
交通事故でケガをしたら相手の任意保険(対人賠償保険)から賠償金が支払われることが多いですが、ご自身の保険(人身傷害保険)からも補償を受けられることをご存知でしょうか?
「対人賠償保険で補償が受けられるのだから、人身傷害保険はいらない」
「人身傷害保険って、どのような保険なのかよく分からない」
このようにお考えの方もいらっしゃると思いますが、人身傷害保険には対人賠償保険にはないメリットがいくつもあります。
特に、車外での事故でも補償されるタイプに加入しておくと、大きなメリットが得られることがあります。
人身傷害保険とは
自動車保険の任意保険の特約で『人身傷害保険』というものがあります。人身傷害保険とはどのような保険なのか、どんな補償を受けられるのかについて、分かりやすく解説します。
自分のケガが補償されるもの
人身傷害保険とは、自動車保険の特約の一種で、自動車事故によって死傷した場合にご自身が加入している保険会社から保険金が支払われるものです。
自動車保険には、大きく分けて「身体の補償」と「物の補償」の2種類があり。さらに、それぞれについて「相手の損害を賠償するもの」と「自分の損害が補償されるもの」に分かれています。
この4種類の保険を整理すると、次の表のようになります。
人身損害 | 物損 | |
相手への賠償 | 対人賠償保険 | 対物賠償保険 |
自分への補償 | 人身傷害保険 | 車両保険 |
つまり、人身傷害保険は、自分のケガについて、自分の保険で補償してもらうものと考えていただくと分かりやすいでしょう。
受け取れる保険金
人身傷害保険を使った場合に受け取れる主な保険金は、以下のとおりです。
損害の程度 | 受け取れる保険金 |
ケガで入通院した場合 | ・治療費 ・入通院慰謝料 ・休業損害 等 |
後遺障害が残った場合 | ・後遺障害慰謝料 ・逸失利益 ・将来の介護費 等 |
死亡した場合 | ・死亡慰謝料 ・逸失利益 ・葬祭費 等 |
費目は対人賠償保険の場合と同じですが、過失割合にかかわらず、実損害額が、契約で設定した上限額の範囲内で支払われるのが人身傷害保険の特徴です。
人身傷害保険のメリット
対人賠償保険にはない、人身傷害保険のメリットは以下のとおりです。
過失相殺されない
第1のメリットは、保険金が支払われる際に過失相殺が行われないという点です。
例えば)交通事故で人身被害に遭って総額300万円の損害を受け 過失割合6:4の場合
・ご自身の過失4割
・加害者の過失6割
この場合、自分にも交通事故責任が4割あるため、総額300万円のうち4割の保険金が削減されます。
つまり「300万円×60%=180万円」しか賠償金を受け取ることができません。残りの120万円は自己負担となってしまいます。
しかし、人身傷害保険を使えば過失相殺が行われないので、300万円満額を受け取ることができます(上限額300万円以上で契約している場合)。
示談交渉が長引いてもすぐに保険金を受け取れる
第2のメリットは、すぐに保険金を受け取れるということです。
対人賠償保険では、加害者との示談が成立するまで賠償金を受け取ることができません。
対人賠償保険は、示談が成立するまでは加害者が支払うべき賠償金額が確定しないため、保険金が支払われないという性質があります。そのため、示談交渉が長引けば、いつまでも賠償金を受け取れないこともあります。
その点、人身傷害保険はご自身と保険会社との契約に基づいて保険金が支払われます。
そのため、加害者と示談が成立するかどうかとは無関係に、すぐに保険金を受け取ることが可能です。
相手の保険が使えないときでも補償が受けられる
交通事故の被害に遭っても、相手の保険が使えないケースは少なくありません。例えば、以下のようなケースです。
- 相手が無保険
- 相手が自分の保険を使おうとしない
- 相手が無過失を主張する
- ひき逃げなどで相手が不明
- 単独事故
これらの場合でも、人身傷害保険に加入していれば補償が受けられます。
使用しても等級が下がらない
以上のようにメリットが多い人身傷害保険ですが、自分の保険を使うと等級が下がり、翌年以降の保険料が上がるため、使いたくないという方も多いことでしょう。
しかし、人身傷害保険のみを使う場合には、ノンフリート等級が下がることはありません。
ただし、車両保険など他の保険も一緒に使った場合には、その影響でノンフリート等級が下がる可能性があります。その点にはご注意ください。
人身傷害保険の2つのタイプ
人身傷害保険には、以下の2種類のタイプがあります。
- 契約した車に乗車中の事故のみ補償されるタイプ
- 車外での事故も補償されるタイプ
交通事故は、必ずしもご自身の車を運転中に遭遇するものとは限りません。人身傷害保険に加入するなら、「車外での事故も補償されるタイプ」がおすすめです。
①契約した車に乗車中の事故のみ補償されるタイプ
このタイプは、契約している車に乗っている場合にのみ補償されます。
車外で歩行中や、契約車両以外の車に乗車中に起きた事故は補償の対象外となります。
保険料が安くなるというメリットはありますが、人身傷害保険を使える場面が限定されてしまいます。
②車外での事故も補償されるタイプ
このタイプは、契約している車以外での乗り物に関わる事故の場合も補償されます。
車外で歩行中や、契約車両以外の車に乗車中に起きた事故でケガをした場合にも補償が受けられます。
両者の違いをまとめると、次の表のようになります。
契約車に乗車中 | 歩行中や自転車に乗車中 | 他の車に乗車中 | |
①のタイプ | 〇 | × | × |
②のタイプ | 〇 | 〇 | 〇 |
ご自身の車に乗車中以外の事故でケガをしてしまうケースは、意外に多くあります。
- 犬を散歩中、車と接触して打撲した
- 自転車で走行中、車と衝突し、転倒して骨折した
- 友人の車やタクシー、バスに乗っていて事故に遭い、ケガをした
- 駅の改札の中のエスカレーターでつまずいてケガをした(改札の外は補償対象外)
他にもさまざまなケースがあるはずです。
人身傷害保険が使えるポイントは、「乗り物に関する事故」であるという点です。
実はこの補償がついているのにも関わらず、保険の内容を理解せず使っていない人も少なくないのが実状です。
人身傷害保険は、車外での事故も補償されるタイプに加入していれば、多くのケースで十分な補償を受けることが可能になります。
なお、人身傷害保険の詳細は保険会社によって異なります。加入する際や使用する際には、契約予定または契約中の保険会社のしおりや約款などを必ず確認しましょう。
人身傷害保険を使った通院
ケガをして病院や整骨院に通う場合、人身傷害保険を使えば、お会計の際、窓口での支払いはありません。
通院する際、通う病院または整骨院を保険会社に連絡を入れるだけで大丈夫です。
整骨院に通いたい場合は、保険会社から「まずは先に整形外科へ行ってください」と言われることもあります。
当院でも、整形外科で医師に診てもらい医学的診断をしてもらうことはその後の治療の面でも安心できるのでおすすめしています。
整骨院と整形外科では治療の仕方や、営業時間など何かと違ってきますので、ご自身が良いと感じるもの選ぶのが良いかと思います。
また、病院と整骨院、両方併用することも可能です。「時間的に整骨院が通いやすいけど、飲み薬も欲しい」など、自分のスタイルに合わせて治療院を選択してください。
まとめ
人身傷害保険は、乗り物に関する事故が補償対象です。
人身傷害保険に加入する際には、上限額をいくらに設定するかで悩む方も多いことでしょう。無制限に設定するに越したことはありませんが、それでは保険料が高くなってしまいます。
平均的には、3,000万円~5,000万円程度に設定している方が多いようです。実際にも、この程度の補償を受けることができれば、大半のケースで困ることはないと考えられます。
人身傷害保険のみを使った場合、等級が下がることはなく、翌年の保険料が上がらないのがメリットです。
人身傷害保険を使う場合には、一般的な交通事故同様、病院や整骨院で自己負担なしで治療が受けられます。