電動スクーターと自転車の事故における過失割合と対応策を解説

電動スクーターや電動キックボードを利用する人が増える一方で、自転車や歩行者との接触事故も問題になっています。

特に注意したいのが、電動スクーターと自転車の事故です。

どちらも比較的小型で、車道や自転車道を走ることがありますが、道路交通法上の車両区分や保険の仕組みは同じではありません。

事故が起きたときには、

「電動スクーターと自転車ではどちらが悪いのか」

「過失割合は何対何になるのか」

「自賠責保険から治療費は支払われるのか」

「警察を呼ばずに示談してもよいのか」

といった問題が生じます。

電動スクーターと自転車の事故には、すべてのケースへ共通する固定の過失割合があるわけではありません。

信号、一時停止、進行方向、速度、走行場所、前方確認、スマートフォン操作などを確認し、事故ごとに判断されます。

この記事では、特定小型原動機付自転車に該当する電動キックボードを中心に、自転車との事故で考えられる過失割合、利用できる保険、事故直後の対応、治療や示談の注意点を解説します。

目次

電動スクーターと電動キックボードの呼び方

一般に「電動スクーター」「電動キックボード」と呼ばれる車両には、複数の種類があります。

見た目が似ていても、車体の性能によって道路交通法上の扱いが異なります。

主な区分は次のとおりです。

・特定小型原動機付自転車
・一般原動機付自転車
・自動車に該当する車両
・道路運送車両法の保安基準を満たさず、公道を走れない車両

この記事では、主に一定の基準を満たした「特定小型原動機付自転車」と自転車の事故について解説します。

特定小型原動機付自転車とは?

2023年7月1日に施行された改正道路交通法により、一定の基準を満たす電動キックボードなどは「特定小型原動機付自転車」として扱われるようになりました。

特定小型原動機付自転車に該当するには、主に次の基準を満たす必要があります。

・車体の長さが1.9メートル以下
・車体の幅が0.6メートル以下
・定格出力0.60キロワット以下の電動機を使用している
・時速20キロメートルを超える速度を出せない
・走行中に最高速度の設定を変更できない
・オートマチック機構である
・最高速度表示灯を備えている

これらの基準を満たす車両に限り、16歳以上であれば運転免許を持っていなくても運転できます。16歳未満の運転は禁止されています。

基準を満たさない車両は免許不要ではない

見た目が電動キックボードでも、最高速度や定格出力などの基準を満たさなければ、一般原動機付自転車や自動車として扱われる可能性があります。

その場合には、車両区分に応じた運転免許、ヘルメット、ナンバープレート、保安部品などが必要です。

インターネットで購入した電動キックボードのすべてが、免許不要で公道を走れるわけではありません。

車両区分が分からない場合は、販売元の説明だけで判断せず、性能等確認済シール、標識交付証明書、車両の仕様などを確認してください。

特定小型原付に必要な手続き

特定小型原動機付自転車を公道で使用するには、交通ルールだけでなく、車両に関する手続きも必要です。

・保安基準に適合した車両を使用する
・市区町村でナンバープレートの交付を受ける
・自賠責保険または自賠責共済へ加入する
・ナンバープレートを車体へ取り付ける
・自賠責保険の標章を表示する

特定小型原付にも、自動車や一般原付と同様に自賠責保険への加入が義務付けられています。

特定小型原付はどこを走る?

特定小型原動機付自転車は、原則として車道の左側を通行します。

自転車道が設けられている場合は、自転車道を通行できる場合があります。

歩道は自由に走れるわけではありません。

一定の要件を満たして「特例特定小型原動機付自転車」の状態に切り替え、特定小型原付・自転車通行可の標識がある歩道などに限って通行できます。

歩道を通行するときは、おおむね時速6キロメートル以下の速度に制御され、歩行者を優先しなければなりません。

歩行者の通行を妨げる場合は、一時停止する必要があります。

電動スクーターと自転車の事故ではどちらが悪い?

電動スクーターと自転車の事故では、単純に「電動スクーターの方が危険だから悪い」「免許不要だから自転車と同じ」と判断されるわけではありません。

事故当時の双方の運転方法を確認して過失割合が決められます。

主に確認される事情は次のとおりです。

・どちらに信号があったか
・どちらに一時停止義務があったか
・道路の優先関係
・交差点への進入時期
・右折と直進の関係
・どちらが逆走していたか
・歩道か車道か
・速度は適切だったか
・前方を確認していたか
・スマートフォンを操作していなかったか
・夜間にライトを点灯していたか
・酒気帯び運転ではなかったか
・急な進路変更をしていなかったか
・回避できる状況だったか

同じように見える事故でも、道路状況や違反の有無によって結果は変わります。

電動スクーターと自転車の過失割合に固定基準はある?

自動車同士の事故では、過去の裁判例などをもとにした過失割合の目安が広く使われています。

一方、特定小型原動機付自転車は2023年7月に新しい区分として制度化されたため、自転車との事故について十分に確立された基本過失割合がない類型もあります。

そのため、次の資料などを参考にしながら個別に検討されることがあります。

・道路交通法上の車両区分
・双方の交通規制
・自転車と原動機付自転車の事故類型
・自転車同士の事故類型
・過去の裁判例
・ドライブレコーダーや防犯カメラ
・実況見分や目撃者の証言

「電動スクーター対自転車なら必ず何対何」と決めつけることはできません。

信号のある交差点での事故

信号のある交差点では、信号を無視した側の過失が大きくなるのが基本です。

例えば、自転車が青信号で直進しているところへ、電動スクーターが赤信号を無視して進入した場合は、電動スクーター側の過失が大きくなる可能性があります。

反対に、自転車が赤信号を無視して進入した場合は、自転車側の過失が大きくなる可能性があります。

ただし、青信号側にも明らかな前方不注視や速度超過などがあれば、一定の過失が認められることがあります。

信号のない交差点での事故

信号のない交差点では、道路の幅、優先道路、一時停止規制、進入速度などを確認します。

一方に一時停止標識がある場合は、一時停止義務を守らなかった側の過失が大きくなる可能性があります。

ただし、優先側であっても、交差点では安全確認義務があります。

相手が一時停止しなかったという理由だけで、必ず過失がゼロになるとは限りません。

出会い頭事故

建物や塀で見通しの悪い交差点では、電動スクーターと自転車の出会い頭事故が起こりやすくなります。

この場合、次の点が重要です。

・一時停止規制の有無
・左右の道路幅
・双方の進入速度
・交差点の見通し
・減速していたか
・どちらが先に交差点へ入ったか
・右側または左側から進入したか

双方が減速せず交差点へ進入していれば、双方に過失が認められる可能性があります。

右折する電動スクーターと直進自転車の事故

交差点で右折する電動スクーターと、対向方向から直進する自転車が衝突した場合、一般的には右折側が直進車の進行を妨げないよう注意する必要があります。

そのため、右折した電動スクーター側の過失が大きくなる可能性があります。

一方、自転車側にも信号無視、速度の出し過ぎ、逆走、前方不注視などがあれば、過失割合が修正される可能性があります。

自転車が逆走していた場合

自転車は、原則として道路の左側を通行します。

自転車が道路の右側を逆走し、左側通行していた電動スクーターと衝突した場合、自転車側の逆走が過失として考慮される可能性があります。

ただし、電動スクーター側にも前方を確認すれば回避できた事情があれば、一定の過失が認められる可能性があります。

電動スクーターが逆走していた場合

特定小型原動機付自転車も、原則として車道の左側を通行しなければなりません。

電動スクーターが右側通行をして自転車と衝突した場合は、逆走した電動スクーター側の過失が大きくなる可能性があります。

自転車道や一方通行道路では、標識や道路表示も確認する必要があります。

歩道上での事故

歩道上で電動スクーターと自転車が衝突した場合は、双方がその歩道を通行できる状態だったかを確認します。

電動スクーターについては、特例特定小型原付として走行できる状態であり、通行可能な標識のある歩道だったかが重要です。

歩道を走行できない状態で進入していた場合は、電動スクーター側の通行区分違反が重く評価される可能性があります。

自転車も、歩道を通行できる条件が限られています。

歩道では歩行者優先であり、自転車と特例特定小型原付の双方に徐行や一時停止が求められます。

自転車道での事故

特定小型原動機付自転車は、自転車道を通行できる場合があります。

自転車道で衝突した場合は、進行方向、追い越し方法、進路変更、安全確認などが問題になります。

後方確認をせず急に進路変更した、並走中に相手側へ寄った、追い越す際の間隔が足りなかったなどの事情があれば、その行為をした側の過失が大きくなる可能性があります。

スマートフォンを操作していた場合

走行中にスマートフォンを操作し、画面を見ながら運転していた場合は、前方不注視として過失割合に影響する可能性があります。

電動スクーターだけでなく、自転車についても運転中のながらスマホは危険な違反行為です。

2024年11月1日からは、自転車運転中のながらスマホに対する罰則も強化されています。

また、2026年4月1日からは、16歳以上の自転車運転者による一定の交通違反について、交通反則通告制度、いわゆる青切符制度が適用されています。

酒気帯び運転だった場合

電動スクーターも自転車も、飲酒後に運転してはいけません。

飲酒運転が事故原因に関係していれば、民事上の過失割合だけでなく、刑事責任にも影響します。

特定小型原動機付自転車は原動機付自転車の一種であり、酒気帯び運転や酒酔い運転には道路交通法上の罰則が適用されます。

自転車についても、酒気帯び運転に罰則があります。

飲酒運転者に車両を提供した人や、酒類を提供した人などが処罰される可能性もあります。

無灯火や夜間の事故

夜間にライトを点灯していなかった場合は、相手から発見されにくくなります。

無灯火が事故の発生や回避の遅れに影響していれば、過失割合を修正する要素になる可能性があります。

特定小型原付には、前照灯、尾灯、制動灯、方向指示器など、保安基準に適合した装備が必要です。

シェアリングサービスを利用するときも、走行前にライトやブレーキが正常に作動するか確認してください。

ヘルメットを着用していなかった場合

特定小型原動機付自転車のヘルメット着用は努力義務です。

自転車についても、すべての年齢で乗車用ヘルメットの着用が努力義務となっています。

ヘルメットを着用していなかっただけで、衝突事故そのものの過失が直ちに大きくなるとは限りません。

ただし、頭部の被害がヘルメット着用によって軽減できたと認められるケースでは、損害額の判断に影響する可能性があります。

努力義務であっても、重大な頭部外傷を防ぐため積極的に着用しましょう。

電動スクーター側の過失が大きくなりやすい行為

次のような行為が事故原因となった場合、電動スクーター側の過失が大きくなる可能性があります。

・赤信号を無視した
・一時停止をしなかった
・車道を逆走した
・通行できない歩道を走った
・歩道で歩行者や自転車を優先しなかった
・最高速度を超える違法改造車を使用した
・スマートフォンを操作していた
・飲酒運転をしていた
・夜間に無灯火で走行した
・急な進路変更をした
・自賠責保険へ加入していなかった
・16歳未満で運転した

自賠責保険へ未加入であること自体が、衝突の過失割合を直接決めるわけではありません。

しかし、法律違反となるうえ、被害者への賠償資力を確保できない重大な問題になります。

自転車側の過失が大きくなりやすい行為

次のような行為が事故原因となった場合、自転車側の過失が大きくなる可能性があります。

・赤信号を無視した
・一時停止をしなかった
・道路の右側を逆走した
・スマートフォンを操作していた
・イヤホンなどで周囲の音が聞こえにくかった
・夜間に無灯火だった
・急に道路を横断した
・後方確認せず進路変更した
・酒気帯び運転をしていた
・歩道から車道へ急に飛び出した
・傘差し運転をしていた
・二人乗りをしていた

自転車も道路交通法上は軽車両です。

「自転車だから常に被害者になる」という考え方は正しくありません。

子どもや高齢者が運転していた場合

自転車の運転者が子どもや高齢者だった場合は、年齢や判断能力などが過失割合の修正要素になる可能性があります。

一方、特定小型原動機付自転車は16歳未満の運転が禁止されています。

16歳未満が電動スクーターを運転して事故を起こした場合は、本人だけでなく、車両を提供した人や保護者の責任が問題になる可能性があります。

電動スクーターの自賠責保険

特定小型原動機付自転車には、自賠責保険または自賠責共済への加入が義務付けられています。

自賠責保険は、電動スクーターの運転によって他人を死傷させた場合の対人損害を補償します。

被害者1人当たりの支払限度額は、次のとおりです。

・傷害による損害は最高120万円
・死亡による損害は最高3,000万円
・後遺障害による損害は等級に応じて75万円から4,000万円

後遺障害で常時介護が必要となる第1級の場合は、最高4,000万円です。

自賠責保険で補償されるもの

自賠責保険の傷害部分では、事故との関係や必要性が認められた範囲で、次のような損害が対象になります。

・治療費
・入院費
・通院交通費
・診断書などの文書料
・休業損害
・傷害慰謝料
・付添看護費

ただし、合計で傷害部分の限度額である120万円を超えれば、超過分は自賠責保険だけでは補償できません。

自賠責保険で補償されないもの

自賠責保険は人身事故の被害者救済を目的とする保険です。

次の損害は原則として対象外です。

・壊れた自転車の修理代
・スマートフォンや荷物の損害
・衣服の損害
・電動スクーター本体の修理代
・建物や塀などの物的損害
・加害者自身のケガ

自転車の修理代などは、電動スクーター側の任意保険や運転者本人へ請求することになります。

任意保険も確認する

自賠責保険は対人損害のみで、支払限度額があります。

そのため、電動スクーターを利用する場合は、任意保険への加入も重要です。

確認したい補償は次のとおりです。

・対人賠償責任保険
・対物賠償責任保険
・運転者自身の傷害保険
・搭乗者の傷害補償
・弁護士費用特約
・車両損害の補償
・示談交渉サービス

シェアリングサービスの場合は、運営会社が一定の保険へ加入していることがあります。

ただし、補償限度額、免責事項、利用規約違反時の取扱いなどは事業者によって異なります。

利用前にアプリや公式サイトで確認してください。

ファミリーバイク特約は使える?

自動車保険のファミリーバイク特約は、一般に一定の原動機付自転車による事故を補償する特約です。

ただし、特定小型原動機付自転車を補償対象に含むかどうかは、保険会社や契約約款によって異なります。

「原付だから必ずファミリーバイク特約が使える」と判断してはいけません。

電動スクーターを購入または利用する前に、保険会社へ次のように確認してください。

「この車両は特定小型原動機付自転車ですが、ファミリーバイク特約の補償対象ですか」

車両の型式、最高速度、定格出力、ナンバーの区分などを伝えると確認しやすくなります。

個人賠償責任保険は使える?

個人賠償責任保険は、日常生活で他人にケガをさせたり、他人の物を壊したりした場合に備える保険です。

自転車事故は補償対象になることがあります。

一方、原動機が付いた車両による事故は、一般に免責とされることがあります。

特定小型原動機付自転車の事故が対象になるかは、保険会社と契約約款によって異なります。

個人賠償責任特約へ加入していても、電動スクーター事故が補償されるとは限りません。

自転車側が利用できる保険

自転車の運転者が加害者になった場合は、次の保険が使える可能性があります。

・自転車保険
・個人賠償責任保険
・火災保険の個人賠償責任特約
・自動車保険の個人賠償責任特約
・クレジットカード付帯保険
・学校や勤務先の団体保険

自転車保険には、相手への賠償だけでなく、自分自身のケガを補償する傷害保険が付いていることもあります。

千葉県では、自転車利用者に自転車損害賠償保険等への加入が義務付けられています。

電動スクーター側が無保険だった場合

特定小型原動機付自転車が自賠責保険へ加入していなかった場合でも、運転者本人の賠償責任がなくなるわけではありません。

被害者は、治療費、休業損害、慰謝料などを運転者本人へ請求することになります。

自賠責保険に未加入の車両による人身事故では、一定の条件を満たせば政府保障事業による救済を受けられる可能性があります。

ただし、政府保障事業は物損を補償しません。

壊れた自転車やスマートフォンなどの損害は、加害者本人へ請求する必要があります。

事故直後に行うべきこと

電動スクーターと自転車が接触した場合は、ケガや車両の損傷が軽く見えても、その場で別れないでください。

次の順番で対応します。

1.安全な場所へ移動する

後続車との二次事故を防ぐため、可能な範囲で車道の端など安全な場所へ移動します。

ただし、重傷者がいる場合や首・背中の強い痛みがある場合は、無理に動かさず119番へ連絡してください。

2.負傷者を救護する

相手や自分にケガがないか確認します。

出血、意識障害、強い頭痛、手足のしびれ、歩行困難などがある場合は、救急車を呼んでください。

事故を起こした運転者には、負傷者を救護する義務があります。

ケガ人を置いたまま立ち去ると、ひき逃げとして刑事責任を問われる可能性があります。

3.警察へ連絡する

電動スクーターと自転車の事故でも、警察への報告が必要です。

相手から「大丈夫です」「警察は呼ばなくてよいです」と言われても、110番へ連絡してください。

警察へ届け出ていないと、交通事故証明書を取得できず、保険請求や事故状況の確認が難しくなる可能性があります。

4.相手の情報を確認する

次の内容を記録します。

・氏名
・住所
・電話番号
・車両の種類
・ナンバープレート
・自賠責保険会社
・任意保険会社
・シェアリング事業者名
・利用車両の識別番号

運転免許不要の特定小型原付では、相手が運転免許証を持っていない場合があります。

その場合でも、氏名や連絡先、車両情報を確認してください。

5.事故現場を撮影する

安全を確保したうえで、次の内容を写真や動画に残します。

・事故現場全体
・双方の車両位置
・車両の損傷箇所
・道路の幅
・信号や標識
・一時停止線
・自転車道や歩道の表示
・進行方向
・路面状況
・ブレーキ痕
・周辺の防犯カメラ
・相手車両のナンバー

車両を移動する前に撮影できる場合は、元の停止位置が分かるように記録します。

6.目撃者を探す

目撃者がいる場合は、氏名と連絡先を確認します。

事故当事者の説明が食い違ったときに、第三者の証言が重要になることがあります。

店舗やマンション、駅、駐車場などに防犯カメラがある場合は、その場所を警察へ伝えてください。

映像は一定期間で上書きされるため、早めの対応が必要です。

7.保険会社や運営会社へ連絡する

電動スクーターの所有者は、自賠責保険会社と任意保険会社へ連絡します。

シェアリングサービスを利用していた場合は、アプリや事故受付窓口から運営会社へ報告してください。

自転車側も、自転車保険や個人賠償責任保険へ加入している場合は連絡します。

事故後は早めに医療機関を受診する

事故直後に痛みが軽くても、数時間後や翌日以降に症状が現れることがあります。

電動スクーターや自転車は身体を守る車体がなく、転倒時に頭、首、肩、腰、手首、膝などを直接地面へ打ちつける可能性があります。

次のような症状がある場合は、早めに医療機関を受診してください。

・首や腰が痛い
・頭痛がある
・吐き気やめまいがある
・手足がしびれる
・肩や膝が動かしにくい
・手首をつくと痛い
・身体の一部が腫れている
・事故後から眠気やだるさが強い

頭を打った、意識を失った、繰り返し吐いている、手足に力が入らないなどの症状がある場合は、救急受診を優先してください。

物損事故から人身事故へ切り替える場合

事故直後に痛みがなく、警察では物損事故として処理された後に症状が現れることがあります。

その場合は、医療機関を受診して診断書を取得し、事故を届け出た警察署へ相談してください。

診断書を提出すれば必ず人身事故へ切り替わるとは限りません。

事故状況や提出時期などを警察が確認して判断します。

事故から受診まで長期間空くと、事故と症状の関係を説明しにくくなる可能性があるため、早めに受診しましょう。

治療費は誰が支払う?

電動スクーター側の過失が大きく、自転車側がケガをした場合は、原則として電動スクーター側が治療費などを賠償します。

電動スクーターの自賠責保険や任意保険から支払われることがあります。

双方に過失がある場合でも、自賠責保険の傷害部分では、被害者に重大な過失がある場合を除き、過失割合による厳密な減額をせずに支払われる仕組みがあります。

ただし、被害者側の過失が重大な場合は減額される可能性があります。

自転車側にも過失がある場合

自転車側にも信号無視や逆走などの過失がある場合は、最終的な損害賠償額から自転車側の過失割合に応じて減額されることがあります。

例えば、損害額が100万円で、自転車側の過失が30%と判断された場合、相手へ請求できる金額は原則として70万円が基準になります。

これを過失相殺と呼びます。

ただし、自賠責保険、任意保険、人身傷害保険などでは、それぞれ支払方法が異なることがあります。

請求できる可能性がある損害

人身事故では、事故との関係や必要性が認められれば、次の損害を請求できる可能性があります。

・治療費
・入院費
・通院交通費
・休業損害
・傷害慰謝料
・後遺障害による損害
・付添費用
・将来の介護費
・自転車や車両の修理費
・衣服やスマートフォンなどの物損

すべての費用が無条件に認められるわけではありません。

領収書、診断書、事故証明書、修理見積書などを保管してください。

休業損害

事故によるケガで仕事を休み、収入が減った場合は、休業損害を請求できる可能性があります。

会社員の場合は、勤務先に休業損害証明書を作成してもらうことがあります。

自営業者は、確定申告書や帳簿などを使って事故前の収入を証明します。

家事従事者についても、事故によって家事ができなかった程度に応じて休業損害が認められる可能性があります。

慰謝料

交通事故によってケガをした場合は、治療期間や通院状況などに応じて傷害慰謝料を請求できる可能性があります。

自賠責保険、任意保険、裁判で使われる基準では、算定方法が異なります。

通院回数を増やせば必ず慰謝料が高くなるわけではありません。

医師の指示と症状に合わせて、必要な頻度で通院することが大切です。

後遺障害が残った場合

治療を続けても症状が残り、医師が症状固定と判断した場合は、後遺障害等級の認定を申請できる可能性があります。

後遺障害が認定されると、等級に応じて次の損害を請求できることがあります。

・後遺障害慰謝料
・後遺障害による逸失利益
・将来の介護費
・装具や住宅改修費

症状が残っているだけで、自動的に後遺障害として認定されるわけではありません。

診断内容、検査結果、通院経過などをもとに審査されます。

自転車の修理代

電動スクーターとの事故で自転車が壊れた場合は、修理費または事故時点の自転車の価値を基準に損害額が判断されます。

古い自転車の場合、修理費が自転車の時価を上回ると、修理費全額が認められないことがあります。

購入時の領収書、車種、購入年月、修理見積書、事故前の写真などを用意してください。

シェアリング車両の修理代

シェアリングサービスの電動スクーターを壊した場合は、利用規約に基づいて修理費や休業損害などを請求される可能性があります。

事故が起きたら自己判断で返却せず、運営会社の事故受付窓口へ連絡してください。

規約違反、飲酒運転、無断利用などがある場合は、保険が適用されない可能性があります。

示談は治療が終わる前にしない

事故直後に相手から、

「修理代を払うので警察を呼ばないでほしい」

「これで終わりにしてほしい」

と現金を渡されることがあります。

しかし、事故直後には症状や損害の全体が分かりません。

治療が必要になる可能性や、後から自転車の修理費が判明する可能性があります。

安易に「今後一切請求しません」と書かれた示談書へ署名すると、後から追加請求できなくなるおそれがあります。

警察と保険会社へ連絡し、損害が確定する前に示談しないようにしてください。

過失割合に納得できない場合

保険会社から提示された過失割合に納得できない場合は、次の根拠を確認します。

・事故現場の図面
・道路標識や信号
・双方の進行方向
・道路交通法上の義務
・ドライブレコーダー映像
・防犯カメラ映像
・目撃者の証言
・実況見分調書
・参考にした裁判例や事故類型

「通常この割合です」とだけ説明された場合は、どの事故類型を参考にしたのか確認してください。

特定小型原付と自転車の事故では、確立した基準が少ない類型もあるため、個別事情が重要です。

弁護士へ相談した方がよいケース

次のような場合は、交通事故に詳しい弁護士へ相談することを検討してください。

・過失割合で大きく争っている
・重傷を負った
・後遺障害が残る可能性がある
・相手が無保険だった
・相手が事故状況を認めない
・保険会社から治療費の終了を伝えられた
・提示された示談金が妥当か分からない
・シェアリング事業者との規約上の問題がある
・刑事事件にもなっている

自動車保険、自転車保険、火災保険などに弁護士費用特約が付いている場合があります。

自分や同居家族の保険も確認してください。

刑事責任

電動スクーターや自転車の事故で相手にケガをさせた場合、事故状況によっては過失運転致傷などの刑事責任が問題になることがあります。

また、次の行為には個別の罰則があります。

・信号無視
・一時不停止
・酒気帯び運転
・酒酔い運転
・ながらスマホ
・無灯火
・救護義務違反
・事故不申告
・16歳未満による特定小型原付の運転
・通行区分違反

免許不要であることは、交通ルールや刑事責任がないという意味ではありません。

行政処分と違反点数の注意点

特定小型原動機付自転車は、16歳以上であれば運転免許なしで運転できます。

そのため、すべての違反について自動車免許の違反点数が一律に加算されるという説明は正確ではありません。

一方、交通違反には道路交通法上の罰則や交通反則通告制度が適用されることがあります。

悪質・危険な違反を繰り返す運転者には、特定小型原動機付自転車運転者講習を受けるよう命令される場合もあります。

東京都だけの独自制度として、信号無視は2点、速度超過は1点などとする一般的な「違法走行点数制度」は確認できません。

特定小型原付の事故は増えている?

特定小型原動機付自転車に関する交通事故は、制度開始後の利用拡大に伴って増加しています。

警察庁の2025年の交通事故統計では、特定小型原動機付自転車が第1当事者または第2当事者となった事故や、死亡・重傷事故について集計されています。死亡事故は2024年8月と2025年4月にも発生しています。

ただし、単純な件数だけでなく、車両の普及台数や走行回数も増えている点を考慮する必要があります。

古い半期データだけを使って「事故が何倍になった」と断定するより、最新の年間統計を確認することが重要です。

電動スクーターの安全対策

事故を防ぐために、次の対策を徹底してください。

・ヘルメットを着用する
・走行前にブレーキを確認する
・タイヤやハンドルの異常を確認する
・夜間はライトを点灯する
・車道の左側を通行する
・信号と一時停止を守る
・歩道を自由に走らない
・スマートフォンを操作しない
・イヤホンで周囲の音を遮らない
・飲酒後は絶対に運転しない
・二人乗りをしない
・雨天時は速度を落とす
・段差やマンホールを避ける
・自賠責保険の期限を確認する
・任意保険の補償対象を確認する

タイヤが小さい電動キックボードは、段差や路面の凹凸でバランスを崩すことがあります。

急ブレーキや急なハンドル操作を避け、十分な車間距離を確保しましょう。

自転車側の安全対策

自転車側も次のルールを守る必要があります。

・車道の左側を通行する
・交差点では左右を確認する
・一時停止標識を守る
・信号を守る
・夜間はライトを点灯する
・スマートフォンを操作しない
・飲酒運転をしない
・ヘルメットを着用する
・急な進路変更をしない
・自転車保険へ加入する

電動スクーターを「速度の遅い歩行者」のように考えず、車両同士として安全な間隔を取ることが大切です。

よくある質問

電動スクーターと自転車の事故では、どちらの過失が大きくなりますか?

固定された割合はありません。信号、一時停止、道路の優先関係、逆走、速度、前方不注視などを確認して事故ごとに判断されます。

電動スクーターの方が自転車より過失が大きくなりますか?

車両区分だけで決まるわけではありません。ただし、通行できない歩道を走った、信号を無視したなどの違反があれば、電動スクーター側の過失が大きくなる可能性があります。

自転車が逆走していた場合は自転車が100%悪くなりますか?

逆走は重大な判断要素ですが、電動スクーター側にも前方不注視や速度の出し過ぎがあれば、一定の過失が認められる可能性があります。

電動スクーターは自転車道を走れますか?

特定小型原動機付自転車は、自転車道を通行できる場合があります。標識や道路構造に従って通行してください。

電動スクーターは歩道を走れますか?

通常の状態では自由に歩道を走れません。特例特定小型原付の要件を満たす状態へ切り替え、通行可能な標識がある歩道などに限って通行できます。

歩道では自転車と電動スクーターのどちらが優先ですか?

歩道では歩行者が最優先です。自転車と特例特定小型原付の間では、固定的な優先関係ではなく、通行位置や事故状況、安全確認義務などから判断されます。

特定小型原付には運転免許が必要ですか?

16歳以上で、特定小型原動機付自転車の基準を満たす車両であれば運転免許は不要です。

16歳未満でも保護者が許可すれば乗れますか?

乗れません。特定小型原動機付自転車は16歳未満の運転が禁止されています。

ヘルメットは義務ですか?

特定小型原付と自転車のいずれも、乗車用ヘルメットの着用は努力義務です。頭部外傷を防ぐため着用しましょう。

電動スクーターに自賠責保険は必要ですか?

特定小型原動機付自転車にも、自賠責保険または自賠責共済への加入が義務付けられています。

自賠責保険に入らず走るとどうなりますか?

自賠責保険への未加入は法律違反です。刑事罰や免許停止処分の対象となる可能性があります。免許を持っていない利用者でも刑事責任を問われます。

自賠責保険で自転車の修理代は支払われますか?

支払われません。自賠責保険は人身損害のみを補償し、自転車やスマートフォンなどの物損は対象外です。

自賠責保険から治療費はいくらまで支払われますか?

傷害による損害は、被害者1人当たり最高120万円です。治療費、休業損害、慰謝料などの合計額に対する限度額です。

電動スクーターの運転者自身のケガに自賠責保険は使えますか?

自分の車両の自賠責保険は、運転者自身のケガを補償しません。任意の傷害保険などを確認してください。

ファミリーバイク特約は使えますか?

特定小型原付を補償対象とするかは、保険会社や契約約款によって異なります。車両情報を伝えて契約先へ確認してください。

個人賠償責任保険は使えますか?

自転車事故は対象になることがありますが、原動機付き車両による事故は対象外となる場合があります。特定小型原付が対象か約款を確認してください。

シェアリングサービスの保険は使えますか?

運営会社が加入する保険を利用できる可能性があります。ただし、補償限度額や規約違反時の免責などは事業者によって異なります。

事故を起こしたら警察を呼ぶ必要がありますか?

ケガや損害が軽く見えても、必ず警察へ連絡してください。警察への届出がないと、交通事故証明書を取得できない可能性があります。

相手が大丈夫と言ったらその場を離れてもよいですか?

離れないでください。後から症状が出ることがあります。負傷者の救護、警察への報告、連絡先の交換を行ってください。

電動スクーターで人にケガをさせて立ち去るとどうなりますか?

救護義務違反や事故不申告として、ひき逃げに当たる可能性があります。直ちに停止し、救護と警察への通報を行ってください。

事故直後に痛くなくても病院へ行くべきですか?

頭や身体を打った、少しでも痛みや違和感がある場合は早めに医療機関を受診してください。翌日以降に症状が現れることがあります。

事故後は何科を受診しますか?

首、腰、肩、手足などの痛みは一般的に整形外科を受診します。頭を打ち、意識障害や強い吐き気がある場合は救急科や脳神経外科などを受診してください。

整骨院へ通えますか?

事故後は先に医療機関を受診してください。医師の診断を受け、保険会社へ確認したうえで、整形外科と整骨院を併用できる場合があります。

物損事故として届けた後に痛みが出たらどうしますか?

医療機関を受診して診断書を取得し、事故を届け出た警察署へ人身事故の取扱いについて相談してください。

治療費以外に何を請求できますか?

事故との関係が認められれば、通院交通費、休業損害、慰謝料、後遺障害による損害などを請求できる可能性があります。

自転車が壊れた場合は新品代を請求できますか?

原則として、修理費または事故時点の自転車の時価が基準です。古い自転車では、新品購入額の全額が認められない場合があります。

双方に過失がある場合はどうなりますか?

損害額から、自分の過失割合に応じた金額が差し引かれる過失相殺が行われる可能性があります。

過失割合に納得できない場合はどうしますか?

事故現場の写真、映像、標識、目撃者の証言などを確認し、保険会社へ判断根拠を求めてください。必要に応じて弁護士へ相談します。

事故直後に示談してもよいですか?

治療や修理が終わり、損害全体が確定する前の示談は避けてください。一度成立した示談は、原則として簡単には撤回できません。

電動スクーターの違反は自動車免許の点数に加算されますか?

免許不要の特定小型原付によるすべての違反について、一律に保有免許へ違反点数が加算されるとは限りません。ただし、違反には罰則や反則金、講習命令などが適用される可能性があります。

東京都には電動スクーター独自の点数制度がありますか?

信号無視2点、速度超過1点などとする東京都独自の一般的な違法走行点数制度は確認できません。道路交通法に基づく全国共通の罰則や制度が適用されます。

飲酒後に電動スクーターへ乗ってもよいですか?

いけません。特定小型原付にも飲酒運転の罰則が適用されます。自転車の酒気帯び運転にも罰則があります。

電動スクーターの事故で政府保障事業は使えますか?

加害車両が自賠責保険へ未加入だった場合などに、人身損害について政府保障事業の対象となる可能性があります。自転車の修理代などの物損は対象外です。

電動スクーター事故によるケガでお悩みの方へ

電動スクーターと自転車の事故では、転倒によって首、肩、腰、手首、膝などを痛めることがあります。

事故直後は痛みが軽くても、翌日以降に症状が強くなることもあります。

鍼灸整骨院かまたきでは、千葉市で交通事故後の身体の痛みに関する相談を受け付けています。

まず整形外科などの医療機関を受診し、骨折や頭部外傷などがないか確認してください。

医師の診断内容と現在の症状を確認したうえで、整形外科との併用や整骨院へ通う際の一般的な手続きについてご案内します。

過失割合、示談金、刑事責任などの法的判断については、警察、保険会社、弁護士などへご相談ください。

まとめ

電動スクーターと自転車の事故では、車両の種類だけで過失割合が決まるわけではありません。

次の事情を確認し、事故ごとに判断されます。

・信号や一時停止
・道路の優先関係
・走行場所
・進行方向
・逆走の有無
・速度
・前方確認
・スマートフォン操作
・飲酒運転
・夜間の灯火
・事故回避の可能性

特定小型原動機付自転車は、16歳以上であれば免許不要で運転できますが、道路交通法上の車両です。

ナンバープレートの取得、自賠責保険への加入、交通ルールの遵守が必要です。

事故が起きた場合は、次の対応を行ってください。

・負傷者を救護する
・警察へ通報する
・相手の情報を確認する
・事故現場を撮影する
・目撃者や防犯カメラを確認する
・保険会社や運営会社へ連絡する
・痛みがあれば早めに医療機関を受診する
・損害が確定する前に示談しない

特定小型原付と自転車の事故には、確立された過失割合が少ない類型もあります。

保険会社から提示された割合に納得できない場合は、判断の根拠を確認し、必要に応じて交通事故に詳しい弁護士へ相談しましょう。