交通事故後のショックで眠れない・運転が怖い…精神的な症状とPTSD・対処法を解説

交通事故に遭った後、

「事故の場面が何度も頭に浮かんでくる」

「車に乗るのが怖くなった」

「夜になると事故を思い出して眠れない」

「後ろから車が近づいてくるだけで怖い」

「ちょっとした音にもビクッとしてしまう」

「事故から時間が経ったのに気持ちが落ち着かない」

といった変化が現れることがあります。

交通事故では、首や腰の痛み、骨折、打撲など身体のケガに目が向きがちですが、突然強い衝撃や生命の危険を感じる経験をしたことで、心にも大きな影響が生じることがあります。

警察庁の交通事故被害者支援資料でも、交通事故で重傷を負ったり家族が事故で亡くなったりすることは大きな精神的苦痛をもたらし、その後さまざまな精神的反応が現れることがあると説明されています。

ただし、事故後に不安や恐怖を感じたからといって、すぐに「PTSDになった」と考える必要はありません。

事故直後の精神的な変化の多くは、強い出来事を経験した後に起こり得る反応です。

重要なのは、症状が強い、長く続く、仕事や学校、運転、家事など日常生活に支障が出ている場合に、一人で抱え込まず専門家へ相談することです。

この記事では、交通事故後に起こる精神的ショックの症状、急性ストレス反応・急性ストレス障害(ASD)・PTSDとの違い、運転への恐怖や不眠への対応、医療機関を受診する目安まで分かりやすく解説します。

交通事故後に精神的なショックを受けるのは珍しいことではない

交通事故は予測できないタイミングで突然発生します。

例えば信号待ちをしているときに後ろから追突されれば、

「何が起きたのか分からない」

という状態になることがあります。

重大な事故では、

「死ぬかもしれない」

「家族が大変なことになるかもしれない」

という強い恐怖を感じることもあるでしょう。

事故が終わった後も脳や身体が危険に対して敏感な状態となり、さまざまな精神的反応が現れる場合があります。

警察庁の資料では、交通事故後にみられる反応として、否認、怒り、無力感、自責感、睡眠障害、事故場面の想起、過敏さ、集中力低下などが挙げられています。

交通事故後によくみられる精神的な変化

事故後の反応には個人差があります。

代表的なものを見てみましょう。

事故の場面を何度も思い出す

事故の瞬間が突然頭に浮かんだり、夢に出てきたりすることがあります。

例えば、

追突された瞬間

衝突音

相手の車が近づいてきた場面

救急車で運ばれた場面

などが繰り返し思い出されることがあります。

車に乗るのが怖くなる

事故後、

運転席に座れない

助手席でも怖い

後ろから車が近づくと緊張する

事故現場を通れない

高速道路を走れない

といった反応が現れることがあります。

眠れなくなる

事故後は、

寝つけない

途中で目が覚める

事故の夢を見る

朝早く目覚める

など睡眠に変化が生じることがあります。

厚生労働省の「こころの耳」でも、PTSDでは恐怖感、無気力、睡眠障害、悪夢などの症状が現れることがあると説明されています。

ちょっとした音に驚く

車のブレーキ音やクラクションだけでなく、ドアが閉まる音などに強く反応してしまうことがあります。

身体が事故の危険を覚えているため、以前なら気にならなかった刺激に敏感になる場合があります。

イライラする

事故後から、

些細なことで怒ってしまう

家族に強く当たってしまう

落ち着かない

常に緊張している

といった変化が起こることもあります。

集中できなくなる

仕事をしていても事故のことを考えてしまう

文章を読んでも頭に入らない

ミスが増えた

忘れっぽくなった

など、集中力に影響する場合があります。

事故直後の精神的反応=PTSDではない

ここは非常に重要です。

交通事故後に、

怖い

眠れない

事故を思い出す

車に乗りたくない

と感じたからといって、直ちにPTSDというわけではありません。

警察庁の資料では、交通事故後の精神的反応の多くは、事故という強い出来事を経験した場合に起こり得る反応であり、時間の経過とともに回復していくものも多いと説明されています。

そのため、自分だけがおかしくなったと決めつける必要はありません。

一方で、症状が非常に強い場合や日常生活に支障が出ている場合には、医療機関への相談が必要になることがあります。

急性ストレス反応とは?

事故や災害など強い出来事の直後には、一時的に強い精神的・身体的反応が現れることがあります。

例えば、

不安

恐怖

動悸

発汗

眠れない

事故のことばかり考える

ぼんやりする

集中できない

などです。

事故直後にこのような変化があっても、すべてが精神疾患を意味するわけではありません。

急性ストレス障害(ASD)とは?

強いトラウマ体験の後に一定の症状が現れ、生活に大きな影響を及ぼしている場合には、急性ストレス障害(ASD)が問題になることがあります。

警察庁の資料では、ASDでみられる特徴として、

侵入・再体験

回避

過覚醒

解離症状

などが説明されています。

解離症状では、

現実感がない

自分が自分ではないように感じる

感情が麻痺したようになる

事故の一部を思い出せない

ぼーっとして集中できない

といった状態がみられる場合があります。

ASDになったら必ずPTSDになる?

いいえ。

ASDがあるから必ずPTSDになるわけではありません。

ここは現在の記事から修正したい重要ポイントです。

警察庁の資料でも、ASDを発症した場合に必ずPTSDを発症するわけではないと説明されています。

そのため、

「事故後にショック症状が出た→放置するとPTSDになる」

と単純に考えるのは適切ではありません。

ただし、症状が強い場合には経過を注意深くみていく必要があります。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは?

PTSDは、生命の危険を感じるような出来事など強い精神的衝撃を経験した後に生じることがある精神疾患です。

厚生労働省はPTSDについて、強烈な精神的衝撃を受けた後に、長期にわたり恐怖感、無気力、睡眠障害、悪夢などさまざまな症状を示す障害と説明しています。

交通事故も原因となる可能性があります。

PTSDでみられる主な症状

症状は一人ひとり異なりますが、代表的なものとして次のような変化があります。

事故を再体験する

事故場面が突然頭に浮かぶ

事故の夢を見る

事故を思い出すと強い恐怖を感じる

などです。

事故を思い出すものを避ける

事故現場を通らない

車を運転しない

事故の話をしたくない

事故関連のニュースを避ける

などです。

考え方や感情が変化する

事故後から、

自分を責める

気持ちが沈む

以前好きだったことを楽しめない

周囲から距離を置く

などの変化が現れる場合があります。

常に緊張している

些細な音に驚く

周囲を警戒する

イライラする

眠れない

集中できない

などの状態が続くことがあります。

事故から時間が経ってから症状が出ることもある

「事故直後は大丈夫だったから心の問題ではない」

とは限りません。

厚生労働省は、PTSDについて数週から数か月の潜伏期間がある場合もあると説明しています。

事故直後は、

警察への対応

病院受診

保険会社との連絡

車の修理

仕事への連絡

などに追われ、精神的な変化に気づかないこともあります。

少し生活が落ち着いてから、

「最近眠れない」

「車に乗ると怖い」

「事故の夢を見るようになった」

と気づくケースも考えられます。

交通事故後に運転するのが怖い

交通事故後の悩みとして多いのが、車に対する恐怖です。

特に追突事故では、

バックミラーに車が映る

信号待ちをする

後ろから大型車が近づく

ブレーキ音が聞こえる

といった状況が事故の記憶と結びつくことがあります。

無理に、

「怖がっていたらダメだから今日から普通に運転しよう」

と考える必要はありません。

恐怖が非常に強い場合には専門家へ相談しながら対応することが大切です。

助手席でも怖くなることがある

自分が運転していなくても、

急ブレーキ

車線変更

交差点

高速道路

大型トラック

などに強い恐怖を感じる場合があります。

事故時に助手席や後部座席に乗っていた人にも精神的な影響が生じる可能性があります。

子どもにも精神的な変化が現れることがある

事故車両に子どもが乗っていた場合にも注意が必要です。

子どもは大人のように、

「事故が怖かった」

「フラッシュバックしている」

と上手に説明できないことがあります。

事故後に、

夜泣きが増えた

一人で眠れなくなった

車に乗りたがらない

親から離れなくなった

怒りっぽくなった

学校・園へ行きたがらない

など、以前と違う変化がみられた場合には注意して経過をみましょう。

家族を交通事故で亡くした場合

死亡事故では、事故を直接経験した人だけでなく遺族にも非常に大きな精神的影響が生じます。

警察庁の交通事故被害者支援資料でも、突然家族を失った場合にはショック、悲しみ、喪失感など強い精神的反応が起こり得ることが説明されています。

悲しみ方や回復までの時間には大きな個人差があります。

周囲が、

「いつまでも考えない方がいい」

「早く元気にならないと」

などと回復を急がせないことも重要です。

どのような場合に医療機関へ相談した方がいい?

事故後の反応には個人差があるため、

「○日続いたら必ず受診」

と単純には決められません。

ただし、

眠れない状態が続いている

悪夢を繰り返す

事故場面が頻繁によみがえる

車に乗れず生活や仕事に支障がある

仕事・学校へ行けない

食欲が大きく低下した

強い不安が続いている

集中できず日常生活に影響している

気分の落ち込みが強い

などの場合には、専門家への相談を検討しましょう。

警察庁の資料でも、精神的反応による苦痛が強く、社会生活や日常生活に支障をきたす場合には医療が必要なレベルと判断されると説明されています。

何科へ行けばいい?

交通事故後の精神的な症状については、

精神科

心療内科

などへの相談を検討します。

すでに整形外科などへ通院している場合には、

「事故後から眠れない」

「車に乗ると強い恐怖がある」

「事故場面を何度も思い出す」

などの症状について主治医へ相談する方法もあります。

必要に応じて適切な診療科を案内してもらえる場合があります。

身体の症状と心の症状を分けすぎない

交通事故後には、

首が痛い

頭痛がする

めまいがする

眠れない

不安が強い

疲れやすい

集中できない

といった症状が重なっている場合があります。

身体的な原因によって生じる症状もあるため、

「全部ストレスだから」

と自己判断するのは避けましょう。

身体症状について必要な診察・検査を受けながら、精神的な症状についても医師へ伝えることが大切です。

交通事故後の精神的負担を軽くするためにできること

まずは生活リズムを大きく崩さないようにしましょう。

睡眠

食事

休息

など基本的な生活を整えることが重要です。

また、信頼できる家族や友人へ、

「車に乗るのが怖い」

「夜眠れない」

「事故のことを何度も思い出す」

と伝えるだけでも、自分の状態を周囲に理解してもらいやすくなります。

無理に事故について話す必要はない

「事故について全部話せば楽になる」

とは限りません。

本人が話したくないのに、周囲が何度も事故の状況を聞き出すことが負担になる場合もあります。

話したいときに安心できる相手へ話す、必要であれば専門家へ相談するという形で構いません。

無理に事故を忘れようとしない

「早く忘れないと」

「考えてはいけない」

と無理に抑え込もうとして、それ自体が負担になることがあります。

事故後の反応には個人差があります。

焦って事故前とまったく同じ状態へ戻ろうとする必要はありません。

交通事故後の精神症状も記録しておく

事故後に精神的な症状がある場合には、簡単な記録を残しておくと自分の状態を把握しやすくなります。

例えば、

8月20日
夜中に2回目が覚めた
事故の夢を見た
運転はできなかった

8月21日
助手席には乗れた
交差点で強い不安あり

といった程度でも構いません。

受診することになった場合にも、症状の経過を医師へ説明しやすくなります。

交通事故による精神的苦痛と慰謝料

交通事故の被害者には、身体的・精神的な損害について慰謝料が問題になる場合があります。

ただし、

「事故で怖い思いをした=PTSD分の慰謝料が必ず追加される」

という単純な仕組みではありません。

精神疾患について別途損害賠償上の問題となる場合には、

医師による診断

治療内容

通院期間

事故との因果関係

日常生活や仕事への影響

などが重要になります。

そのため、症状が強い場合には損害賠償だけを目的にするのではなく、まず適切な医療につながることが重要です。

警察による被害者支援を利用できる場合もある

国土交通省は、警察における交通事故被害者等への支援として、

相談窓口

カウンセリングに関する専門職員

精神科医・民間カウンセラーとの連携

カウンセリング費用の公費負担制度

などを案内しています。

ただし、利用できる支援は事故の状況などによって異なります。

詳しくは事故を取り扱った警察署などへ確認してください。

家族はどう接すればいい?

家族から見ると、

「事故からもう1か月経っているのに」

「ケガは治っているのに」

と思うことがあるかもしれません。

しかし、身体の回復と精神面の回復が同じ速度で進むとは限りません。

本人が車を怖がっている場合に、

「大丈夫だから乗ってみなよ」

と無理に勧めるより、

「まだ怖いんだね」

と現在の状態を理解し、必要なら専門家への相談を勧める方がよいでしょう。

よくある質問

交通事故後に眠れなくなることはありますか?

あります。交通事故後には睡眠障害、事故場面の想起、過敏さなどの精神的反応が現れることがあります。症状が強い場合や長く続き日常生活に支障がある場合には医療機関へ相談しましょう。

事故後に車を運転するのが怖くなりました。おかしいのでしょうか?

事故後に事故を思い出す場所や状況を避けたり、車への恐怖が生じたりすることがあります。事故後の反応には個人差がありますが、仕事や日常生活に大きな支障がある場合には専門家への相談を検討してください。

事故の場面を何度も思い出すのはPTSDですか?

事故場面が繰り返し浮かぶことはPTSDなどでみられる症状の一つですが、それだけでPTSDと判断することはできません。診断は医療機関で行われます。

交通事故直後のショックは自然に良くなりますか?

事故後にみられる精神的反応の多くは時間の経過とともに回復していきます。ただし、症状が強い場合や日常生活に支障をきたしている場合には医療機関への相談が必要になることがあります。

急性ストレス障害になると必ずPTSDになりますか?

いいえ。警察庁の資料でも、ASDを発症した人が必ずPTSDを発症するわけではないと説明されています。ただし、症状がある場合には経過を注意深くみていくことが重要です。

交通事故後の精神的症状は何科を受診すればいいですか?

精神科や心療内科への相談を検討できます。すでに交通事故のケガで医療機関へ通院している場合には、まず主治医へ精神的な症状について相談する方法もあります。

交通事故後の精神的苦痛も慰謝料の対象になりますか?

交通事故による精神的苦痛は慰謝料の問題になります。ただし、PTSDなど精神疾患について別途損害を主張する場合には、診断、治療経過、事故との因果関係、生活への影響などが重要になります。

まとめ

交通事故は身体だけでなく、心にも大きな影響を与えることがあります。

事故後に、

眠れない

事故の夢を見る

事故場面を何度も思い出す

車に乗るのが怖い

事故現場へ近づけない

ちょっとした音に驚く

イライラする

集中できない

気分が落ち込む

といった変化が現れることがあります。

しかし、事故後にこのような症状が出たからといって、すぐPTSDというわけではありません。

警察庁の資料でも、交通事故後の精神的反応の多くは強い出来事を経験した際に起こり得る反応であり、時間の経過とともに回復するものも多いとされています。

また、急性ストレス障害があるからといって、必ずPTSDになるわけでもありません。

一方、

症状が非常に強い

眠れない状態が続いている

車に乗れず仕事へ行けない

仕事・家事・学校など日常生活に影響している

といった場合には、一人で我慢せず医療機関へ相談しましょう。

交通事故後は身体のケガだけに目を向けるのではなく、心の変化についても適切に対応していくことが大切です。