速道路では概ね2日に1回の頻度で逆走事案が確認されています。

ただし、

「高齢者だから逆走する」

「認知症になれば必ず逆走する」

という単純な問題ではありません。

高速道路の構造を誤認する、出口を通り過ぎて戻ろうとする、標識を見落とす、夜間で進行方向を判断しにくくなるなど、複数の原因があります。

この記事では、高齢者による逆走がなぜ起こりやすいのか、逆走が起きやすい場所、事故の危険性、現在行われている高齢運転者対策、逆走を防ぐために本人や家族ができることまで詳しく解説します。

目次

高速道路ではどれくらい逆走が起きている?

高速道路での逆走は、極めて珍しい事故と思われるかもしれません。

しかし、NEXCOが公表しているデータでは、全国の高速道路で概ね2日に1回の頻度で逆走事案が発生しています。

逆走事案の開始場所を見ると、41%が分合流部や出入口部です。

つまり、本線を普通に走っていて突然方向が分からなくなるケースだけではありません。

インターチェンジや料金所、サービスエリア・パーキングエリアなど、道路が分岐・合流する場所で進行方向を誤ってしまうケースが多いのです。

逆走するドライバーは高齢者が多い?

高速道路の逆走事案では、高齢ドライバーの割合が高いことが確認されています。

NEXCOが公表している分析では、

65歳以上 68%

75歳以上 49%

となっています。

つまり、逆走した運転者のおよそ半数が75歳以上です。

一方で、逆走は高齢者だけが起こすものではありません。

若いドライバーでも、

・出口を通り過ぎた

・料金所を間違えた

・目的地へ戻ろうとした

・道路構造を誤認した

などの理由で逆走する可能性があります。

高齢であることだけを原因と考えるのではなく、運転能力、道路構造、標識、時間帯、本人の判断などを総合的に考える必要があります。

高齢者の逆走事故はなぜ起こる?

高齢ドライバーの逆走には、一つだけではなく複数の要因が関係すると考えられます。

道路の進行方向を誤認する

高速道路では、

・インターチェンジ

・ジャンクション

・料金所

・サービスエリア

・パーキングエリア

などで道路が複雑に分岐します。

出口と入口が近接している場所では、

「こちらが本線へ戻る道だと思った」

という誤認が起こることがあります。

NEXCOによると、実際にICや料金所付近では、

・目的の出口を通り過ぎ、入口車線へ入る

・目的地へ戻るため本線上でUターンする

・料金所通過後に出口車線へ入り逆走する

といったケースが確認されています。

サービスエリア・パーキングエリアで入口と出口を間違える

SA・PAでは、

本線から入ってくる車線

本線へ戻る車線

があります。

方向を間違えて入口側へ進むと、そのまま高速道路を逆走してしまう可能性があります。

特に夜間や雨天など視界が悪い状況では、道路標示や標識を見落とさないよう注意が必要です。

出口を通り過ぎて戻ろうとしてしまう

「降りる予定だったインターチェンジを通り過ぎてしまった」

という経験がある人は少なくないでしょう。

このとき、

「少し戻ればいい」

と考え、高速道路上でUターンやバックをするのは非常に危険です。

高速道路は一方通行です。

出口を通り過ぎても、Uターンやバックをしてはいけません。

NEXCOでは、目的の出口を通り過ぎた場合は次のインターチェンジまで進み、料金所スタッフへ申し出るよう案内しています。

認知機能の変化

高齢になると、人によっては記憶力や判断力に変化が生じることがあります。

例えば、

・自分がどこから来たのか分からなくなる

・行き先を間違えたことに混乱する

・進入禁止の意味を正しく判断できない

・高速道路へ入ったこと自体を認識できない

といった状態があれば、逆走につながる可能性があります。

ただし、すべての高齢ドライバーに認知機能低下があるわけではありません。

また、逆走したからといって認知症と決めつけることも適切ではありません。

判断力や注意力の変化

運転では、

「信号を見る」

「標識を見る」

「周囲の車を見る」

「ナビを確認する」

など、複数の情報を同時に処理する必要があります。

加齢に伴って情報処理に時間がかかるようになると、複雑なインターチェンジや分岐点で判断が遅れることがあります。

焦っている状況では、さらに判断を誤る可能性があります。

視力・視野など身体機能の変化

年齢とともに、

・視力

・夜間視力

・視野

などが変化することがあります。

夜間では、

「道路標識が見えにくい」

「道路の形が分かりにくい」

「進入禁止標識に気付くのが遅れる」

ことがあります。

また、首の可動域が狭くなれば、左右や後方を確認しづらくなることもあります。

カーナビだけを頼りにしてしまう

カーナビは便利ですが、道路工事、新しい道路、GPSのずれなどによって、実際の道路状況と表示が完全に一致しないことがあります。

ナビが、

「右折してください」

と案内したとしても、実際に進入禁止標識があれば道路標識を優先しなければなりません。

カーナビだけを見るのではなく、標識や道路標示を確認することが重要です。

「いつも通っている道」という思い込み

長年運転している道路では、

「ここはいつも左へ曲がる」

「昔からこの道を通っている」

という記憶で運転することがあります。

しかし、

・道路構造の変更

・新しいバイパス

・交差点改良

・一方通行への変更

などによって道路環境が変わることがあります。

過去の記憶ではなく、その場の道路標識を確認する必要があります。

アクセルとブレーキの踏み間違いは逆走の直接原因?

高齢ドライバー事故では、アクセルとブレーキの踏み間違いが話題になることがあります。

しかし、

「アクセルとブレーキを踏み間違えたから逆走する」

という単純な関係ではありません。

ペダル踏み間違いは、急発進や店舗への突入など別の重大事故につながる可能性がありますが、逆走は基本的には道路の進行方向を誤ったり、不適切なUターンなどを行ったりすることで発生します。

高齢者事故対策として踏み間違い防止機能は重要ですが、逆走防止とは分けて考える必要があります。

高齢ドライバーの逆走=認知症とは限らない

逆走事故のニュースを見ると、

「認知症だったのでは?」

と考えることがあります。

しかし、逆走の原因には、

・道路の誤認

・出口の通り過ぎ

・標識の見落とし

・道に迷った

・故意のUターン

などさまざまなものがあります。

過去のNEXCOの分析でも、逆走事案の高齢者割合は高い一方、認知症の疑いが確認されたケースは逆走者全体の一部でした。

逆走したという事実だけで認知症と判断することはできません。

高速道路で逆走が起こりやすい場所

インターチェンジ

高速道路への入口と出口が近くにあるため、進路を間違える可能性があります。

特に料金所周辺では道路が複数方向へ分かれることがあります。

ジャンクション

複数の高速道路が接続するジャンクションでは、分岐が複雑です。

案内標識を早めに確認し、無理な車線変更を避けることが重要です。

サービスエリア・パーキングエリア

SA・PAでは、入口車線と出口車線を間違えることで逆走につながる場合があります。

休憩後に本線へ戻る際は、矢印や進入禁止標識を確認しましょう。

料金所周辺

料金所通過後には複数の車線へ分かれる場合があります。

出口側から一般道へ向かう車線へ誤って進入すると逆走につながる可能性があります。

一般道の一方通行

逆走は高速道路だけではありません。

一般道でも、

・一方通行

・駅前

・商店街

・住宅街

などで方向を誤ることがあります。

「進入禁止」や「一方通行」の標識を見落とさないことが重要です。

なぜ逆走事故は重大事故になりやすい?

高速道路で逆走が起きると、正常方向を走っている車と向かい合う形になります。

そのため、衝突した場合は正面衝突になる可能性があります。

例えば、

正常走行車100km/h

逆走車80km/h

で接近していれば、互いの距離は非常に速い速度で縮まります。

発見してから衝突までの時間が短く、回避が難しくなります。

二次事故につながる可能性

逆走車を発見したドライバーが、

・急ブレーキ

・急ハンドル

・急な車線変更

を行うことで、他の車を巻き込む事故につながる可能性があります。

逆走車本人と直接衝突しなくても、多重事故に発展することがあります。

高齢運転者にはどのような免許制度がある?

現在、日本では高齢ドライバーについて年齢に応じた制度があります。

70歳以上は高齢者講習

免許更新時の年齢が70歳以上の場合、高齢者講習を受講する必要があります。

講習では、

・運転適性

・実車指導

などを通じ、自分の運転能力を確認します。

75歳以上は認知機能検査

免許更新時の年齢が75歳以上の場合は、認知機能検査を受けます。

認知機能検査では、

・記憶力

・時間の見当識

などを確認します。

結果は、

「認知症のおそれがある」

または

「認知症のおそれがない」

のいずれかで判定されます。

「認知症のおそれがある」と判定された場合は、医師の診断を受けることになります。

認知症と診断された場合は、必要な手続を経て免許取消しまたは停止となる場合があります。

一定の違反歴がある75歳以上は運転技能検査

75歳以上で、過去3年間に一定の交通違反歴がある人は、免許更新時に運転技能検査を受けなければなりません。

対象となる違反には、

・信号無視

・通行区分違反

・速度超過

・一時停止違反に関連する違反

・携帯電話使用等

などがあります。

運転技能検査に合格しなければ、免許を更新することができません。

サポートカー限定免許という選択肢もある

現在は、本人の申請によって「サポートカー限定免許」に変更できる制度があります。

これは、一定の安全運転支援機能を備えた車に限って運転できる免許です。

運転を完全にやめることに抵抗がある場合の一つの選択肢になります。

高齢者本人ができる逆走防止対策

道を間違えても絶対にUターンしない

高速道路で出口を通り過ぎても、

・バック

・Uターン

・逆走

をしてはいけません。

そのまま次のインターチェンジまで進みましょう。

料金所スタッフへ申し出れば、道路構造などに応じて案内してもらえる場合があります。

ナビより道路標識を優先する

ナビと道路標識が違う場合は、道路標識に従います。

「ナビが右と言ったから」

という理由で進入禁止道路へ入らないようにしましょう。

分からなくなったら無理に進まない

一般道で進行方向が分からなくなった場合は、安全に停車できる場所へ移動してから確認します。

走りながらナビを操作すると、さらに注意力が低下します。

夜間や知らない道路の運転を減らす

夜間は視認性が低下します。

自分で、

「最近夜の標識が見えにくい」

と感じる場合は、夜間運転を減らすことも事故防止につながります。

定期的に運転能力を確認する

免許更新を待たず、

・安全運転講習

・高齢者向け運転講習

などを利用して、自分の運転能力を確認する方法もあります。

家族が気付きたい高齢ドライバーの変化

家族が同乗したときに、以前とは違う運転が増えていないか確認してみましょう。

例えば、

・道をよく間違えるようになった

・一方通行へ入りそうになった

・標識を見落とすことが増えた

・信号への反応が遅い

・車線からはみ出す

・車庫入れで何度もぶつける

・アクセルとブレーキを間違えた

・目的地へ行く途中で迷う

などです。

一度のミスだけで、

「もう運転してはいけない」

と決めつける必要はありません。

しかし、以前にはなかったミスが繰り返される場合は、一度運転について話し合うきっかけになります。

家族はどのように話せばよい?

本人へいきなり、

「危ないから免許を返して」

と言うと、強く反発されることがあります。

特に地方では、

・病院

・買い物

・仕事

などに車が必要なケースがあります。

まず、

「最近、夜の運転は見えにくくない?」

「一度運転講習を受けてみない?」

「安全装置の付いた車に変える方法もあるよ」

など、事故を防ぐ方法を一緒に考えることが重要です。

運転に不安がある場合は安全運転相談窓口を利用する

警察には、運転に不安を感じる本人や家族が相談できる安全運転相談窓口があります。

認知機能や身体機能に不安がある場合に、

「免許を続けられるのか」

「どのような手続があるのか」

などを相談できます。

家族だけで抱え込まず、専門窓口へ相談する方法もあります。

免許返納も選択肢の一つ

本人が、

「最近運転に自信がない」

「道を間違えることが増えた」

と感じている場合は、自主返納を検討することもできます。

ただし、

「高齢者だから全員免許を返納するべき」

というものではありません。

重要なのは、その人の運転能力や生活環境を考えて判断することです。

免許返納後の移動手段も同時に考える

運転をやめても、

・病院

・買い物

・銀行

などへ行く必要があります。

そのため、

・路線バス

・コミュニティバス

・タクシー

・乗合タクシー

・家族による送迎

・自治体の移動支援

などを確認しておきましょう。

「免許を返納して」

だけではなく、

「その後どう生活するか」

まで一緒に考えることが重要です。

道路側ではどのような逆走対策が行われている?

高速道路会社では、逆走を防止するためさまざまな対策を行っています。

例えば、

・矢印路面標示

・進入禁止看板

・大型の注意喚起標識

・ラバーポール

・カラー舗装

・逆走検知システム

などです。

NEXCOでは、逆走が起こりやすい場所について、視覚的・物理的な対策を進めています。

2024年には新しい逆走対策技術カタログも公表され、重点箇所について2028年度までの対策完了を目指しています。

もし自分が高速道路を逆走していると気付いたら

ここは非常に重要です。

「逆走している!」

と気付いても、その場で慌ててUターンしてはいけません。

NEXCOは、次のように案内しています。

まず、近くの安全な場所へ停車します。

ハザードランプを点灯します。

その後、ガードレールの外側など安全な場所へ避難します。

そして、110番または非常電話で通報します。

車内にそのままとどまると、正常走行車から衝突される危険があります。

逆走車を発見したらどうする?

高速道路で、

「前方から車が走ってきた」

「情報板で逆走車ありと表示された」

場合は、速度を落とし、十分な車間距離を取りましょう。

NEXCOによると、逆走車は追い越し車線側を走ってくる傾向があります。

逆走車を発見しても、無理に追いかけたり停止させようとしたりしてはいけません。

同乗者から110番通報するか、SA・PAの非常電話や料金所スタッフへ知らせましょう。

「逆走は犯罪」と考えるのは正しい?

逆走は非常に危険な交通違反ですが、

「逆走したら必ず犯罪者になる」

という表現は適切ではありません。

高速道路での逆走は、通行区分違反など道路交通法上の違反に該当する可能性があります。

さらに逆走によって人身事故を起こした場合は、事故内容によって刑事責任を問われる可能性があります。

重要なのは、「犯罪」という強い言葉で高齢者を責めることではなく、逆走が命に関わる危険行為であることを理解し、事故を未然に防ぐことです。

よくある質問

高齢者の逆走事故は本当に多いのですか?

NEXCOが公表している高速道路の逆走事案では、運転者の68%が65歳以上、49%が75歳以上です。

高齢ドライバーの割合は高いものの、若い運転者による逆走もあるため、高齢だけが原因ではありません。

高速道路ではどのくらい逆走が起きていますか?

NEXCOによると、全国の高速道路では概ね2日に1回の頻度で逆走事案が発生しています。

逆走はどこで起きやすいですか?

高速道路では、IC・JCTなどの分合流部、料金所周辺、SA・PAなどで発生しています。

特に入口と出口を取り違えるケースなどがあります。

高齢者の逆走は認知症が原因ですか?

認知症が関係するケースはありますが、すべてではありません。

道路の誤認、出口を通り過ぎた後のUターン、標識の見落としなどさまざまな原因があります。

アクセルとブレーキの踏み間違いで逆走するのですか?

ペダル踏み間違いは重大事故の原因になることがありますが、逆走そのものは道路の進行方向を間違えることなどによって起こります。

両者は分けて考える必要があります。

75歳以上になると免許更新時に何がありますか?

75歳以上の運転者は、免許更新時に認知機能検査を受ける必要があります。

また、一定の違反歴がある75歳以上の運転者は、運転技能検査にも合格する必要があります。

高速道路で出口を通り過ぎたら戻ってもいいですか?

高速道路でバックやUターンをしてはいけません。

そのまま次のインターチェンジまで進み、料金所スタッフへ相談してください。

自分が逆走していると気付いたらどうすればよいですか?

近くの安全な場所に停車してハザードランプを点灯し、ガードレールの外側などへ避難したうえで110番または非常電話から通報してください。

逆走車を発見したらどうすればよいですか?

速度を落とし、十分な車間距離を取って衝突を避けることを優先します。

同乗者から110番通報するか、SA・PAの非常電話、料金所スタッフなどへ知らせましょう。

まとめ

高速道路の逆走事故では、高齢ドライバーが占める割合が高いことが確認されています。

NEXCOのデータでは、逆走した運転者の68%が65歳以上、そのうち49%が75歳以上です。

しかし、

「高齢だから逆走する」

「逆走した人は認知症」

と単純に考えることはできません。

逆走には、

・道路の進行方向の誤認

・ICや料金所での進路間違い

・SA・PAの入口と出口の取り違え

・目的の出口を通り過ぎた後のUターン

・標識の見落とし

・認知機能や視機能の変化

など複数の原因があります。

高齢ドライバー本人は、

・道路標識を確認する

・出口を通り過ぎてもUターンしない

・分からなくなったら無理に進まない

・夜間や慣れない道路で無理をしない

ことが重要です。

家族も、運転ミスが増えている場合には一方的に免許返納を迫るのではなく、安全運転講習、サポートカー、運転時間の制限、免許返納後の移動手段などを一緒に検討しましょう。

そして、万が一高速道路で自分が逆走していると気付いた場合は、慌ててUターンしてはいけません。

安全な場所へ停止し、ハザードランプを点灯してガードレールの外側などへ避難し、110番または非常電話へ通報してください。

逆走事故を防ぐには、高齢ドライバー本人だけに責任を負わせるのではなく、家族、道路管理者、自動車メーカー、行政などがそれぞれ対策を進めることが重要です。