
交通事故後、首や腰に痛みが出て整骨院へ通おうとしたところ、保険会社から
「まず整形外科を受診してください」
「整骨院へ行く前に病院で診断を受けてください」
と言われることがあります。
すると、
「整骨院でも交通事故の施術ができるのに、なぜ整形外科へ行かないといけないの?」
「知人は整骨院だけに通っていたけれど大丈夫だった」
「整形外科と整骨院は何が違うの?」
と疑問に思う方もいるでしょう。
保険会社が整形外科をすすめる大きな理由は、単に整骨院への通院を認めたくないからではありません。
交通事故によるケガを医学的に診断し、事故との因果関係を確認し、必要な画像検査や投薬を行い、後遺障害が残った場合に診断書を作成できるのは医師だからです。
一方、整骨院には、捻挫や打撲などに対して柔道整復師が手技療法や運動療法などを行えるという役割があります。
交通事故後は「整形外科か整骨院か」の二者択一ではなく、それぞれの役割を理解して適切に利用することが大切です。
この記事では、保険会社が整形外科をすすめる理由、整形外科と整骨院の違い、両方へ通う場合の注意点について分かりやすく解説します。
- 1 保険会社が整形外科をすすめる理由
- 2 交通事故によるケガを医師に診断してもらうため
- 3 事故とケガとの因果関係を確認するため
- 4 診断書を作成してもらうため
- 5 レントゲン・CT・MRIなどの検査が必要になるため
- 6 薬の処方や注射などが必要になる場合があるため
- 7 治療が長引いたときに医師の判断が重要になるため
- 8 症状固定とは
- 9 後遺障害診断書を作成できるのは医師だから
- 10 整形外科と整骨院は何が違う?
- 11 整形外科
- 12 整骨院
- 13 骨折や脱臼も整骨院で施術できる?
- 14 交通事故で多いむち打ちとは
- 15 捻挫・打撲・挫傷
- 16 整形外科と整骨院は併用できる?
- 17 整形外科と整骨院を併用するときのポイント
- 18 整骨院へ頻繁に通っていても整形外科へ行かないと問題になる?
- 19 保険会社から「整骨院はダメ」と言われたら?
- 20 保険会社から治療費の打ち切りを言われた場合
- 21 整形外科と整骨院を使い分ける考え方
- 22 鍼灸整骨院かまたきでは整形外科との併用相談を受け付けています
- 23 よくある質問
- 24 まとめ
保険会社が整形外科をすすめる理由
交通事故後に保険会社が整形外科への受診をすすめる主な理由は、次のとおりです。
交通事故によるケガを医師に診断してもらうため
交通事故によって身体に痛みが生じても、その原因がすべて筋肉や靱帯の損傷とは限りません。
事故の衝撃によって、次のような損傷が隠れている可能性があります。
・骨折
・脱臼
・椎間板損傷
・神経損傷
・脊髄損傷
・頭部外傷
・内臓損傷
こうしたケガを判断するためには、医師による診察や画像検査が必要です。
整形外科では、症状に応じてレントゲン、CT、MRIなどを使用し、骨や関節、神経などの状態を確認できます。
交通事故後に強い痛みやしびれがある場合は、まず整形外科などの医療機関で重大な損傷がないか確認することが重要です。
事故とケガとの因果関係を確認するため
交通事故の治療費や慰謝料などを請求する際には、
「現在の症状が本当に交通事故によって生じたものなのか」
という因果関係が重要になります。
例えば、事故当日には医療機関を受診せず、数週間後に初めて、
「首が痛い」
「腰が痛い」
と訴えた場合、保険会社から
「事故との関係が分からない」
と判断される可能性があります。
事故から受診までの期間が空くほど、事故と症状との因果関係を説明しにくくなることがあります。
そのため、事故後に痛みや違和感がある場合は、症状が軽くてもできるだけ早く医療機関を受診してください。
「事故から何日までなら必ず認められる」という明確な日数のルールがあるわけではありませんが、受診が遅れるほど不利になる可能性があります。
診断書を作成してもらうため
交通事故後に人身事故として警察へ届け出る場合や、保険会社へケガの内容を示す場合には、医師が作成した診断書が重要になります。
柔道整復師は施術証明書などを作成できますが、医師の診断書と同じものではありません。
自賠責保険の請求書類でも、傷害については医師の診断書や診療報酬明細書、整骨院等については施術証明書・施術費明細書が別々の資料として扱われています。
つまり、
医師は「診断する役割」
柔道整復師は「柔道整復の範囲で施術を行う役割」
と考えると分かりやすいでしょう。
レントゲン・CT・MRIなどの検査が必要になるため
交通事故後の症状には、外見だけでは判断できないケガがあります。
例えば、
「ただの打撲だと思っていたら骨折していた」
「むち打ちだと思っていたら椎間板や神経に問題があった」
というケースもあります。
整骨院ではレントゲン、CT、MRIによる画像診断はできません。
そのため、事故直後は医療機関で必要な検査を受けることが重要です。
特に次の症状がある場合は、早めに医療機関を受診してください。
・手足にしびれがある
・力が入りにくい
・激しい頭痛がある
・吐き気や嘔吐がある
・意識がぼんやりする
・歩けないほど痛い
・関節が変形している
・胸や腹部に強い痛みがある
薬の処方や注射などが必要になる場合があるため
交通事故後の強い痛みに対して、医師から消炎鎮痛薬や湿布などが処方されることがあります。
症状によっては、神経障害性疼痛に対する薬や神経ブロック注射などが検討されることもあります。
柔道整復師は薬を処方したり、注射を行ったりすることはできません。柔道整復師法でも、外科手術や薬品の投与・指示は禁止されています。
治療が長引いたときに医師の判断が重要になるため
交通事故後の治療が長期間続くと、相手側の保険会社から、
「そろそろ治療費の対応を終了したい」
と言われることがあります。
しかし、保険会社が治療費の一括対応を終了すると言ったからといって、医学的に治療が不要になったことを意味するわけではありません。
治療を続ける必要があるか、症状固定と判断するかについては、医師の医学的な判断が重要になります。
症状固定とは
症状固定とは、治療を継続しても、これ以上大きな改善が見込みにくい状態になったと医学的に判断されることです。
症状固定後は、原則としてそれまでの「傷害」としての治療費や慰謝料を整理し、残った症状について後遺障害の問題を検討する段階になります。
保険会社が一方的に、
「今日から症状固定です」
と医学的に決めるものではありません。
まだ症状が残っている場合は、保険会社へ返答する前に担当医へ相談しましょう。
後遺障害診断書を作成できるのは医師だから
交通事故後に十分な治療を続けても、
・首や腰の痛み
・手足のしびれ
・関節の可動域制限
・筋力低下
などが残る場合があります。
症状固定後に後遺障害等級の認定を申請する場合、重要となるのが「後遺障害診断書」です。
この後遺障害診断書は医師が作成します。
国土交通省が案内する自賠責請求の必要書類でも、後遺障害診断書は病院・医院が作成する書類とされています。
事故直後から整形外科へほとんど通わず、症状固定の時期になって突然、
「後遺障害診断書を書いてください」
と依頼しても、医師がこれまでの症状経過を把握できていなければ、十分な内容を記載することが難しくなる可能性があります。
そのため、整骨院へ通う場合でも、必要に応じて整形外科で症状の経過を診てもらうことが重要です。
整形外科と整骨院は何が違う?
整形外科と整骨院は、同じように身体の痛みを扱っていても役割が異なります。
整形外科
整形外科は医師が診療を行う医療機関です。
主に次のことができます。
・医学的な診断
・レントゲン検査
・CT検査
・MRI検査
・薬の処方
・注射
・手術
・リハビリテーション
・診断書の作成
・後遺障害診断書の作成
事故直後にケガの状態を確認する場合や、症状が長引いて原因を詳しく調べたい場合は、整形外科の役割が非常に重要です。
整骨院
整骨院では、国家資格である柔道整復師が施術を行います。
柔道整復師は、骨折、脱臼、捻挫、打撲、挫傷などの外傷について、柔道整復術を行う資格です。
厚生労働省の職業情報でも、柔道整復師は整復・固定・後療法として、手技療法、運動療法、温熱などの物理療法を行う職種と説明されています。
交通事故では、医療機関で重大な損傷がないことを確認したうえで、捻挫や打撲などに対する施術を受ける選択肢があります。
ただし、整骨院では、
・医学的な診断
・レントゲンやMRI
・薬の処方
・注射
・手術
はできません。
骨折や脱臼も整骨院で施術できる?
柔道整復師は骨折や脱臼について、事故直後などの応急手当を行うことができます。
ただし、その後も継続して骨折・脱臼の患部へ施術する場合は、医師の同意が必要です。
厚生労働省の算定基準でも、骨折・脱臼については応急手当を除き、医師の同意を得なければならないとされています。
なお、必ず「医師の同意書」という書面が必要という意味ではありません。
厚生労働省の通知では、医師が患者を診察したうえで書面または口頭で同意し、その旨が施術録へ記載されていればよいとされています。
交通事故で多いむち打ちとは
交通事故後によく聞く「むち打ち」は正式な傷病名ではありません。
事故の衝撃によって首が前後へ大きく振られ、首周辺の筋肉や靱帯などを傷めることで、
・首の痛み
・肩こり
・頭痛
・動かしにくさ
などが現れることがあります。
医療機関では、外傷性頚部症候群や頚椎捻挫などと診断されることがあります。
ただし、
・手足のしびれ
・筋力低下
・歩行障害
などがある場合は、神経根や脊髄などに問題がある可能性があります。
「むち打ちだから整骨院だけで大丈夫」と自己判断せず、まず医療機関で検査を受けることが大切です。
捻挫・打撲・挫傷
交通事故の衝撃によって、筋肉、筋膜、靱帯などを損傷することがあります。
レントゲンで骨に異常がなくても痛みが続くケースがあります。
このような外傷について、医療機関で重大な損傷がないことを確認した後、整骨院で柔道整復による施術を受ける場合があります。
整形外科と整骨院は併用できる?
交通事故後に整形外科と整骨院の両方へ通院すること自体は可能です。
ただし、
「整形外科へ月1回行けば必ず保険会社が認めてくれる」
「医師が許可すれば必ず整骨院費用が支払われる」
という決まりがあるわけではありません。
自賠責保険では、治療や施術について事故との因果関係、必要性、相当性などが確認されます。
そのため、併用する場合は事前に医師や保険会社へ伝えておくことが大切です。
整形外科と整骨院を併用するときのポイント
まず整形外科で診断を受ける
事故後は、まず整形外科などの医療機関を受診しましょう。
医師に、
・事故状況
・痛みの場所
・しびれの有無
・頭痛やめまい
・動かしにくい場所
などを具体的に伝えます。
身体のどこに症状があるのかを、事故直後から医療記録へ残しておくことが重要です。
整骨院へ通いたいことを医師へ伝える
整骨院で施術を受けたい場合は、担当医へその希望を伝えておくとよいでしょう。
特に骨折や脱臼について継続的な施術を受ける場合は、医師の同意が必要です。
捻挫や打撲などでも、現在の症状や治療方針と整骨院での施術が矛盾しないよう、情報共有しておくことが望ましいでしょう。
保険会社へ整骨院へ通うことを伝える
相手側の任意保険会社が治療費を医療機関などへ直接支払う「一括対応」を行っている場合は、整骨院へ通い始める前に保険会社へ連絡しておくと手続きがスムーズです。
無断で通院先を増やした場合、後になって施術費の必要性などを巡ってトラブルになる可能性があります。
整形外科の受診をやめない
整骨院へ通い始めたからといって、整形外科の受診を完全にやめるのはおすすめできません。
症状の経過を医師へ確認してもらい、必要に応じて画像検査や薬の調整などを受けることが重要です。
後遺障害申請を検討する場合にも、医師による継続的な診療記録が重要になります。
ただし、
「必ず月1回」
「2週間に1回なら大丈夫」
といった一律の決まりはありません。
症状や治療内容に応じて、医師と相談しながら必要な頻度で受診してください。
整骨院へ頻繁に通っていても整形外科へ行かないと問題になる?
可能性はあります。
例えば、事故後に一度だけ整形外科を受診し、その後数か月間ずっと整骨院だけに通った場合、保険会社や後遺障害の審査で、
「医師による症状経過の確認が少ない」
と見られる可能性があります。
また、症状が途中で悪化した場合でも、整形外科を受診していなければ、医学的な変化を確認できません。
整骨院へ通っている場合でも、症状が続いている、悪化している、新しいしびれが出たなどの場合は、整形外科で再評価を受けましょう。
保険会社から「整骨院はダメ」と言われたら?
保険会社から、
「整骨院は認めません」
「病院だけにしてください」
と言われることがあります。
その場合は、まず理由を確認してください。
考えられる理由としては、
・医師の診断を受けていない
・事故から初診まで期間が空いている
・症状と施術部位が一致していない
・施術頻度が高すぎると判断されている
・長期間施術が続いている
・骨折や脱臼について医師の同意がない
などがあります。
整骨院の施術費が交通事故の損害として認められるかどうかは、事故との因果関係、必要性、相当性などを踏まえて判断されます。
「通院先を選ぶ自由がある=どの施術費でも必ず保険会社が支払う」という意味ではありません。
保険会社と意見が合わない場合は、理由を書面で確認し、必要に応じて弁護士や交通事故の相談機関へ相談しましょう。
保険会社から治療費の打ち切りを言われた場合
治療途中で保険会社から、
「来月から治療費を支払いません」
と言われることがあります。
この場合も、すぐに治療をやめるのではなく、まず医師へ相談してください。
保険会社による一括対応の終了と、医師が判断する治療終了・症状固定は別の問題です。
医師が引き続き治療が必要と判断している場合は、健康保険などを利用して治療を継続し、後から必要性・相当性のある治療費を請求できる場合もあります。
ただし、最終的に支払われるかどうかは個別事情によります。
整形外科と整骨院を使い分ける考え方
交通事故後の通院先は、
「整形外科と整骨院のどちらが優れているか」
で考えるものではありません。
それぞれ役割が異なります。
整形外科が重要になる場面
・事故直後
・診断を受けたい
・レントゲンやMRIが必要
・強い痛みやしびれがある
・薬や注射が必要
・骨折や脱臼が疑われる
・症状が悪化した
・治療が長引いている
・症状固定を検討する
・後遺障害申請を検討する
整骨院を検討できる場面
・医療機関で重大な損傷がないことを確認した
・捻挫、打撲、挫傷などへの柔道整復を受けたい
・関節周囲や筋肉の痛みが続いている
・医師の治療と併用して身体機能の回復を目指したい
事故の状態によって適切な対応は異なります。
鍼灸整骨院かまたきでは整形外科との併用相談を受け付けています
鍼灸整骨院かまたきでは、交通事故後の身体の痛みや通院についてご相談を受け付けています。
例えば、
・整形外科へ通っているが首や腰の痛みが残っている
・整骨院にも通いたいが手続きが分からない
・保険会社に整形外科へ行くよう言われた
・整形外科と整骨院を併用したい
・通院先を変更したい
・リハビリ終了後も筋肉の痛みや緊張が残っている
といったご相談です。
当院では、必要な場合には整形外科での診察や再検査をおすすめしています。
骨折、脱臼、神経症状などが疑われる場合は、整骨院だけで対応せず医療機関での検査を優先します。
交通事故後の身体の状態や現在の通院状況を確認しながら、適切な通院方法をご案内します。
よくある質問
交通事故後は最初に整形外科へ行った方がよいですか?
はい。
交通事故では、骨折、脱臼、神経損傷、頭部外傷などが隠れている可能性があります。
まず医師の診察を受け、必要に応じてレントゲン、CT、MRIなどの検査を受けることが重要です。
整骨院だけに通っても交通事故の補償を受けられますか?
整骨院の施術費が損害として認められる場合はありますが、事故直後から医師の診察を受けず整骨院だけへ通うと、事故との因果関係やケガの内容を医学的に証明しにくくなる可能性があります。
まず医療機関を受診することをおすすめします。
整形外科と整骨院を同時に通えますか?
状況によっては併用できます。
ただし、施術費がすべて自動的に保険で認められるわけではありません。
医師や保険会社へ整骨院へ通うことを伝えておくとよいでしょう。
整骨院へ通うには医師の同意書が必要ですか?
捻挫、打撲、挫傷などすべての施術で医師の同意書が必要というわけではありません。
ただし、骨折や脱臼について応急手当後も継続して施術する場合は、医師の同意が必要です。
医師の同意は必ずしも書面に限らず、要件を満たせば口頭でも認められる場合があります。
整形外科は月1回受診すれば大丈夫ですか?
「月1回なら必ず大丈夫」という決まりはありません。
受診頻度は症状や治療内容によって異なります。医師と相談し、必要な頻度で診察を受けてください。
保険会社に整骨院はダメと言われたら通えませんか?
まず、なぜ認められないと言われたのか理由を確認しましょう。
医師の診断がない、施術の必要性が確認できないなどの理由がある場合があります。
保険会社と意見が合わない場合は、弁護士や交通事故相談機関へ相談する方法もあります。
保険会社から治療費の打ち切りを言われたら治療をやめる必要がありますか?
保険会社が治療費の一括対応を終了することと、医学的に治療が必要なくなることは同じではありません。
症状が残っている場合は、まず担当医へ相談してください。
後遺障害診断書は整骨院で書いてもらえますか?
後遺障害診断書は医師が作成します。
後遺障害申請を検討する可能性がある場合は、整骨院へ通っていても整形外科で継続的に診察を受けておくことが重要です。
まとめ
交通事故後に保険会社が整形外科をすすめるのは、整骨院を利用させたくないからとは限りません。
交通事故によるケガの医学的な診断、レントゲンやMRIなどの検査、薬の処方、症状固定の判断、後遺障害診断書の作成など、医師でなければできないことがあるためです。
一方、整骨院では、柔道整復師が捻挫、打撲、挫傷などに対して手技療法、運動療法、物理療法などを行うことができます。
骨折や脱臼については、応急手当を除き、継続して施術する場合には医師の同意が必要です。
交通事故後は、
「整形外科か整骨院か」
ではなく、
「まず医療機関でケガを診断してもらい、必要に応じて整骨院を併用する」
という考え方が安全です。
整骨院へ通う場合でも、整形外科の受診を完全にやめず、医師に症状の経過を確認してもらいましょう。
鍼灸整骨院かまたきでは、交通事故後の通院や整形外科との併用についてご相談を受け付けています。
現在の症状や通院状況を確認しながら、必要に応じて医療機関での診察もご案内します。

