
交通事故によって父親や母親などを亡くした家庭では、大切な家族を失った悲しみに加えて、生活費や子どもの教育費など経済面で大きな不安を抱えることがあります。
「高校へ進学させたいけれど学費が心配」
「交通事故で親を亡くした子どもが利用できる支援制度はある?」
「道路厚生会という制度を聞いたけれど、誰が対象になる?」
このような場合に知っておきたい支援制度の一つが、一般財団法人 道路厚生会の交通遺児修学資金支援事業です。
ただし、交通事故で親を亡くしたすべての子どもが対象になる制度ではありません。
道路厚生会では、東日本高速道路株式会社・中日本高速道路株式会社・西日本高速道路株式会社が管理する道路で発生した交通事故によって亡くなった方の子どもで、経済的な理由から修学が困難な高校生等に対し、返済不要の修学資金を給付しています。
この記事では、道路厚生会とはどのような団体なのか、交通遺児修学資金の対象者、給付額、給付期間、卒業祝金、必要書類、他の奨学金との併用について分かりやすく解説します。
一般財団法人 道路厚生会とは?
一般財団法人 道路厚生会は、高速道路等の環境保全や交通安全に関する普及啓発、有料道路利用者の福祉、交通遺児への支援などを行っている団体です。
定款でも事業の一つとして、**「高速道路等上の事故による交通遺児への支援に関する事業」**が定められています。
交通事故被害者との関係で特に重要なのが、交通遺児修学資金支援事業です。
道路厚生会の交通遺児修学資金支援事業とは?
交通遺児修学資金支援事業は、高速道路での交通事故によって親などを亡くした子どもの修学を支援する制度です。
対象となるのは、東日本高速道路・中日本高速道路・西日本高速道路が管理する道路における交通事故で亡くなった方の子どものうち、経済的な理由によって修学が困難な高校生等です。
大きな特徴は、一般的な貸与型奨学金とは異なり、
返済する必要がない
ということです。
卒業後に返済しなければならない奨学金ではなく、一定の条件を満たした交通遺児に対して修学資金が「給付」されます。
交通事故ならすべて対象になるわけではない
ここは非常に重要です。
道路厚生会の交通遺児修学資金は、
「交通事故で親を亡くした子どもなら誰でも利用できる制度」
ではありません。
対象となる事故は、道路厚生会の公式案内では、
東日本高速道路株式会社
中日本高速道路株式会社
西日本高速道路株式会社
が管理する道路で発生した交通事故です。
そのため、一般道路で発生した交通事故などについては、この制度の対象になるとは限りません。
国土交通省の交通事故被害者向け案内でも、道路厚生会の制度について「対象:高速道路上事故、死亡、高校生等」として紹介されています。
自分のケースが対象になるか分からない場合は、道路厚生会へ直接確認しましょう。
どの学校に通っている子どもが対象?
道路厚生会では、次の学校に在学している子どもを給付対象としています。
・高等学校
・高等専門学校
・特別支援学校の高等部
・専修学校の高等課程
現在はまだ対象となる学校へ進学していない子どもについても、将来進学する場合には給付対象者として登録し、高等学校等への進学時に給付手続きの案内を受けられる仕組みがあります。
「まだ中学生だから関係ない」と判断せず、将来の進学に備えて制度を確認しておくとよいでしょう。
修学資金はいくらもらえる?
道路厚生会の交通遺児修学資金は、現在、
1人年間396,000円
です。
月額に換算すると33,000円に相当します。
ただし、初年度の申請が年度途中になった場合には、初年度分は月割りで給付されます。
給付額や条件は将来変更される可能性もあるため、実際に申請する際には道路厚生会の最新情報を確認してください。
修学資金は返済する必要がある?
道路厚生会の修学資金は返済不要です。
借りる奨学金ではなく、条件を満たした交通遺児へ給付される修学資金です。
交通事故によって家計状況が大きく変化した家庭にとって、卒業後の返済負担がないことは大きな特徴といえるでしょう。
何年間もらえる?
給付期間は、
申請した学年から卒業学年終了まで、最高3年間
となっています。
例えば高校1年生から対象となれば、一定の条件を満たしている間、高校卒業までの修学を支える制度として利用できます。
ただし、学校や申請時期などによって状況が異なる可能性があります。
実際の給付期間については申請時に確認してください。
卒業すると10万円の卒業祝金もある
道路厚生会では修学資金だけでなく、卒業祝金も設けています。
交通遺児修学資金の給付を受け、高等学校等を卒業した子どもには、
100,000円の卒業祝金
が給付されます。
修学期間中だけでなく、卒業という節目にも支援が行われていることが特徴です。
他の奨学金を利用していても申請できる?
道路厚生会の制度で非常に重要なポイントです。
道路厚生会は、他の団体などから奨学金や一時金の貸付・給付を受けている場合でも、交通遺児修学資金を給付すると案内しています。
そのため、
「すでに別の奨学金を利用しているから道路厚生会は使えない」
と自己判断する必要はありません。
国土交通省の交通事故被害者向け案内でも、他団体から奨学金や一時金の貸付・給付を受けている場合でも給付されることが紹介されています。
複数の支援制度を利用できる可能性があるため、利用条件をそれぞれ確認しましょう。
申請にはどんな書類が必要?
道路厚生会では、審査に必要な書類を具体的に公表しています。
主なものは次のとおりです。
・道路厚生会所定の修学資金申込書
・交通事故証明書の写し
・在学証明書
・戸籍謄本
・住民票
・養育者の経済状態を証明する書類
・養育の事実を確認できる書類
経済状態を証明する書類
養育者の経済状態を確認するため、
・所得税の納税証明書
・住民税の非課税証明書または課税証明書
・生活扶助受給証明書など
のうち、いずれかの書類が必要とされています。
親子関係を確認する書類
交通事故で亡くなった方と子どもの親子関係を確認するため、戸籍謄本も必要です。
さらに養育者と遺児の氏名が記載された住民票なども求められます。
必要書類には取得まで時間がかかるものもあるため、申請を考えている場合は早めに確認しておきましょう。
道路厚生会へ申請する前に確認したいこと
申請を検討している場合は、まず次の3点を確認すると分かりやすいでしょう。
事故が発生した道路
最初に確認したいのが事故現場です。
東日本高速道路・中日本高速道路・西日本高速道路が管理する道路での交通事故が対象とされています。
子どもの在学状況
高校、高等専門学校、特別支援学校高等部、専修学校高等課程などが対象です。
まだ進学前の場合についても登録制度が案内されています。
家庭の経済状況
この制度は、交通事故によって親などを亡くした子どものうち、経済的な理由から修学が困難な方を対象としています。
そのため、課税証明書など経済状態を確認するための書類が必要になります。
道路厚生会以外にも交通事故被害者の支援制度がある
道路厚生会の修学資金の対象にならなかった場合でも、交通事故被害者や交通遺児を支援する制度は他にもあります。
日本損害保険協会は、交通事故被害者の経済的支援を行う団体として、
・ナスバ(独立行政法人 自動車事故対策機構)
・公益財団法人 交通遺児等育成基金
・一般財団法人 道路厚生会
・日本司法支援センター(法テラス)
・公益財団法人 交通遺児育英会
などを紹介しています。
それぞれ対象者や支援内容が違うため、道路厚生会だけで判断せず、家庭の状況に合う制度を探すことが大切です。
交通遺児等育成基金との違い
道路厚生会と混同しやすい制度に、公益財団法人 交通遺児等育成基金があります。
交通遺児等育成基金では、損害賠償金などの一部を基金へ拠出し、国や民間からの援助金を加えて運用し、一定の条件のもとで交通遺児へ育成給付金を給付する事業などを行っています。
一方、道路厚生会では、高速道路上の対象となる事故で親などを亡くした高校生等へ、返済不要の修学資金を給付します。
制度の対象や仕組みが違うため、
「交通遺児向けの制度は全部同じ」
と考えないようにしましょう。
交通遺児育英会との違い
公益財団法人 交通遺児育英会も、交通事故によって保護者を亡くした子どもなどの進学を支援する団体です。
交通遺児育英会自身も、道路厚生会について、東日本・中日本・西日本高速道路が管理する道路で交通事故により亡くなった方の遺児で、経済的に修学が困難な高校生等を対象に修学資金援助を行っている団体として紹介しています。
対象条件や支援方法が異なるため、一つの制度だけでなく利用できる制度を比較してみることが重要です。
道路厚生会への問い合わせ方法
道路厚生会は、交通遺児修学資金について専用の問い合わせ先を案内しています。
一般財団法人 道路厚生会
交通遺児修学資金給付係
電話番号:03-6674-1761
受付時間:平日9時30分~12時、13時~17時
となっています。
申請できるか判断に迷う場合には、事故が発生した道路や現在の在学状況などを整理して問い合わせるとよいでしょう。
よくある質問
道路厚生会とは何をしている団体ですか?
高速道路等の環境保全、交通安全の普及啓発、有料道路利用者の福祉、交通遺児への支援などを行っている一般財団法人です。交通事故被害者との関係では、交通遺児修学資金支援事業を実施しています。
交通事故で親を亡くした子どもなら誰でも対象ですか?
いいえ。道路厚生会の交通遺児修学資金は、東日本高速道路・中日本高速道路・西日本高速道路が管理する道路での交通事故によって亡くなった方の子どもで、経済的理由から修学が困難な高校生等が対象です。
修学資金はいくらですか?
現在は1人年間396,000円です。年度途中からの申請の場合、初年度は月割額となります。
修学資金は返済する必要がありますか?
返済する必要はありません。道路厚生会の交通遺児修学資金は貸与ではなく給付です。
何年間給付されますか?
申請した学年から卒業学年終了まで、最高3年間です。
卒業祝金はありますか?
交通遺児修学資金の給付を受けて高等学校等を卒業した子どもには、10万円の卒業祝金が給付されます。
他の奨学金と併用できますか?
道路厚生会は、他団体などから奨学金や一時金の貸付・給付を受けている場合でも修学資金を給付すると案内しています。
中学生でも申請できますか?
現在は給付対象となる高等学校等へ進学していない子どもについて、将来進学する場合には給付対象者として登録し、進学時に給付手続きの案内を受けられる制度があります。詳しい条件は道路厚生会へ確認してください。
まとめ
交通事故によって親などを亡くした家庭では、悲しみだけでなく、その後の生活費や教育費について大きな不安を抱えることがあります。
そのような交通遺児の修学を支援する制度の一つが、一般財団法人 道路厚生会の交通遺児修学資金支援事業です。
対象となるのは、東日本高速道路・中日本高速道路・西日本高速道路が管理する道路での交通事故によって亡くなった方の子どもで、経済的な理由から修学が困難な高校生等です。
現在の制度では、
年間396,000円の修学資金
給付期間は最高3年間
返済不要
卒業時には100,000円の卒業祝金
という支援が設けられています。
さらに、他の団体から奨学金や一時金の貸付・給付を受けている場合でも利用できるとされています。
一方で、すべての交通事故が対象になるわけではありません。
事故が発生した道路や子どもの在学状況、家庭の経済状況などによって対象となるかが変わるため、該当する可能性がある場合は道路厚生会へ確認しましょう。
また、道路厚生会以外にも交通事故被害者や交通遺児を支援する制度があります。
一つの制度だけで諦めず、利用できる支援制度を確認することが大切です。

