
交通事故に遭ったあと、相手から
「任意保険に入っていません」
と言われたら、
「治療費は誰が払うの?」
「慰謝料はもらえない?」
「自賠責保険は使える?」
「自分で治療費を払わないといけない?」
と不安になる方も多いでしょう。
しかし、加害者が任意保険に加入していないからといって、交通事故の被害者が何の補償も受けられなくなるわけではありません。
自動車やバイクには原則として自賠責保険への加入が義務付けられており、人身事故の被害者を救済するための基本的な補償があります。
一方、自賠責保険には支払限度額があり、車の修理費などの物損は対象になりません。
そのため、相手が任意保険未加入だった場合は、
自賠責保険
加害者本人への損害賠償請求
自分の人身傷害保険
無保険車傷害保険
健康保険
政府保障事業
など、事故状況に応じて利用できる制度を確認することが重要です。
この記事では、交通事故の相手が任意保険に入っていなかった場合に、治療費や慰謝料をどのように請求するのか、分かりやすく解説します。
- 1 まず確認|「任意保険未加入」には3つのケースがある
- 2 自賠責保険と任意保険は何が違う?
- 3 相手が任意保険未加入でも自賠責保険は使える?
- 4 自賠責保険の補償上限はいくら?
- 5 治療費だけで120万円ではない
- 6 120万円を超えたら残りは自己負担?
- 7 相手が任意保険未加入だと何が大変?
- 8 被害者請求という方法がある
- 9 治療費を自分で立て替えることはある?
- 10 交通事故でも健康保険は使える?
- 11 健康保険を使う場合は「第三者行為による傷病届」を確認
- 12 自分の任意保険も確認する
- 13 人身傷害保険とは?
- 14 無保険車傷害保険とは?
- 15 弁護士費用特約も確認する
- 16 相手が自賠責保険にも入っていなかったら?
- 17 政府保障事業とは?
- 18 ひき逃げでも補償を諦めない
- 19 車の修理費は自賠責保険から出る?
- 20 任意保険未加入の相手との事故で特に注意したいこと
- 21 必ず警察へ届け出る
- 22 相手の情報を確認する
- 23 事故現場を記録する
- 24 身体に症状があれば早めに医療機関へ
- 25 自分にも過失がある場合はどうなる?
- 26 任意保険未加入事故で治療を受ける流れ
- 27 相手が無保険だから治療を諦める必要はない
- 28 よくある質問
- 29 まとめ
まず確認|「任意保険未加入」には3つのケースがある
交通事故で「保険に入っていない」といっても、状況によって意味が異なります。
大きく分けると、
1.被害者自身が任意保険に入っていない
2.加害者が任意保険に入っていない
3.加害車両が自賠責保険にも入っていない
というケースがあります。
ここを混同すると、利用できる制度を正しく判断できません。
この記事では主に、「交通事故の被害者になったが、相手が任意保険未加入だった」ケースについて解説します。
自賠責保険と任意保険は何が違う?
日本の自動車保険を理解するときに重要なのが、自賠責保険と任意保険の違いです。
自賠責保険
自賠責保険は、自動車事故による人身被害者を救済するための基本的な保険です。
自動車やバイクなどには原則として加入が義務付けられています。
対象になるのは基本的に、
治療関係費
休業損害
慰謝料
後遺障害による損害
死亡による損害
などの人身損害です。
車や物の損害は対象ではありません。
任意保険
任意保険は、自賠責保険だけでは補いきれない損害などに備える保険です。
代表的な補償には、
対人賠償保険
対物賠償保険
人身傷害保険
車両保険
などがあります。
特に対人賠償保険は、自賠責保険の支払限度額を超える賠償責任を補う役割があります。
相手が任意保険未加入でも自賠責保険は使える?
相手の車両が自賠責保険へ加入しており、自賠責保険の対象となる人身事故であれば、相手が任意保険未加入でも自賠責保険へ請求できる可能性があります。
ここが非常に重要です。
「相手が任意保険に入っていない」
イコール
「治療費も慰謝料も一切受け取れない」
ではありません。
自賠責保険は、任意保険とは別の制度です。
自賠責保険の補償上限はいくら?
自賠責保険には被害者1人ごとの支払限度額があります。
傷害による損害は、
最高120万円
死亡による損害は、
最高3,000万円
後遺障害による損害は、等級に応じて、
最高4,000万円~75万円
です。
ただし、傷害部分の120万円について誤解しないよう注意してください。
治療費だけで120万円ではない
「自賠責保険なら治療費が120万円まで出る」
と説明されることがありますが、正確ではありません。
傷害部分の120万円には、
治療関係費
休業損害
慰謝料
などが含まれます。
つまり、
治療費だけで120万円+慰謝料が別枠
ではありません。
傷害による損害全体について、被害者1人につき120万円が支払限度額です。
120万円を超えたら残りは自己負担?
ここは元記事から特に修正したい部分です。
自賠責保険の120万円を超えたからといって、それだけで被害者が残りをすべて自己負担しなければならないという意味ではありません。
自賠責保険は、あくまで基本的な被害者救済を目的とした制度です。
加害者に損害賠償責任があり、被害者に自賠責保険の限度額を超える損害が発生していれば、超過部分について加害者本人へ請求することが問題になります。
通常、加害者が任意保険へ加入していれば、その超過部分を対人賠償保険などがカバーします。
しかし、加害者が任意保険未加入の場合は、加害者本人との交渉・請求が必要になる可能性があります。
相手が任意保険未加入だと何が大変?
最大の問題は、
「保険会社が加害者に代わって対応してくれない可能性がある」
ことです。
一般的に任意保険へ加入していれば、契約内容に応じて保険会社が事故対応や示談交渉などを行います。
しかし任意保険未加入の場合、
治療費
休業損害
慰謝料
車の修理費
その他の損害
について、加害者本人とやり取りしなければならない可能性があります。
さらに、加害者に十分な資力がなければ、
「賠償義務はあるが、実際の支払いが進まない」
という問題も考えられます。
被害者請求という方法がある
加害者側の任意保険会社が対応してくれない場合、自賠責保険については、被害者が加害車両の自賠責保険会社へ直接請求する方法があります。
これを一般に被害者請求と呼びます。
加害者本人が手続きを進めてくれないからといって、自賠責保険への請求まで諦める必要はありません。
まずは、
加害車両が加入している自賠責保険会社
事故証明書
診断書
診療報酬明細書
休業に関する資料
など、請求に必要となる情報・書類を確認していきます。
治療費を自分で立て替えることはある?
あります。
相手の任意保険会社による一括対応がない場合などは、医療機関の窓口で被害者自身が治療費を支払い、後から自賠責保険などへ請求するケースがあります。
そのため、
「相手が任意保険未加入だから病院へ行けない」
と考えないことが重要です。
身体に症状がある場合は、まず必要な医療を受けることを優先してください。
交通事故でも健康保険は使える?
交通事故だから健康保険が絶対に使えない、というわけではありません。
厚生労働省は、自動車事故など第三者の行為によって生じた傷病についても、一般の保険事故と同様に医療保険給付の対象になると明示しています。
これは相手が任意保険未加入の場合に特に重要です。
健康保険を利用することで、一時的な医療費負担を抑えながら治療を受けられる場合があります。
健康保険を使う場合は「第三者行為による傷病届」を確認
交通事故のように第三者の行為によってケガをして健康保険を使用する場合は、加入している健康保険へ連絡し、「第三者行為による傷病届」などの必要な手続きを確認します。
健康保険が医療費を負担した場合、保険者がその範囲で加害者側へ求償する仕組みがあります。
手続きは加入している健康保険によって確認してください。
自分の任意保険も確認する
相手が無保険だからといって、相手側の保険だけを確認するのでは不十分です。
被害者自身や家族が加入している自動車保険に、
人身傷害保険
無保険車傷害保険
弁護士費用特約
などが付帯している可能性があります。
契約内容や事故状況によって利用できる補償は異なります。
「自分は被害者だから自分の保険は関係ない」
と思わず、自分の保険会社にも事故を連絡し、利用できる補償がないか確認しましょう。
人身傷害保険とは?
人身傷害保険は、契約内容に応じて、自動車事故で被保険者などが死傷した場合の損害を補償する保険です。
相手が任意保険未加入の場合でも、自分の契約している人身傷害保険を利用できるケースがあります。
ただし、
契約車両
搭乗中かどうか
歩行中か
家族の契約
補償範囲
などによって適用条件が異なります。
保険証券や契約内容を確認しましょう。
無保険車傷害保険とは?
無保険車傷害保険も、相手が十分な対人賠償保険へ加入していない事故で問題になる補償です。
ただし、
「相手が任意保険未加入なら、どんなケガでも無保険車傷害保険から支払われる」
という単純な制度ではありません。
補償対象となる損害や条件は契約によって異なるため、自分の保険会社へ確認する必要があります。
弁護士費用特約も確認する
相手が任意保険未加入の場合、
「治療費を払ってくれない」
「慰謝料について話がまとまらない」
「車の修理費を払ってもらえない」
「連絡しても返事がない」
など、加害者本人との交渉が難しくなることがあります。
自分や家族の自動車保険などに弁護士費用特約が付いていれば、契約条件に応じて弁護士への相談・依頼費用が補償される可能性があります。
事故後は弁護士特約の有無も確認しておきましょう。
相手が自賠責保険にも入っていなかったら?
さらに問題なのが、
任意保険だけでなく自賠責保険にも加入していない車との事故
です。
この場合、通常の自賠責保険へ請求することができません。
そこで被害者救済のために設けられているのが、政府保障事業です。
国土交通省によると、加害車両が自賠責保険に加入していない無保険車の場合や、ひき逃げで加害者が分からない場合に、自賠責保険による救済を受けられない被害者に対して、国が損害をてん補する制度があります。
政府保障事業とは?
政府保障事業は、
無保険車による事故
ひき逃げで加害者が不明な事故
など、自賠責保険による救済を受けられない被害者を救済する制度です。
自賠責保険と同等の損害のてん補を国が行い、その後、国が加害者へ求償する仕組みになっています。
ただし、自賠責保険そのものとまったく同じ手続きではなく、健康保険や労災保険など他の制度によって給付を受けられる場合には調整が行われます。
ひき逃げでも補償を諦めない
ひき逃げでは、
「相手が分からないから保険も使えない」
と思ってしまうかもしれません。
しかし、加害者が特定できないひき逃げ事故も政府保障事業の対象となり得ます。
まず警察へ事故を届け出て、必要な治療を受けたうえで、利用できる制度を確認してください。
車の修理費は自賠責保険から出る?
出ません。
自賠責保険は人身事故の被害者救済を目的とした制度で、物損事故は補償対象外です。
例えば、
車の修理費
スマートフォンの破損
自転車の修理費
ガードレールなどの物損
は、自賠責保険から支払われません。
加害者が任意保険未加入の場合、物損については加害者本人への請求が問題になります。
自分が車両保険へ加入している場合には、自分の保険が利用できるかも確認しましょう。
任意保険未加入の相手との事故で特に注意したいこと
その場で示談しない
相手から、
「保険に入っていないから10万円で終わりにしてほしい」
「修理代だけ払うから警察を呼ばないで」
などと言われても、その場で安易に示談しないことが重要です。
事故直後には身体の状態も損害額も分かりません。
後から症状が現れる可能性もあります。
必ず警察へ届け出る
軽い事故に見えても警察へ届け出ましょう。
交通事故証明書など、後の保険請求や事故処理に関係する資料が必要になることがあります。
相手から、
「警察を呼ばないでほしい」
と言われても、当事者だけで終わらせないようにしてください。
相手の情報を確認する
可能な範囲で、
氏名
住所
電話番号
車両ナンバー
運転免許証
自賠責保険
車検証
などを確認します。
特に任意保険未加入の場合は、自賠責保険へ加入しているかどうかが重要です。
事故現場を記録する
事故後は、
車両の位置
車の損傷
道路状況
信号
道路標識
ブレーキ痕
などを写真や動画で記録します。
ドライブレコーダーがある場合は、映像が上書きされないよう保存しましょう。
身体に症状があれば早めに医療機関へ
相手が任意保険に加入しているかどうかと、身体の診察は別問題です。
事故後に、
首が痛い
腰が痛い
頭痛がする
肩が痛い
手足がしびれる
めまいがする
などの症状がある場合には、医療機関を受診してください。
「保険の話が決まってから病院へ行こう」
と受診を先延ばしにするのはおすすめできません。
自分にも過失がある場合はどうなる?
交通事故では、被害者側にも一定の過失が認められることがあります。
ただし、自賠責保険では被害者保護の観点から、民事上の過失相殺とは異なる仕組みが採られています。
そのため、
「自分にも少し過失があるから自賠責保険は使えない」
と自己判断しないことが大切です。
事故状況に応じて利用できる補償を確認しましょう。
任意保険未加入事故で治療を受ける流れ
相手が任意保険未加入だった場合でも、まず事故後の基本的な対応を行います。
事故発生
↓
負傷者の救護・安全確保
↓
警察へ届け出る
↓
相手の自賠責保険加入状況を確認
↓
身体に症状があれば医療機関を受診
↓
自分の保険会社にも連絡
↓
自賠責保険への被害者請求などを検討
↓
必要に応じて健康保険・人身傷害保険などを利用
↓
自賠責を超える損害について加害者への請求を検討
という流れになります。
事故状況や加入している保険によって対応方法は変わるため、一つの方法だけで判断しないことが重要です。
相手が無保険だから治療を諦める必要はない
この記事で最も伝えたいポイントです。
交通事故の相手が任意保険に加入していなかったとしても、
自賠責保険
健康保険
自分の人身傷害保険
その他の保険
加害者本人への損害賠償請求
など、状況に応じて複数の方法を検討できます。
さらに相手が自賠責保険にも加入していない場合には、政府保障事業が利用できる可能性があります。
「相手が無保険だから治療できない」
と決めつけず、まず必要な治療を受け、利用できる制度を確認してください。
よくある質問
相手が任意保険に入っていなくても治療費は請求できますか?
相手車両が自賠責保険に加入しており、自賠責保険の対象となる人身事故であれば、治療関係費などを自賠責保険へ請求できる可能性があります。
自賠責保険はいくらまで補償されますか?
傷害による損害は被害者1人につき最高120万円です。死亡は最高3,000万円、後遺障害は等級に応じて最高4,000万円から75万円です。
120万円は治療費だけの上限ですか?
いいえ。傷害部分の120万円には、治療関係費だけでなく休業損害や慰謝料なども含まれます。
120万円を超えたらすべて自己負担ですか?
必ずしもそうではありません。加害者に損害賠償責任がある場合、自賠責保険の限度額を超える損害について加害者本人への請求が問題になります。また、自分の人身傷害保険などを利用できる可能性もあります。
交通事故でも健康保険を使えますか?
自動車事故など第三者の行為による傷病も医療保険給付の対象です。利用する場合は、加入している健康保険へ連絡して第三者行為による傷病届など必要な手続きを確認してください。
相手が自賠責保険にも入っていなかったらどうなりますか?
無保険車による事故で自賠責保険から救済を受けられない場合には、政府保障事業による救済を受けられる可能性があります。
ひき逃げで相手が分からなくても補償はありますか?
ひき逃げで加害者が不明の場合も、政府保障事業の対象となる可能性があります。
車の修理費も自賠責保険から出ますか?
出ません。自賠責保険は人身損害を対象とした制度で、車の修理費などの物損は対象外です。
まとめ
交通事故の相手が任意保険に加入していなくても、
「治療も補償も一切受けられない」
というわけではありません。
相手車両が自賠責保険に加入していれば、人身事故について自賠責保険へ請求できる可能性があります。
自賠責保険の支払限度額は、被害者1人につき、
傷害:最高120万円
死亡:最高3,000万円
後遺障害:等級に応じて最高4,000万円~75万円
です。
ただし、自賠責保険は基本的な被害者救済制度なので、すべての損害を補償するわけではありません。
そのため相手が任意保険未加入だった場合には、
自賠責保険への被害者請求
健康保険
自分の人身傷害保険
無保険車傷害保険
弁護士費用特約
加害者本人への損害賠償請求
など、利用できる方法を確認することが重要です。
また、相手が自賠責保険にも加入していない場合や、ひき逃げで加害者が分からない場合には、政府保障事業によって救済を受けられる可能性があります。
相手から「保険に入っていない」と言われても、その場で示談したり、治療を諦めたりしないでください。
警察へ事故を届け出て、身体に症状があれば医療機関を受診し、相手の自賠責保険と自分が加入している保険の両方を確認することが大切です。

