歩行者でも交通事故で悪くなる?歩行者の交通ルールと過失がつくケースを解説

「歩行者と車の事故なら、必ず車が100%悪い」

「歩行者は交通弱者だから、どんな横断をしても過失は0%」

このように思っている方もいるかもしれません。

確かに、横断歩道では歩行者が優先され、自動車などの運転者には歩行者の安全を守るための義務が定められています。

しかし、

歩行者だから交通ルールを守らなくてもよいわけではありません。

歩行者にも道路交通法で定められたルールがあり、赤信号を無視したり、車の直前・直後を横断したり、横断禁止場所を渡ったりした場合には、交通事故が発生した際に歩行者側の過失が問題になることがあります。

警察庁によると、令和3年から令和7年までの5年間に発生した自動車と歩行者の交通死亡事故4,158件のうち、約7割にあたる2,843件が歩行者の横断中に発生しています。

この記事では、歩行者が守らなければならない交通ルール、横断歩道での優先関係、歩行者にも過失が認められるケース、交通事故を防ぐためのポイントまで分かりやすく解説します。

歩行者は交通事故では必ず守られる?

まず知っておきたいのが、

「歩行者優先」と「歩行者は何をしても過失0%」は別の話

ということです。

例えば横断歩道では、横断している、または横断しようとしている歩行者がいる場合、自動車などは横断歩道の手前で一時停止し、歩行者の通行を妨げてはいけません。

道路交通法第38条で定められている重要な交通ルールです。

一方で、歩行者にも道路を横断するときのルールがあります。

そのため事故が発生した場合、

「歩行者だった」

という理由だけで、必ず歩行者の過失が0になるとは限りません。

事故がどのような場所で、どのような状況で発生したのかによって判断されます。

横断歩道は歩行者が優先

歩行者が最も覚えておきたいのが、横断歩道でのルールです。

信号機のない横断歩道でも、

横断しようとしている歩行者がいれば歩行者が優先

です。

車両等は横断歩道へ接近するとき、横断する歩行者等がいないことが明らかな場合を除き、横断歩道の直前で停止できるような速度で進行しなければなりません。

さらに、歩行者が横断している、または横断しようとしている場合には一時停止して、その通行を妨げてはいけません。

つまり、

「車が来ているから歩行者が待つ」

ことが本来のルールではありません。

横断歩道の手前に停止車両がある場合にも注意

運転者側にも重要なルールがあります。

横断歩道やその手前で車が停止している場合、その車の横を通って前へ出る前には一時停止しなければなりません。

停止している車の陰から歩行者が横断してくる可能性があるためです。

歩行者側も、

「1台止まってくれたから反対車線も大丈夫」

と思い込まないことが大切です。

横断歩道でも左右の安全を確認してから横断しましょう。

歩行者にも守らなければならない交通ルールがある

歩行者は車両の運転者とは異なりますが、道路交通法上のルールがあります。

特に事故につながりやすいのが道路の横断です。

信号を守る

歩行者も信号機の表示に従う必要があります。

赤信号で道路を横断してはいけません。

また、青信号だからといって、

「絶対に車が来ない」

とは限りません。

右左折してくる車や自転車などにも注意しましょう。

横断歩道が近くにある場合は横断歩道を利用する

道路交通法では、横断歩道がある場所の付近では、その横断歩道によって道路を横断することが求められています。

「目的地が道路の反対側だから」

「横断歩道まで行くのが面倒だから」

という理由で、安易に道路を横切らないことが重要です。

車の直前・直後を横断してはいけない

特に危険なのが、

走行している車の直前や直後を横断する行為

です。

道路交通法第13条では、原則として車両等の直前または直後で道路を横断してはならないと定められています。

例えば、

「まだ車まで距離があるから渡れる」

と思って横断を開始しても、自動車はすぐには停止できません。

また、停車中のバスやトラックなど大型車の直後から道路へ出ると、反対方向から来る車から歩行者が見えないことがあります。

歩行者側から車が見えていても、

車の運転者から自分が見えているとは限らない

ということを覚えておきましょう。

横断禁止場所では道路を横断しない

道路標識などによって歩行者の横断が禁止されている場所では、道路を横断してはいけません。

警察庁も、

車両等の直前・直後の横断

横断禁止場所での横断

横断歩道以外での危険な横断

などに注意するよう呼びかけています。

斜め横断にも注意

道路を斜めに横断すると、まっすぐ横断する場合より車道上にいる時間が長くなります。

また、運転者から歩行者の進行方向を予測しにくくなる可能性があります。

道路標識などによって斜め横断が認められている交差点を除き、危険な斜め横断は避けましょう。

歩道がない道路ではどちら側を歩く?

ここは現在の記事で修正した方がよい重要な部分です。

現在の記事には、

「歩道がない道路では道路の端(左側)を歩かなくてはいけません」

と記載されています。

これは逆です。

歩道や十分な幅の路側帯がない道路では、原則として道路の右側端に寄って通行します。

いわゆる、

「歩行者は右側、車は左側」

という基本です。

ただし、道路の右側端を通行することが危険な場合など、例外もあります。

現在の記事の「左側」は削除・修正してください。

「歩道は右側通行」という記載も修正する

現在の記事には、

「基本的に歩道は右側通行」

という記載もあります。

これも、「歩道では必ず右側を歩かなければならない」という意味ではありません。

道路の右側端通行の原則と、歩道上の通行を混同しないことが重要です。

歩道では周囲の歩行者や自転車などに注意し、安全に通行しましょう。

自転車を押して歩いている場合は?

自転車は道路交通法上、軽車両です。

しかし、自転車から降りて押して歩いている場合は、原則として歩行者として扱われます。

ただし、側車付きのものなど一定の例外があります。

「自転車に乗っている状態」と「自転車を押して歩いている状態」では交通ルールが変わることを覚えておきましょう。

歩行者でも交通事故で過失がつくことはある?

あります。

自動車と歩行者では身体への被害が大きくなりやすい歩行者を保護する必要がありますが、

歩行者だから必ず過失0%になるわけではありません。

例えば、

赤信号で横断した

横断禁止場所を横断した

車の直前へ飛び出した

横断歩道以外を横断した

危険な斜め横断をした

など、歩行者側の行動が事故発生に影響している場合には、過失が問題になる可能性があります。

「歩行者なら何をしても車が100%悪い」は間違い

交通事故の過失割合は、

事故の発生場所

横断歩道の有無

信号の有無

信号の表示

歩行者が横断を開始したタイミング

自動車の速度

道路の見通し

昼間か夜間か

歩行者の年齢

双方が事故を回避できた可能性

など、具体的な事故状況から判断されます。

したがって、

「歩行者対車=必ず0対100」

という考え方は適切ではありません。

横断歩道以外で事故が多く発生している

警察庁のデータを見ると、道路を横断するときに横断歩道を利用することの重要性が分かります。

令和3年から令和7年までの5年間に発生した自動車対歩行者の交通死亡事故は4,158件でした。

そのうち約7割の2,843件が、歩行者が道路を横断しているときに発生しています。

さらに横断中の事故の約6割にあたる1,784件は、横断歩道以外を横断しているときに発生しています。

そして、その中の約7割では、走行中の自動車の直前・直後を横断するなど、歩行者側にも法令違反がありました。

「車が止まってくれるだろう」

ではなく、安全な場所で横断することが重要です。

歩きスマホにも注意

現在では、歩行中にスマートフォンを見ることも事故につながる危険な行動の一つです。

スマートフォンを見ながら歩くと、

信号を見落とす

車の接近に気付くのが遅れる

自転車に気付かない

他の歩行者とぶつかる

交差点へそのまま進入する

などの危険があります。

特に道路を横断するときはスマートフォンから目を離し、周囲の交通状況を確認しましょう。

なお、歩きスマホについては別記事で詳しく解説しているため、このページでは深掘りしすぎない構成がおすすめです。

スマホを見ながら歩くと危険!歩行者による交通事故の実態とリスクを解説

イヤホンをしながら歩く場合にも注意

イヤホンやヘッドフォンを使用すると、車の走行音やクラクション、自転車のベルなどに気付くのが遅れる可能性があります。

特に、

スマホを見ながらイヤホンを使用する

ノイズキャンセリングを使用する

大音量で音楽を聴く

といった状態では、周囲の状況を把握しにくくなる可能性があります。

道路を横断するときは目視による安全確認を徹底しましょう。

夜間の歩行は「車から見えている」と思わない

夜間の交通事故では、

歩行者が車を確認できていても、運転者が歩行者を確認できているとは限りません。

特に、

黒っぽい服装

街灯の少ない道路

雨天

夕暮れ時

対向車のライトがまぶしい状況

などでは、歩行者の発見が遅れる可能性があります。

夜間に歩く場合は明るい色の服装や反射材などを活用し、自分の存在を運転者から認識してもらう工夫も大切です。

子どもの飛び出しに注意

子どもは大人と比べて、

車との距離

車の速度

危険が迫っている状況

などを正確に判断できないことがあります。

また、

友達を追いかける

ボールを追いかける

道路の反対側に家族を見つける

など、興味のあるものへ突然走り出すこともあります。

保護者は、

「車が来ていないから渡る」

だけではなく、

「横断歩道で止まる→左右を見る→車が止まったことを確認する→横断中も周囲を見る」

という習慣を繰り返し教えることが重要です。

高齢者は横断時間にも注意する

高齢になると、

歩行速度が遅くなる

左右確認に時間がかかる

車との距離や速度を判断しにくくなる

暗い場所で周囲を確認しにくくなる

などの変化が起こる場合があります。

「以前は渡れた距離だから今回も大丈夫」

と考えず、十分な余裕を持って横断しましょう。

歩行者が交通事故に遭ったらどうする?

どれだけ注意していても交通事故に遭う可能性を完全になくすことはできません。

事故に遭った場合には、まず安全を確保してください。

そして、

警察への届出

相手の氏名・連絡先の確認

車両ナンバーの確認

保険会社の確認

事故現場の写真

目撃者の確認

などを行います。

ケガをしている場合や身体に異常がある場合は、必要に応じて救急車を要請してください。

事故直後に痛くなくても注意する

歩行者と自動車の事故では、身体が直接大きな衝撃を受ける可能性があります。

事故直後には興奮や緊張などから、

「たいしたことはない」

と感じることもあります。

しかし、その後に、

首の痛み

腰痛

頭痛

手足のしびれ

めまい

吐き気

関節の痛み

などが現れることがあります。

症状がある場合は自己判断で放置せず、医療機関を受診してください。

過失割合に納得できない場合はどうする?

例えば、

「自分は歩行者なのに過失があると言われた」

「保険会社から提示された過失割合に納得できない」

という場合もあります。

この場合、

「歩行者だから0%のはず」

と主張するだけではなく、

事故現場

信号

横断歩道

車両の速度

ドライブレコーダー

防犯カメラ

目撃者

事故直後の写真

など、事故状況を確認することが重要です。

過失割合は具体的な事故状況によって変わるため、分からない場合は保険会社や交通事故に詳しい専門家などへ相談することも検討しましょう。

歩行者が交通事故を防ぐための7つのポイント

歩行者も日頃から次のポイントを意識しましょう。

1.横断歩道を利用する

近くに横断歩道がある場合は、面倒でも横断歩道まで移動しましょう。

2.信号を守る

車が来ていないように見えても赤信号で横断しないようにします。

3.車の直前・直後を横断しない

特にバスやトラックなど、大きな車両の陰から道路へ出る行為は危険です。

4.左右を確認する

横断歩道でも「車が止まるはず」と思わず、安全を確認します。

5.歩きスマホをしない

スマートフォンを見る必要がある場合は、安全な場所で立ち止まりましょう。

6.夜間は自分を目立たせる

明るい色の服装や反射材などを活用します。

7.車が自分に気付いているか確認する

歩行者から車が見えていても、運転者から歩行者が見えているとは限りません。

よくある質問

歩行者と車の事故では必ず車が100%悪くなりますか?

必ずではありません。横断歩道の有無、信号、歩行者の横断方法、自動車の速度など具体的な事故状況によって歩行者にも過失が認められる場合があります。

横断歩道では歩行者が優先ですか?

はい。横断している、または横断しようとしている歩行者がいる場合、車両等は横断歩道の手前で一時停止し、その通行を妨げてはいけません。

車が来ていなければ横断歩道以外を渡ってもいいですか?

近くに横断歩道がある場合には、その横断歩道を利用する必要があります。また、車両等の直前・直後の横断や横断禁止場所での横断は禁止されています。

歩道がない道路では右と左のどちらを歩きますか?

歩道や十分な幅の路側帯がない道路では、原則として道路の右側端に寄って通行します。ただし、右側端を通行することが危険な場合などには例外があります。

歩行者が赤信号で横断して事故になった場合も車が悪いですか?

歩行者が赤信号を無視したからといって、自動車側の責任が必ずなくなるわけではありません。一方、歩行者側の信号無視は過失割合を判断するうえで重要な要素になる可能性があります。

歩行者にも過失割合がつくことがありますか?

あります。赤信号での横断、車の直前・直後の横断、横断禁止場所での横断など、歩行者側の行動が事故発生に影響している場合には過失が認められることがあります。

自転車を押して歩いている場合は歩行者ですか?

一般的な自転車から降りて押して歩いている場合は、原則として歩行者として扱われます。ただし一定の例外があります。

まとめ

交通事故では歩行者が身体的に大きな被害を受けやすいため、道路交通法では歩行者を保護するためのさまざまなルールが定められています。

代表的なのが横断歩道での歩行者優先です。

横断している、または横断しようとしている歩行者がいる場合、自動車などは一時停止して歩行者の通行を妨げてはいけません。

しかし、

「歩行者優先=歩行者は何をしてもいい」

という意味ではありません。

歩行者にも、

信号を守る

横断歩道を利用する

車の直前・直後を横断しない

横断禁止場所を渡らない

といった交通ルールがあります。

実際、警察庁の令和3~7年の統計では、自動車対歩行者の交通死亡事故4,158件の約7割が歩行者の横断中に発生しています。さらに横断中の事故の約6割は横断歩道以外で発生し、そのうち約7割では車の直前・直後を横断するなど歩行者側にも法令違反がありました。

交通事故を防ぐためには、

「歩行者だから車が止まってくれる」

ではなく、

「歩行者も交通ルールを守り、自分の安全を確認して道路を利用する」

という意識が重要です。

そして交通事故に遭ってしまった場合、歩行者だから必ず過失0%とは限りません。

事故場所、信号、横断方法、車の速度など具体的な事故状況を確認したうえで判断する必要があります。