
交通事故に遭ったあと、
「保険会社から提示された慰謝料が妥当なのか分からない」
「過失割合に納得できない」
「弁護士へ相談したいけれど費用が心配」
「相手が無保険で、どう請求すればいいか分からない」
「示談交渉がまとまらない」
など、法律上の問題に直面することがあります。
このようなときに相談先の一つとなるのが、**日本司法支援センター、通称「法テラス」**です。
法テラスでは、経済的に余裕のない方などを対象として、一定の条件のもとで無料法律相談や、弁護士・司法書士費用等の立替え制度を実施しています。
ただし、
「交通事故なら誰でも無料で弁護士に依頼できる」
という制度ではありません。
無料法律相談や費用立替えを利用するためには、収入・資産など一定の条件があります。
また、交通事故の内容によっては、法テラスよりも交通事故紛争処理センターやそんぽADRセンターの方が適している場合もあります。
この記事では、法テラスとはどのような機関なのか、交通事故でどのような相談ができるのか、無料法律相談や弁護士費用の立替え制度、他の相談機関との違いまで分かりやすく解説します。
- 1 法テラスとは?
- 2 法テラスで交通事故について相談できる?
- 3 法テラスの無料法律相談とは?
- 4 無料法律相談は何回受けられる?
- 5 法テラスの無料相談には収入・資産の基準がある
- 6 弁護士費用を「立て替えてもらえる」制度がある
- 7 「弁護士費用の補助」と「立替え」は違う
- 8 法テラスを利用すると好きな弁護士を選べない?
- 9 交通事故で法テラスへ相談した方がよいケース
- 10 自動車保険に弁護士費用特約がないか先に確認する
- 11 保険会社と損害賠償額でもめているなら交通事故紛争処理センターもある
- 12 交通事故紛争処理センターは治療中でも使える?
- 13 交通事故紛争処理センターでは和解あっせんを受けられる
- 14 和解できなければ「審査」を申し立てられる場合がある
- 15 保険会社そのものへの苦情なら「そんぽADRセンター」
- 16 そんぽADRセンターの苦情解決とは?
- 17 苦情で解決しなければ紛争解決手続もある
- 18 自賠責の後遺障害認定に納得できない場合は別の制度
- 19 法テラスと交通事故紛争処理センターの違い
- 20 交通事故でどこへ相談すればいい?
- 21 法テラスへ相談する前に準備したいもの
- 22 相談したいことをメモしておく
- 23 示談書へ署名する前に相談する
- 24 法テラスへ相談したら必ず弁護士へ依頼しなければならない?
- 25 よくある質問
- 26 まとめ
法テラスとは?
法テラスの正式名称は、
日本司法支援センター
です。
法的トラブルに直面した人が、必要な情報や法律サービスへアクセスできるよう支援する公的な機関です。
交通事故だけではなく、
借金
離婚
相続
労働問題
損害賠償
など、さまざまな法的問題を扱っています。
その中でも、経済的に余裕のない方などを対象として行われているのが民事法律扶助制度です。
法テラスで交通事故について相談できる?
交通事故による損害賠償問題は民事上の法律問題なので、条件を満たせば法テラスの法律相談を利用できる可能性があります。
例えば、
交通事故の損害賠償請求
慰謝料についての相談
過失割合についての相談
示談内容の確認
後遺障害に関する損害賠償
相手方との交渉
民事訴訟を検討している
といった問題です。
一方、法テラスが交通事故の賠償額を直接決めたり、保険会社へ命令したりする機関ではありません。
必要に応じて弁護士等による法律相談につなげたり、条件を満たせば弁護士費用等の立替えを行ったりする制度です。
法テラスの無料法律相談とは?
法テラスの民事法律扶助では、一定の条件を満たす方を対象に、弁護士・司法書士による無料法律相談を行っています。
対象となるのは、収入や資産が法テラスの定める基準以下の方です。
したがって、
「交通事故の被害者なら誰でも無料」
というわけではありません。
経済状況などについて確認を受けたうえで利用する制度です。
無料法律相談は何回受けられる?
法テラスでは、一定の条件を満たした場合、同じ問題について1回30分、原則3回まで無料法律相談を受けられます。
例えば、
1回目で事故状況や保険会社の提示内容を確認
2回目で資料を持参して損害額を相談
3回目で今後の交渉や訴訟について相談
といった利用が考えられます。
ただし具体的な相談方法や予約状況は法テラスへ確認してください。
法テラスの無料相談には収入・資産の基準がある
法テラスの無料法律相談を利用するためには、主に経済的な条件があります。
具体的には、
収入
現金・預貯金などの資産
家族人数
居住地域
などによって基準が設定されています。
そのため、
「年収○万円以下なら必ず利用できる」
と一律に判断することはできません。
利用を検討する場合は、法テラスへ現在の収入・家族構成などを伝え、対象になるか確認するとよいでしょう。
弁護士費用を「立て替えてもらえる」制度がある
法テラスの大きな特徴の一つが、弁護士・司法書士費用等の立替え制度です。
一定の条件を満たし、弁護士等への依頼が必要と判断された場合には、
弁護士費用
司法書士費用
書類作成費用
などを法テラスがいったん立て替える制度があります。
ここで重要なのは、
「法テラスが弁護士費用を全部払ってくれる」制度ではない
ということです。
基本的には立替えであり、その後、利用者が法テラスへ分割で返済していく仕組みです。
「弁護士費用の補助」と「立替え」は違う
現在の記事では、
「必要に応じて弁護士費用の一部補助」
という表現があります。
ここは修正をおすすめします。
法テラスの民事法律扶助は、一般的には、
弁護士費用等を立て替える
制度です。
つまり、
法テラスが一旦費用を支払う
↓
利用者が原則として法テラスへ返済する
という仕組みです。
一定の事情では返済について特別な取扱いが行われる場合もありますが、「弁護士費用を補助金としてもらえる」と説明しない方が正確です。
法テラスを利用すると好きな弁護士を選べない?
一概にはいえません。
法テラスの事務所だけでなく、法テラスと契約している弁護士・司法書士の事務所でも民事法律扶助を利用できる場合があります。
そのため、
「交通事故に詳しい弁護士へ相談したい」
という場合には、相談したい法律事務所が法テラスの民事法律扶助に対応しているか確認する方法もあります。
交通事故で法テラスへ相談した方がよいケース
特に利用を検討したいのは、
弁護士へ相談したいが費用が心配
相手方と賠償交渉がうまく進まない
過失割合に納得できない
後遺障害が問題になっている
示談金が妥当か分からない
相手が無保険
損害額が大きい
裁判を検討している
などの場合です。
ただし、交通事故の問題だからといって、必ず法テラスが最適とは限りません。
目的に応じて別の相談機関を選ぶことも重要です。
自動車保険に弁護士費用特約がないか先に確認する
法テラスを利用する前に、自分や家族の自動車保険などに弁護士費用特約が付いていないか確認することをおすすめします。
弁護士費用特約が利用できれば、契約条件に従って交通事故の弁護士相談料・依頼費用などが補償される可能性があります。
その場合、法テラスの費用立替えを利用する必要がないケースもあります。
事故後はまず、
自分の自動車保険
家族の自動車保険
その他利用できる契約
を確認しましょう。
保険会社と損害賠償額でもめているなら交通事故紛争処理センターもある
交通事故の損害賠償問題に特化した相談機関として、
公益財団法人 交通事故紛争処理センター
があります。
交通事故紛争処理センターでは、自動車事故による損害賠償問題について、
法律相談
和解あっせん
審査
を行っています。
利用料金は無料です。
ただし、
交通費
医療関係書類の取得費用
コピー代
通信費
などは本人負担となります。
交通事故紛争処理センターは治療中でも使える?
ここは注意が必要です。
交通事故紛争処理センターは、損害賠償について和解することを前提とした制度です。
そのため、事故直後や治療中など、まだ損害額が確定していない段階では、原則として和解あっせんに適さない場合があります。
同センターも、事故直後や治療中など、まだ和解に至らない段階での法律相談は受けていないと案内しています。
したがって、
事故直後の相談 → 法テラスや弁護士等
治療終了後などに賠償額で保険会社ともめている → 交通事故紛争処理センター
という使い分けも考えられます。
交通事故紛争処理センターでは和解あっせんを受けられる
和解あっせんでは、相談担当者が中立・公正な第三者として双方の主張を聞き、和解案をまとめて提示します。
双方が合意すれば和解成立となります。
同センターによると、通常3回までのあっせんで約70%、5回までで約90%が和解成立していると案内されています。
裁判を起こす前の選択肢の一つとして利用できます。
和解できなければ「審査」を申し立てられる場合がある
交通事故紛争処理センターの和解あっせんが不調に終わった場合には、条件を満たせば審査を申し立てることができます。
審査会は、
法律学者
裁判官経験者
経験豊富な弁護士
などから選任された審査員によって構成され、裁定を行います。
協定保険会社等はセンターの裁定を尊重することになっており、被害者側が裁定へ同意した場合には和解が成立します。
保険会社そのものへの苦情なら「そんぽADRセンター」
交通事故の相談先としてもう一つ覚えておきたいのが、
そんぽADRセンター
です。
そんぽADRセンターは日本損害保険協会が運営し、
損害保険に関する相談
交通事故に関する相談
損害保険会社への苦情
損害保険会社との紛争解決支援
を行っています。
相談や苦情・紛争解決手続にかかる費用は原則無料です。
そんぽADRセンターの苦情解決とは?
例えば、
「保険会社の説明に納得できない」
「担当者へ何度伝えても対応してくれない」
「保険金の取扱いについてトラブルになっている」
といった場合です。
そんぽADRセンターへ苦情を申し出ると、センターから対象となる損害保険会社へ苦情内容を伝え、対応を求めます。
ただし、センターが利用者に代わって保険会社と示談交渉する制度ではありません。
まずは当事者間での解決を促す制度です。
苦情で解決しなければ紛争解決手続もある
苦情解決手続などで解決できない場合には、条件を満たせば紛争解決手続を申し立てることができます。
中立・公正な紛争解決委員が、和解案を提示するなどして解決を支援します。
ただし、
自賠責保険の保険金支払いや後遺障害等級認定などのトラブル
は、そんぽADRセンターの紛争解決手続の対象外です。
このような場合は、自賠責保険・共済紛争処理機構が相談先になります。
自賠責の後遺障害認定に納得できない場合は別の制度
例えば、
「後遺障害が非該当だった」
「認定された等級に納得できない」
「自賠責保険の支払いに不満がある」
というケースです。
このような問題は、通常の保険会社との示談交渉とは性質が異なります。
そんぽADRセンターも、自賠責保険の保険金支払い等に関する紛争は自賠責保険・共済紛争処理機構の対象と案内しています。
相談内容によって窓口を使い分けることが重要です。
法テラスと交通事故紛争処理センターの違い
混同しやすいので整理します。
| 相談先 | 主な役割 |
|---|---|
| 法テラス | 法律情報、条件を満たす方への無料法律相談、弁護士等費用の立替え |
| 交通事故紛争処理センター | 自動車事故の損害賠償について法律相談・和解あっせん・審査 |
| そんぽADRセンター | 損害保険・交通事故の相談、保険会社への苦情、保険会社との紛争解決 |
| 自賠責保険・共済紛争処理機構 | 自賠責保険・共済の支払い、後遺障害等級認定などに関する紛争 |
法テラスは交通事故専用機関ではありません。
一方、交通事故紛争処理センターは自動車事故による損害賠償問題に特化しています。
交通事故でどこへ相談すればいい?
弁護士費用が心配
まず、
法テラス
を検討します。
収入・資産など一定の条件を満たせば、無料法律相談や弁護士費用等の立替えを利用できる可能性があります。
保険会社と慰謝料や過失割合でもめている
治療終了後など損害額がある程度確定している場合は、
交通事故紛争処理センター
を検討できます。
自分の保険会社の対応に不満がある
そんぽADRセンター
が候補になります。
自賠責の後遺障害認定や保険金支払いでもめている
自賠責保険・共済紛争処理機構
が対象になる場合があります。
裁判を検討している
弁護士へ相談することを検討します。
弁護士費用特約があれば利用できるか保険会社へ確認し、費用面で難しい場合には法テラスの民事法律扶助を確認するとよいでしょう。
法テラスへ相談する前に準備したいもの
交通事故について相談するときは、何も準備せずに行くより、事故内容を整理しておく方が限られた相談時間を有効に使えます。
例えば、
交通事故証明書
事故現場の写真
ドライブレコーダー映像
診断書
後遺障害等級の結果
保険会社から届いた書類
示談金の提示書
休業損害に関する資料
車の修理見積書
保険会社とのメールや手紙
などです。
すべて揃っていなくても相談はできますが、争点が分かる資料があると弁護士へ状況を説明しやすくなります。
相談したいことをメモしておく
法律相談では時間が限られています。
そのため、
「慰謝料はいくらが妥当?」
「過失割合20%と言われたが適切?」
「後遺障害非該当を争える?」
「示談書へサインしてよい?」
「裁判した方がよい?」
など、聞きたいことをあらかじめ書き出しておきましょう。
時系列も、
事故発生
↓
病院受診
↓
治療
↓
保険会社から治療終了を言われた
↓
後遺障害申請
↓
示談金提示
という形で整理しておくと説明しやすくなります。
示談書へ署名する前に相談する
特に法律相談を検討した方がよいのが、
示談書・免責証書へ署名する前
です。
一度示談が成立すると、原則として簡単にやり直すことはできません。
「金額が妥当か分からない」
「何が含まれているか理解できない」
という状態なら、署名する前に法律の専門家へ相談することをおすすめします。
法テラスへ相談したら必ず弁護士へ依頼しなければならない?
いいえ。
まず法律相談だけ利用し、
「このまま自分で交渉できそう」
と判断することもできます。
逆に、
損害額が大きい
後遺障害がある
死亡事故
過失割合でもめている
保険会社との交渉が難しい
などの場合には、弁護士へ依頼することを検討できます。
法律相談は、
「弁護士へ依頼するべきか判断するため」
にも利用できます。
よくある質問
交通事故でも法テラスを利用できますか?
はい。交通事故による損害賠償など民事上の法的問題について、一定の条件を満たせば無料法律相談や弁護士等費用の立替え制度を利用できる可能性があります。
法テラスの交通事故相談は誰でも無料ですか?
誰でも無条件に無料ではありません。無料法律相談は、収入・資産が法テラスの定める基準以下であることなど一定の条件があります。
法テラスは弁護士費用を払ってくれますか?
条件を満たす場合、弁護士・司法書士費用等を法テラスが立て替える制度があります。基本的には補助金ではなく立替えで、原則として利用者が法テラスへ返済します。
無料法律相談は何回受けられますか?
一定の条件を満たす場合、同一案件について1回30分、原則3回まで無料相談を受けられます。
交通事故紛争処理センターは無料ですか?
センターの法律相談・和解あっせん・審査は無料です。ただし、交通費、医療書類取得費、コピー代、通信費などは自己負担です。
交通事故紛争処理センターは治療中でも利用できますか?
同センターは損害賠償の和解を前提としているため、事故直後や治療中など、まだ和解に至らない段階での法律相談は原則として受けていません。
保険会社の対応に不満がある場合はどこへ相談できますか?
損害保険会社とのトラブルであれば、そんぽADRセンターへ相談できる場合があります。相談・苦情・紛争解決手続の費用は原則無料です。
後遺障害認定に納得できない場合もそんぽADRセンターですか?
自賠責保険の保険金支払いや後遺障害等級認定に関する紛争は、そんぽADRセンターの紛争解決手続ではなく、自賠責保険・共済紛争処理機構が対象となります。
まとめ
交通事故に遭うと、
慰謝料
過失割合
治療費
休業損害
後遺障害
示談
保険会社との交渉
など、さまざまな法律上の問題が発生する場合があります。
このようなときの相談先の一つが法テラスです。
法テラスでは、経済的に余裕のない方などを対象として、一定の条件のもと、
無料法律相談
弁護士・司法書士費用等の立替え
などを行っています。
ただし、
「交通事故なら法テラスへ行けばすべて解決する」
わけではありません。
交通事故では相談内容によって、
弁護士費用が心配
→ 法テラス
損害賠償額について保険会社と争っている
→ 交通事故紛争処理センター
損害保険会社の対応に不満がある
→ そんぽADRセンター
自賠責の保険金・後遺障害等級認定に不満がある
→ 自賠責保険・共済紛争処理機構
というように、相談先を使い分けることが重要です。
また、加入している自動車保険に弁護士費用特約が付いている場合には、法テラスより先に利用可否を確認する方法もあります。
交通事故で、
「この示談金で合意していいのか分からない」
「保険会社の説明に納得できない」
「弁護士へ相談したいが費用が不安」
という場合は、示談を成立させる前に、自分の状況に合った相談機関を利用することを検討しましょう。

